スリップ図鑑:第2回
2か月振りの投稿です。
(とにかく、腰が重い。身体的にではなく、SNSしかりnote しかり、文章を書くことが。)(もっと力抜いたらいいのに、と自分でもつくづく思う。)
さて、今回はビジネス系の実用書を主力とする出版社を紹介いたします。
全体に、自己主張といいますか、存在感アピールをもの凄く感じるスリップが多いです。
実用書は類書が多いですし、シェア争いも熾烈。何はともあれ、お客様に手に取っていただけるかが勝負どころでもあります。
本来お客様には無縁のスリップまでアピールを放っているのは、書店員に向けても、「認知してもらわないことには始まらない」という意識が共有されていることを示唆してくれます。
まずは、手帳でもお馴染み、高橋書店。
アピールポイントはなんと言っても、用紙の色です。
この独特な緑色、正式名称は知らないのですが(調べろよ!)、ジャンルごとに分類したスリップが束になって輪ゴムで括られたとき、絶妙に目立ちます。
おそらくですが、ジャンルや時代を問わず、全てのスリップがこの色で統一されているはずです。そのブレなさは、まさに業界標準。
書店員になるまで、実用書にあまり興味なかったのですが、働いてみて初めて、実用書(およびその版元さん)がいかに大事で、かつ、大きな役割を担っているかを知りました。
こちら高橋書店はその筆頭格です。ボウズにある「高」の一文字からも、強い自負を感じることができます。
(「お主、「高」の印に心当たりがないとは、さてはモグリ書店員だな!」)
次いで対抗馬として、成美堂出版。
全体は白地で、文字が赤と黒の二色。そして、ボウズ 及びその下部に広がる赤帯が鮮烈です。
成美堂ここにあり、と訴えかけてくるかのようです。
さらには、裏側に当たる「売上カード」も強烈な印象です。
「報奨」って何? 「10」って十円のこと? などなど、気になりませんか?なりますよね? いや、私だけでしょうか。笑
実際の話として、私が書店員を始めた2010年当時は、報奨の付いている「売上カード」を集めておいて、レジ業務と併せて事務・経理面を担当する先輩スタッフが送付していました。
ただ新米スタッフゆえ、謎も多く、自店では成美堂出版は対象外でした。
レジカウンター内に報奨スリップを回収する小箱があり、対象版元のリストが貼ってあったことを覚えています。
本題に戻りますと、とにかく白と赤のコントラストが目に焼き付いて、アルバイト初日にして覚えました。
(日の丸にも、あるいは、タンチョウにも通ずるインパクト。個人的にはやや過剰な色使いに感じますが・・・。)
さてさて、お次は西東社。
こちらのアピールポイントは、なんと言っても中央右寄りの書影です。
数百、数千と存在する出版社の中でも唯一ではないでしょうか(他の事例をご存知でしたら、ぜひご教示願います)。
それもそのはず、よく見るとこのスリップはなんと実用新案なのです。
今回アップした相続についての本を例にしても、複数の出版社が類似した書名で刊行することは、どうしても避けられないと思われます。
また、同一の出版社が複数の類書を出すことも珍しくありませんし、タイトルが長かったり、改定版が出ていたりしてお客様からの問い合わせに四苦八苦することもしばしば。
そんな時、ISBNなどのヒントに加え、書影が役に立ってご購入に繋がる場合もあるでしょう。
おっと、いや、待てよ。書きながら違う気がしてきました。
そんな事情よりも、書店員の非力を憂えての配慮なのでは? という気がしてきました。
ジャンル担当者でさえも、スリップの書名を見ただけではどの本が売れたのか、ピンとこない時が、残念ながらあります。
そんな場合に書影があれば、「あ!あの本、売れたんや!」と合点がいく確率は急上昇するはず。
やはりこちらが真相と思われます。
そうすると、左下にある「ご注文お待ちしております」の白抜き文字(それ自体個性的ですが)が、妙に説得力を増してきました。
最後に、もう一つのポイントが、ボウズのロゴです。
こちらは非常に多彩ですので、稿をあらためてご紹介いたします。
本日はここまでにいたします。
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