選ぶことが楽しくなる。農園と飲み手をつなぐFETCのお茶へのこだわり
こんにちは。フォトグラファーの三浦えりです。
7月のSWAY magazineはSWAYのドリンクメニューでお茶を提供しているFETCとのタイアップ1周年記念として、FETCのおふたりにお話を聞いています。
後編ではFETCがセレクトするお茶へのこだわりや、おふたりが惹かれる農園にあるストーリーなどをお伺いしていきます。
▼前編はこちら
本編に入る前に...
「シングルオリジン」について知ってからお読みいただくと、さらに楽しめると思います。
FETCがシングルオリジンにこだわる理由とその魅力
– シングルオリジンにこだわる理由を教えてください。
畠山:お茶は新茶という意味では年に一度だけの収穫で、試作ができないんです。天候やその土地の環境をコントロールもできない。年に一度の収穫のためにとてつもない準備をして、ひたむきにお茶を作る姿勢に感動しました。
生産者さんたちは一人ひとりにストーリーがたくさんある。それを伝えることで、さらにお茶への味わいが深まると思ってシングルオリジンを専門にしています。
– おふたりはどんな農園に惹かれるんですか?
畠山:お茶を作っている本人がお茶が好きということが伝わってくる農園ですね。
例えば、朝起きて家の窓を開けると、目の前には茶畑が見える場所に住んでいる農家さんがいて。毎日目の前にある茶畑を見てるので、ちょっとした違いも見逃さないんです。家の前にはウッドデッキがあって、その方は茶畑を見ながらお茶を飲むという(笑)お茶に対して深い愛がある人に惹かれますね。
藤井:僕は「この場所とこの人じゃないと作れないお茶」に惹かれます。農業は土着的なものなので、コーヒーが赤道の辺りの場所でしか取れないのと一緒で、日本茶も日本にしかない地形や天候によって、その場所でしか作れないんです。
それは、先祖代々で受け継いできた茶畑が作り出した環境であったり、山間の日照条件がバチっとハマる場所であったり。他では味わえない、場所と人によって作られたお茶に出会えると嬉しくなります。
– おふたりとも惹かれる部分は違いますが、どちらも農園の背景にあるストーリーに惹かれているんですね。そのストーリーを飲む人に伝えたいと思った理由はどんなところですか?
畠山:ストーリーを知ることで、お茶への興味を少しでも持ってもらえると思うんです。 気に入ったものって、調べたり人に伝えたりするじゃないですか。そうやって少しずつでも良いから、たくさんの人にお茶に興味を持って欲しいという思いが強いです。
藤井:お茶は嗜好品なので、そこにある情報が多ければ多いほど、選ぶことが楽しくなると思っています。 これまでブレンドのお茶では出てこなかった情報が、シングルオリジンではストーリーが鮮明になるんです。
ブレンドのお茶においても、大きな括りでの産地や味わいを知ることはできますが、シングルオリジンは誰がどの畑でどんなコンセプトでつくっているかすべてを知ることができる。 僕らはお茶を嗜好品として、いろいろな選択肢を提供したいと思っているので、ストーリーの部分を伝えています。
実際に足を運んだからこそ知った、お茶農園のそれぞれのストーリー
– FETCのお茶は実際に自分たちの足で開拓しているとお伺いしましたが、特に訪れてみて印象的な農園はありましたか?
畠山:SWAYでも提供している「やぶきた」をつくっている鹿児島県南九州市の「ながやま園」という農家さんですね。お茶農園の全体の75%くらいは「やぶきた」を作っているのですが、「ながやま園」の永山さんは「やぶきた」に命を掛けていると過言ではないほど気持ちが強い人で、日本一の「やぶきた」を目指しているんです。
藤井: 鹿児島はお茶の生産地では一番暖かくて日照時間も長いので、日本で一番早く新茶が出る土地なんです。新茶は早く出るほど高値で売れるので、市場への出荷はスピード重視になります。
ただ、彼の畑は山の中にあって出荷が少し遅れるんです。じゃあなぜ先々代のお爺ちゃんがそこに畑を作ったのかというと、山に茶畑があるので日照条件がある程度限られて、茶葉に旨味を蓄えてくれるから。お爺ちゃんの思いを継いでからは早さで攻めるのをやめて、うまみがしっかりあるお茶をつくることにしたそうです。
– もうこのエピソードを聞いただけで、この「やぶきた」の味わいがさらに深まりますね。
畠山: FETCは創業3年になりましたが、最初の2年間はずっと茶畑に足を運んでいました。30ヶ所ほど訪れて農園の方からいろいろな話を聞きました。
藤井:僕が一番好きな農園は福岡県のうきは市にある「新川製茶」です。その地域はとても田舎で人も少なくて、畑を手放してる人も多く、放置されたまま雑草とか生えてる畑もあります。そこで50年くらい前からオーガニックでお茶を作っているんです。人間の手によって耕した畑が一度打ち捨てられて、また自然に戻る途中で人間の手が入り、今はオーガニックで人間と共存しているってなんだかジブリっぽいなと思いました。
– おふたりの惹かれるポイントってほんとうに違うんですね。
畠山:好みも違うし、おそらく情熱を感じる部分も違うよね。でも、逆にそこがいいのかもしれないですね。
藤井:そういう意味ではお茶のセレクトをするときジャッジを多角的にできますよね。美味しさって主観的なものだから、ひとりの評価だと偏るけど、 別の角度からお互いに意見を言い合えて、客観性も出ると思います。
いろいろな方法でお茶の良さを伝えていきたい。FETCが目指すこれから
– FETCが取り扱っているお茶の種類が多いのもそれぞれの好みがあるからですか?他のお茶のECブランドは、商品を絞って少数で出しているイメージがあります。
藤井:それもあるかもしれないですね。あと、いま僕たちはECにおいてはサブスクをメインに販売をしています。手に取ってもらう人には2種類のお茶を飲んで、味の違いを感じてもらいたいんです。
これまで一般的に飲みやすいブレンドされた整った味のお茶を飲んでいる人には、「シングルオリジン」というお茶のバリエーションがまだ知られていないと思っていて。「シングルオリジン」の良さを知ってもらえるように2種類ずつ送り、飲み比べができるようにしています。
僕らとしても、そのために提供できる味のバリエーションをたくさん持っておきたいというのがあります。農林水産省に登録されているお茶の品種は130ほどあり、それぐらいたくさんの個性のあるお茶が存在するんです。僕たちFETCはコンプリートを目指しているわけではないですが、たくさんお茶を取り扱って選択肢を増やしたいし、日本にお茶ってこれだけたくさんあるんだよ、ということも伝えていきたいです。
– サブスクの話もありましたが、これからのFETCの展望も聞かせください。
畠山:やることとしては変わらないけど、たくさんの人に美味しいお茶を広めて知ってもらい、もっと深みにハマってもらいたいです。ECはコンテンツも拡充して、商品を増やしていきたいのと、生産者さんのストーリーについての発信はこれからも積極的にしていきたいです。
FETCのお茶を扱ってくれているお店でいうと、SWAYのようなお茶の良さをしっかり伝えてくれるお店をもっと増やしたいですね。そのためにも僕らからもしっかり語りかけて、お客さんに伝えやすい環境にしていきたいです。
藤井:海外にも広めていきたいですね。海外でもグリーンティーと言えば日本茶というイメージがついているから。きちんと正しい伝え方をして、美味しく味わってもらえるように頑張っていきたいです。
SWAYを訪れるといつも飲む「やぶきた」。FETCのおふたりから、農園さんのエピソードを聞いて、味わい方もさらに深くなりました。そして、それぞれの農園にはそれぞれの味の個性と共に一つひとつのストーリーがあると知りました。これからは「シングルオリジン」を飲むことが、自分のなかでとても贅沢な時間になりそうです。
次回はFETCのおふたりからSWAYで飲めるお茶のメニューについて教えていただき、おすすめのペアリングや、この夏に合うシーシャとお茶の組み合わせについてお伺いします。