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ドラゴンマーク-エベロンを支配する12の刻印-

エベロンの世界には、魔法が日常生活に深く根ざし、魔法の力によって高度な文明が支えられています。空飛ぶ船、大陸中を走り回る列車、遠方と通信する電信。では、それを可能にしているのが人々の体に現れる魔法の刻印だとしたら?そして、その刻印が血筋として受け継がれるのなら?
それらが指し示すのは一つ。世界の商業を支配する強力な力を持った者たち──ドラゴンマーク氏族──による覇権です。
この記事では、エベロン世界特有の要素であるドラゴンマークと、それを操り、国家を超えた影響力を行使する12の血族、ドラゴンマーク氏族を紹介します。

ドラゴンマークとは

ドラゴンマークはエベロンに住む、特定の血統、それも特定の種族にのみ現れる魔法の刻印を指します。ドラゴンマークは一見すると複雑な紋様のタトゥーのように見えますが、マークの持つ魔法の力を引き出そうとすると発行し力を放ちます。ドラゴンマークは全部で12種類が存在し、それぞれのマークが全く異なる力を持ちます。例えば治癒のマークであれば回復を、嵐のマークであれば雷撃を放つことができます。
ドラゴンマークは単に個人に魔法の力を与えるだけのものではありません。これらの魔法の力が有利に働く職業に就くことで、その分野を大きく発展させることが出来るのです。また、同じマークを持つ者同士が協力し合うことで社会全体に大きな影響を与えることができます。例えば、刻印のマークを持つノーム達はそれぞれが持つ通信能力を活かして各拠点を繋ぐ通信網を築いていますし、移動のマークを持つヒューマンは預けられた物品を遠くの地までテレポートで運ばせることができます。
つまり、同じドラゴンマークを持つ者が集まり、その力を独占的に利用できれば大きな影響力を行使できますが、ドラゴンマークの力は血統によって受け継がれるために、特定の血族の血を引くもののみがその力を利用できます。この血族たちが寄り集まり強力な家族関係の元、団結したものこそドラゴンマーク氏族です。

ドラゴンマーク氏族

ドラゴンマーク氏族は同じドラゴンマークを継ぐ者たちが寄り集まった大きな家族集団であると共に、各自のドラゴンマークによって強化された職能を家業として受け継ぎ、それぞれの経済分野に属するギルドを支配する企業でもあります。例えば創造のマークを持つカニス氏族は魔法、非魔法を問わず製造業と工業を独占していますし、治癒のマークを持つジョラスコ氏族は病院、製薬業の分野で大きな存在間を放っています。
ドラゴンマーク氏族はそのように社会の商業に大きな影響力を行使していますが、それはドラゴンマークによる力だけではありません。各氏族は長い年月をかけて世界各地に拠点を築き、商業ネットワークを構築してきましたし、支配するギルドのために働くギルド員が学ぶための学院を作り、業界基準を設けて、高い品質を追求してきたことで各氏族の商品に高いブランド価値を与えるように苦心してきました。確かにドラゴンマーク氏族はエベロンの経済界を牛耳り、人々が受けることが出来るサービスを独占しています。しかし、裏を反せばエベロンではドラゴンマーク氏族のサービスを利用すれば、世界中のどこであっても同じ品質のサービスを受けることができるのです。最終戦争が終わった今、ドラゴンマーク氏族の存在間は単なる企業体であることを超えています。戦争の前には、ドラゴンマーク氏族の権限を規制するための規定があり、それは概ね守られていました。ですが、戦争によって各国が反目し合い、競争しあう状況の中で、各ドラゴンマーク氏族は最大限の利益をあげ力をつけたのです。エベロンの国々は恐れています。もし、ドラゴンマーク氏族が現在の秩序を不都合に感じて行動を起こした時に誰がそれを止めることが出来るのだろうかと。

以降の文章では各マークとそのマークを持つ氏族についての概要について紹介していきます。


12のドラゴンマーク

嵐のマーク

氏族:リランダー氏族
種族:ハーフエルフ
経済分野:天候操作、海運、空輸
「ソヴリン・ホストの神々と”先覚者”よ。わが民に約束された4つの恩寵をわれにも賜らんことを。天空の支配、水上の支配、家族の弥栄、わが未来の弥栄を与えたまえ」
嵐のマークは風や天候を操る力を持ち主に与えます。嵐のマークを継承するリランダー氏族はその力を最大限に利用して、海運ギルドや雨ごいギルドを支配してきました。しかし、今、氏族の名声を高めているものと言えば10年前に完成した飛空船でしょう。リランダー氏族は従来のガレオン船によって海を、飛空船によって空を支配下に置こうとしています。
リランダー氏族はハーフエルフによって構成されていますが、それはこの氏族にとって大きな意味を持ちます。リランダー氏族は自分たちハーフエルフこそが、コーヴェア大陸の未来を約束された選ばれた民であり、コラヴァール(エルフ語でコーヴェアの子)と自称しています。リランダー氏族はハーフエルフの未来のためと思えば、氏族の財産と影響力を用いることを厭いません。コーヴェア大陸に新しく興ったエルフの国ヴァラナーへの投資もその一つです。リランダー氏族はハーフエルフならば、例え氏族の者でなくても積極的に受け入れますが、他の種族には門戸を閉ざしていますし、氏族の者が他種族と婚姻することを強く禁じています。
リランダー氏族出身のキャラクターを作る場合に氏族の中で育ってきたならば、必ず自分がコラヴァールであることを誇りに思うべきだということを教えられていることを念頭に置きましょう。リランダー氏族は若いコラヴァールには諸国を旅して見分を広めさせることを好みます。特に年若いキャラクターを作る場合は自分がギルドに所属しているのか、それとも旅の途中にいるのかを考えておきましょう。
リランダー氏族は最終戦争後に最も勢力を伸ばしているドラゴンマーク氏族です。単に飛空船によって商売を広げただけでなく、国家によって規制されたドラゴンマーク氏族による土地所有の禁止を半ば無視してハーフエルフのための拠点を築き始めているのです。リランダー氏族が持つコラヴァールのための国家を作るという野望が現在の国際秩序と衝突する日は遠くないのかも知れません。

リランダー氏族の飛空艇

移動のマーク

氏族:オリエン氏族
種族:ヒューマン
経済分野:陸上輸送、郵便
「どこにでも安全にお送りしますよ。十分なお代さえいただければ、明日の到着を保証できます。なんなら海の向こうだってかまいません。問題はですね。そういった奇蹟にあなたがどれだけの値をつけるかってことなんです」
移動のマークは魔法的な力によって持ち主の俊敏さを高め、高位のマークは遥か遠くの地へと瞬間移動さえできます。移動のマークを持つオリエン氏族は長い間、陸上の輸送を支配してきました。ユニコーンの紋章を家紋としているこの氏族を象徴しているのがライトニング・レイルです。このエレメンタルを動力源に走る列車は大陸中に張り巡らされた線路を使って、人と荷物を輸送します。オリエン氏族はそれ以外の運送手段にも力を入れており、荷馬車を使った輸送や配達員を使った郵便物の配達についても独占しています。このような輸送手段を一手に引き受けることでライトニング・レイルの鉄道網から外れた地域にも輸送ができ、大陸にまたがる輸送網を構築しています。
オリエン氏族は最終戦争の影響を大きく受けた氏族の一つです。オリエン氏族が築いてきた輸送網は戦争によって大きな痛手を受けました。戦争中に行われた焦土作戦によって線路が破壊され、極めつけはモーニングによってサイアリが崩壊したために大陸を横断していたライトニング・レイルの線路が東と西で分断されてしまったのです。オリエン氏族はインフラの復興とライトニング・レイルの再結合のために日夜奔走していますが、資金集は上手くいっていないのが現状です。
オリエン氏族にとってさらに悪いのは陸上での運送において強力なライバル同じドラゴンマーク氏族のリランダー氏族の飛空船が出現したことです。飛空船はライトニング・レイルよりも早く、インフラが無いような未開の地にも自由に物を運ぶことができるために、ライトニング・レイルの優位性を脅かしたためです。オリエン氏族はこの新参者の出現を苦々しく思っており、リランダー氏族との対立は日に日に増しています。
オリエン氏族は子弟の教育に力を入れており、本人が広い世界で見分したいと望んだり、特定の学業を学びたいと望むならその資金を援助してくれます。オリエン氏族に属したキャラクターを作成する際は自分のキャラクターがどの事業に従事しているかを考えましょう急使ギルドの配達員であれば、重要な荷物や手紙をいかにして素早く依頼主の元へと運ぶことに心血を注ぐキャラクターになるでしょうし、運送ギルドのキャラバン長ならば運送任務の中で襲撃を防ぎ部下を守るための訓練を受けていることでしょう。
オリエン氏族は戦争の影響から未だ立ち直れずにいます。コーヴェア大陸のインフラに責任を追っていたこの氏族の苦境は世界の流通に大きな悪影響を及ぼし、コーヴェア大陸の東西の分断を助長しています。その中で冒険者たちがオリエン氏族に手を貸してインフラの復興を成し遂げたのならそれはエベロンの未来を変えるほどの偉業になることでしょう。

ライトニング・レイル

影のマーク

氏族:フィアラン氏族、チュラーニ氏族
種族:エルフ
経済分野:暗殺、諜報、芸術演芸
「我らは影──光と闇をわかつ境界線。われらはたんなる密偵や刺客ではない。われらは近郊に仕える使徒であり、舞踏を通して未来を形づくる踊りてでもある」
影のマークは最も古くから伝わるドラゴンマークであり、幻を作り出し人々を惑わすことを得意としています。最初にこのマークが現れたエルフたちはこの才能を芸人として人々を楽しませることに使っていました。時が経つにつれて影のマークを継承したフィアラン氏族に所属する芸人たちは権力の懐に入り込んで権力者たちの持つ秘密に容易に触れることが出来ることに気付きました。フィアラン氏族はこの特権を利用して諜報活動と暗殺によるビジネスを展開していくようになりましたが、それはあくまでも裏の話で一般では芸によって人々を楽しませ娯楽を提供する表の顔で知られています。
最終戦争の末期にフィアラン氏族の中で造反した者たちが現れました。その造反者たちはフィアラン氏族から独立しチュラーニ氏族を名乗り始め、フィアラン氏族は大陸の西側を、チュラーニ氏族は大陸の東半分に影響力を及ぼしています。
フィアランチュラーニの氏族が治めている拠点はディメインと呼ばれ、エベロンで最高の芸術が生まれる中心地であり、文学、舞踏、音楽、演劇と言った芸術にそれぞれ特化しています。どちらの氏族に属するキャラクターを作る際にも、まずは芸人として何の道を選んでいるかを考えることが背景の確立に役に立つでしょう。そして氏族の裏の仕事にどれだけ入れ込んでいるかも。

影のマークを持つエルフたち

監視のマーク

氏族:クンダラク氏族
種族:ドワーフ
経済分野:銀行、防犯
「”斧を鍛えるには金床がいる”ムロール・ホールドの諸氏族が好んで口にする諺だが、もともとこれには結句があってな。今ではほとんど知られていないが、”でも金床をつくるには金がいる”と続くのだよ」
監視のマークは防御術の魔法を持ち主へと提供します。大事な物を保管したり守ったりするサービスが欲しいのならクンダラク氏族を頼りましょう。人を閉じ込めたいなら監獄、物を保管したいならば金庫を利用すれば、クンダラク氏族は保証付きでその保管を請け負ってくれます。クンダラク氏族の提供するサービスで最も一般的なのは銀行業です。氏族の持つ莫大な量の資産を背景にした銀行サービスは世界のどこにいても預けた資金を受け取ることが出来るために重宝されています。加えて、クンダラク氏族は他のドラゴンマーク氏族と協力することで信用状の発行や預けた貴重品の転移なども請け負っています。
クンダラク氏族の身分は他の氏族と異なり親から子へと受け継がれる階層秩序が維持されています。特に氏族長は王と呼ばれ強大な権限を持つとともに氏族の臣民、ドワーフ族の運命をより良くするための義務が重くのしかかっています。
クンダラク氏族に所属しているキャラクターは氏族の中で出世する中で血筋と名誉を高めることが求められます。この名誉の中にはいかに多くの黄金を引き寄せたかも含まれていますが、その際に不名誉な行いをしていたのならば軽蔑を受け出世の道を閉ざされてしまいます。

クンダラク氏族の金庫

歓待のマーク

氏族:ガランダ氏族
種族:ハーフリング
経済分野:酒場、宿泊
「やあ、いらっしゃい!また来てくれて嬉しいよ。飲み物は何にする?蜂蜜入りのブラックルート酒はどうだい?そうそう、ぜひともお前さんに聞いてもらいたい話があるんだよ。コグでなにやらみょうちきりんなことが起きてるらしいぞ」
歓待のマークは仲間を勇気づけたり、心身を癒す魔法に長けています。多くの人は歓待のマークの力を見くびり、重きをおいていません。しかし、そのような無骨者たちも腹が減ればご飯が食べたいし、いがらっぽい喉を酒で洗い流し、労働の疲れを柔らかいベッドで消し去りたい。そういった時こそ歓待のマークを持つガランダ氏族の出番です。
ガランダ氏族は旅人には最高の宿屋を娯楽を求める者には最高の料理と酒を供給することにかけては右に出る者はいません。ガランダ氏族が世界中に展開しているチェーン宿屋の金竜亭に泊ればどの宿屋でも同じ品質のサービスを受けることが出来ます。しかし、宿屋を経営する主人はガランダ氏族傘下であっても独自の名前の宿屋を持つことを好みます。そういった宿屋でも氏族による厳しい検査基準を守る必要があります。
ガランダ氏族の宿屋は単なる酒場以上の意味を持ち政府や他のドラゴンマーク氏族の法が及ばない避難所でもあります。加えて宿屋の店主は実は多くのことを知っているのです。共同体のニュースや地域の危険を事前に知っておきたいなら店主に愛想を振りまいておくことです。間違えても無礼を働くことは考えないように、店主が裏社会の大物と懇意にしているということは珍しくないからです。
ガランダ氏族に所属するキャラクターを考える際に悩ましいのは氏族には冒険の伝統が根付いておらずくつろぎと座談、美酒と飽食こそが美徳ということです。とはいえ個人的に気に入った大きなヤツらが旅の備え方も旅の楽しみ方も知らずに飛び出していくのを見ていられなかったのかもしれませんし、宿屋を経営する上でまとまった金が必要になったのかも知れません。重要なのは貴方のキャラクターが居れば仲間たちが飢えと退屈に苦しむことがないということなのです。

金竜亭の大平間

刻印のマーク

氏族:シヴィス氏族
種族:ノーム
経済分野:通信、公証人、弁士
「どれほど多くの伝説が、古代の条約に盛られた意味不明瞭な条項が原因となって勃発した戦役について語っているだろう?どれほど多くの伝説が、異文化に橋渡しをする通訳がいないばかりに起こった戦いについて語っているだろう?もし古代コーヴェアの族長や王がシヴィス氏族を雇うことができていたなら、血に染んだわれわれの歴史はもっと穏やかなものになっていたに違いない」
刻印のマークは言葉の力を強める魔法をもたらしてくれます。銀行の信用状を保証してくれる魔法の刻印、遠距離の電信の送受信、それらのコミュニケーションツールは刻印のマークの賜物です。シヴィス氏族のノーム達は言葉の力を使って通訳、仲裁人、弁護士、通信使として人と人、国と国、文かと文化のあいだに橋を架ける役割を担ってきました。その職業の性格上シヴィス氏族は中立の立場を数千年もの間崩したことはありません。
シヴィス氏族と聞いて真っ先に思いつくものと言えばスピーキング・ストーンというマジックアイテムでしょう。この魔法の石は世界各地にあるシヴィス氏族の拠点にある他のスピーキング・ストーンに向けて短いメッセージを送ることができるのです。この装置によって人々は遠く離れた場所に住む同胞との間でもコミュニケーションをとることが出来るようになり、世界は大きく狭まりました。
シヴィス氏族のノーム達は幼いころから交渉術や弁舌術について英才教育を受けて育ちます。そのため、シヴィス氏族に所属する冒険者は言葉に関する技能や相手の真意を探り出す技能に成熟していることでしょう。シヴィス氏族にはオーヴァーサイトという防諜と氏族への脅威を排除する部門があり、氏族を守るために様々な密偵組織と協力して秘密裏に暗躍しています。もしかしたら貴方のキャラクターもオーヴァーサイトのメンバーで冒険者をしながら氏族のための情報収集を行っているのかもしれません。

シヴィス氏族は剣よりも言葉によって脅威を排除する

創造のマーク

氏族:カニス氏族
種族:ヒューマン
経済分野:製造業
「近代世界を生み出したのは我が氏族だ。ライトニング・レイルを走らせるのはオリエンだが、その車両を作り車両が走る石路を設置したのはカニスだ。夜の闇を退けるエヴァーブライト・ランタンもカニスの発明だ。家事やも大工も錬金術師も、名人はみな我らの印を帯びておる。」
創造のマークはものづくりの力を強化します。触れただけで壊れた機械を修復でき、武器に魔法の力を宿すことが出来るのです。創造のマークを持つカニス氏族はマークが持つ力を最大限に利用してきました。オリエン氏族のライトニング・レイルもリランダー氏族の飛空船も、そして魂を持つ機械人間であるウォーフォージドさえもカニス氏族が生み出した発明品なのです。
カニス氏族は魔法、非魔法を問わずに、あらゆる製造業を支配しています。カニス氏族は職人が技を学ぶための学院を設けて、学院を卒業した職人たちを学費を免除する代わりに自分の傘下のギルドへと加えることで今の権勢を得ました。カニス氏族の高品質な共通規格はエベロン世界では一般的であり独立した職人でもカニス氏族が使用している規格に従うことがほとんどです。
最終戦争によって最も多くの利益を得たのがカニス氏族なら、最も多くの被害を受けたのもまたカニス氏族です。カニス氏族は各国に武器と何よりウォーフォージドという兵士を販売することで莫大な利益を得ました。しかし、戦争の末期に発生したモーニングと呼ばれる魔法災害によってサイアリが滅んだ時、サイアリに拠点を置いていたカニス氏族は氏族の指導者層と多彩なマジックアイテムを生み出してきた工場群も失ってしまったのです。加えて戦争の終結時に結ばれた条約によってウォーフォージドの生産の禁止などカニス氏族の商売は大きな規制を受けました。
現在カニス氏族は家長の座を争って三つの派閥に分裂しています。それぞれの派閥はモーンランドの奥地に眠る氏族の財産の発掘、ウォーフォージドの秘密裡の再生産などの事業を行いライバルとしのぎを削っています。冒険者たちもこの派閥争いの中で重要な依頼がもたらされるかもしれません。今後の未来でいずれかの派閥が分裂を終わらせることが出来るのかそれともカニス氏族は分裂して永遠に引き裂かれてしまうのかはまだ分かりません。

ウォーフォージドもカニス氏族の発明品だ

探知のマーク

氏族:メダーニ氏族
種族:ハーフエルフ
経済分野:探偵、調査、身辺警護
「体を張って刃物から守ってくれる筋肉の壁が欲しければ、デニス氏族に行きたまえ。前もって危険を感知し、刃物を帯びた輩と同室することすら避けたいなら、我々の出番だ。」
探知のマークは観察力と直観力を高めて、余人が見落としがちな手がかりを繋ぎ合わせる力や毒や魔法を感知する力を持ち主に与えます。このマークを継承するメダーニ氏族は最大限に利用し、探偵として難事件を解決し共同体に貢献したり、国家に仕えてスパイや陰謀をあぶりだすことを職務としています。
同じハーフエルフのドラゴンマーク氏族でもメダーニ氏族ではハーフエルフの未来について違う絵を描いています。リランダー氏族がハーフエルフのみの発展を描いているのに対して、メダーニ氏族はヒューマンとエルフどちらの価値観も受け継いだ種族としてのハーフエルフの発展を願っています。このため同じ種族の氏族でありながら氏族間の関係は冷え込んでいます。また、諜報戦において敵にまわることが多いフィアラン、チュラーニ氏族とも緊張した空気が流れることも珍しくはありません。
メダーニ氏族の冒険者は自分の与えられた能力を活かして戦闘においては敵の脅威が発揮されてしまう前に敵を無力化してしまうことを好むでしょう。待ち伏せ、奇襲、毒や魔法による弱体化、地形の利用。そういった相手が思いもよらない方法で反撃することがスマートなやり方として氏族では好まれます。メダーニ氏族は世界の秩序を揺るがすような陰謀を事前に阻止することに心血を注いでいます。貴方の作成したメダーニ氏族のキャラクターも冒険の中で大きな陰謀に出会った時、命を賭してでもその陰謀に挑みかかるのかもしれません。

探知のマークにとって毒殺を阻むのは朝飯前だ

治癒のマーク

氏族:ジョラスコ氏族
種族:ハーフリング
経済分野:治療、病院、回復薬
「命の値段ですか?ちょうどここに料金表がありますよ。これを見ながらお話ししましょうか。」
治癒のマークはその名の通り触れるだけで傷を癒し生と死の狭間を行き交う命を救う力を持ちます。ジョラスコ氏族はこの力を全面的に押し出すことで医療ビジネスを独占してクレリックのお株を奪ってしまいました。ジョラスコ氏族の商売も当初は慈善事業としての側面が強く、代金も患者が自主的に支払うというお礼の性質を持つ者でしたが、組織が大きくなるほど利益を優先するようになり、治療に対する対価の料金表が作られ、その代金を前払いしない限り治療を行わないという取り決めが氏族の構成人に義務付けられるようになったのです。そのため、治療の代金を支払えない貧しい人々の怒りを買うことも珍しくありません。
最終戦争では癒しのマークの力は重宝され国々はこぞってジョラスコ氏族の助力を望みました。ジョラスコ氏族は中立を貫き、そして利益を最大限に得るためにすべての国々の兵士にサービスを提供しました。戦争が終わったあとでも戦争で受けた後遺症に苦しむ兵士たちにとってジョラスコ氏族の癒し手からのサービスは切ってもきれないものとなっていて、ジョラスコ氏族にとっては兵士たちへのサービスは重要な収入源となっています。
ジョラスコ氏族のキャラクターを作成する場合に重視すべきことは氏族の癒しの力は人々を苦しめる傷を癒し、病気を取り去ることができる奇蹟の担い手としての重責と氏族の厳格な規則である対価無き治療行為の禁止の狭間でキャラクターの良心がどういった折り合いをつけているかでしょう。

治癒のマークは傷を癒し病を取り除くことは出来ても死を覆すことは出来ない

調教のマーク

氏族:ヴァダリス氏族
種族:ヒューマン
経済分野:動物、家畜
「魔法と自然をめあわすことで、われわれは”完成”に至る道を探り当てたんだ。この優美で力強い生物を見て、間違ってるなんて誰に言えるかね?」
調教のマークは持ち主に動物との間に絆を結ぶことを助け、扱いが難しい野獣であっても繁殖や飼育、家畜化を難なく行える力を与えます。
調教のマークを持つヴァダリス氏族は野獣や珍獣の飼育ばかりが取りざたされますが、牧場経営や犬や馬と言った一般的な飼育動物のブリーダー業なども幅広く行っており、牧場主やブリーダーに飼育法や調教術、血統の剪定などの情報を快く分け与える気前の良さも持ち合わせています。
このような活動を行っているにもかかわらずヴァダリス氏族を見る世間の目は冷たく、特に怪獣生物の飼育事業は奇異な視線が注がれており、恐ろしい怪物を作り出したとか、ヒューマンを改良した新人類を創造しようとしているなどの噂がまことしやかに囁かれさえしますが、実際のところその噂が立証されたことはありません。とはいえ、ヴァダリス氏族のブリーダーが魔法によって怪獣の品種改良を行っているのは事実であり、時には元となった生物の上位種さえ生み出しているのは事実だ。もし、この新生物がヴァダリス氏族の手に負えなくなった時には前述の懸念も真になるかもしれません。
ヴァダリス氏族は動物だけでなく自分たちの血統についても注意しており、婚姻では氏族の長老会議で認可を受ける必要があります。そのため、ヴァリダス氏族で育った者は自分の血縁関係を暗唱できることが普通で、自身の出世やビジネスでの成功よりも縁者の安全を第一に考えます。ヴァダリス氏族で育ったキャラクターは文明での振舞い方よりも自然と生命の美しさと神秘の素晴らしさについて教えられます。そのため”洗練”された人々からの嘲笑を浴びることもあるでしょうが、その気取った態度が氏族の操る獣の前でも保たれるかどうかを確かめるのは見物でしょう。

ヴァダリス氏族によって”完成”された生物は自然生物とはまるで別個の生き物のように振舞う

発見のマーク

氏族:タラシュク氏族
種族:ハーフオーク、ヒューマン
経済分野:ドラゴンシャードの採鉱、探偵、モンスタ-の人材派遣
「私たちはエベロンの目であり、私たちを導くのはエベロンの声なのです」
発見のマークは持ち主の感覚を研ぎ澄ませ狙った獲物の元へと導きます。このマークの力はシャドウ・マーチの沼地で獲物を狩るために利用されていましたが、今ではもっと金になるマンハントにも使われるようになりました。発見のマークはドラゴンマークの中では唯一、ハーフオークとヒューマンという二つの種族で受け継がれています。発見のマークを持つタラシュク氏族はドラゴンマーク氏族の中では最も新参者で、他の氏族からのやり方とは異なり、タラシュク氏族を結成した今でも旧来の諸氏族は重要なままで、名前もタラシュクではなく旧来の部族名を名乗ります。ですが、タラシュク氏族は氏族の旗の下で団結して勢力を広げることに力を注いでいます。
タラシュク氏族の最も儲けが良いビジネスはドラゴン・シャードと呼ばれる魔法の鉱石の鉱床を見つけ出すというものです。このビジネスのためにタラシュク氏族はコーヴェア大陸の端々、海を越えてゼンドリック大陸まで調査員を送り込んでいます。それ以外の都会に住み込み始めた氏族員は調査員や賞金稼ぎにその才能を活かしています。
最終戦争の末期にモンスタ-の国ドロアームが現れたのを見たタラシュク氏族はドロアームと文明諸国との間の仲介役を務めて、労働力や傭兵を供給することに乗り出しました。このビジネスは商売のためだけでなく、オークとハーフオークも他種族と同じだけの権利を認めさせることに成功したタラシュク氏族はドロアームに住む知性あるモンスタ-たちも同じように地位を向上させようと尽力しています。
タラシュク氏族の子弟は他の氏族の子弟がぬくぬくと過ごしている間にも過酷な試練を課せられます。荒野やスラムの路上に置き去りにされたり、本物の武器を使って狩りを行い時には命を落としたり消えない傷を負うことも珍しくありません。そのような過酷な幼少期を過ごしたことによって自立心を持ち追跡の技を心から楽しむことができる大人へと成長していきます。

鉱物、人、その他何であってもタラシュク氏族は何ものも見つけ出す

歩哨のマーク

氏族:デニス氏族
種族:ヒューマン
経済分野:傭兵、護衛、執行官
「人間の本性は決して暴力的なものではない。しかし、歩哨のマークの存在が、こうした考え方に異論を突きつけている。だからこそ法が存在する。暴力を信奉する勢力に法がたがをはめていることを、我々は喜ばねばならない。もし法が存在しなければ、それこそデニス氏族がどんな暴走をするか分からないではないか」
歩哨のマークは持ち主の護身術と武術の才能を強める力を持ちます。歩哨のマークを受け継ぐデニス氏族はマークの持つ力を活かせるようにドラゴンマーク氏族では唯一武力の保持を許されています。この特権を利用してデニス氏族は傭兵事業を最近まで独占していました。
デニス氏族は法と戦いという二つの相反するものどちらも信奉しています。法への信奉はデニス氏族に国境執行官としての地位に姿を変えて国を超えて法を犯す犯罪者を取り締まることに意味を見出し、戦いへの信奉は傭兵を供給する剣術ギルド、護衛を供給する守護兵ギルドの運営への情熱に駆り立てています。
最終戦争においてデニス氏族は中立を保ち全ての国々に傭兵と護衛を送り込みました。その仲介料はデニス氏族に巨万な富をもたらし、戦争が終わった後でも安全保障の戦力の供給源として国々から頼りにされています。ですが、最近になって傭兵業として強力なライバル、タラシュク氏族が現れました。タラシュク氏族はモンスタ-傭兵やオークやハーフオークといった近接戦ではヒューマン以上の特性を発揮できる傭兵たちを各国に売りつけ始めたのです。最終戦争で多くの精鋭を失ったデニス氏族はこの競争相手に後れを取り始めています。両氏族の間には緊迫した雰囲気が流れており、他のドラゴンマーク氏族もいつかこの対立が全面戦争になるのではないかと恐れています。
デニス氏族の保有する戦力は今でも一国に相当しています。デニス氏族の急進派はこの戦力を傭兵ビジネスではなくデニス氏族の権力を高めるために用いるべきだと主張しています。つまりはデニス氏族によるコーヴェア大陸の征服戦争です。この意見は指導者層からは否定されているものの野心ある氏族員からの指示を得ています。もし、穏健派の家長が倒れた後に急進派が権力を得たならばコーヴェア大陸にとって最悪の結果をもたらすことになるでしょう。
デニス氏族の子弟は幼いころから戦闘の腕だけではなく、義務と名誉の大切さとその二つを統べる方の重要性、誓いや約束がもたらす言葉の重みを教わります。そして、成長するにつれて秩序と戦略を学び真の戦士として成長していくのです。

歩哨のマークは持ち主を守るための魔法の障壁を生み出す


以上のようにそれぞれのドラゴンマークはドラゴンマーク氏族に結びついていますが、氏族に所属していないドラゴンマーク所持者も存在します。もし、貴方が氏族から一歩距離を置いたキャラクターを作りたい場合は以下で説明する身分に所属させておくとよいでしょう。
・皮剝がれ
ドラゴンマーク氏族には独自の掟があり、その掟を破ったものには皮剝ぎの刑が言い渡されます。この刑は掟を破った者から氏族員の特権、身分、名字を奪い氏族のサービスの利用までを禁じる重い刑です。昔にはこの刑罰は本当に違反者からドラゴンマークが現れている部位の皮膚を剥いでいましたが、今では本当に皮を剥ぐことはありませんでしたが、それでもこの刑を受けた者は社会的な死を意味するのも事実です。皮剝がれは全ての支部に人相書きが回され、所属した氏族以外のドラゴンマーク氏族も皮剝がれに関わることを避けます。プレイヤーキャラクターが最初から皮剝がれであることは推奨しませんが、皮剝がれの罪が冤罪か本当にその罪を犯したかに関わらずキャラクターの人生に暗い影を落とすことが出来るという利点はあります。また、キャンペーンの始まりや転換点で氏族のエージェントを皮剝がれの罪に問うことでキャンペーンとキャラクターに緊迫感を与えることもできるでしょう。
・孤児
ドラゴンマーク氏族の氏族員は法によって土地所有や貴族との婚姻、軍で階級を得ることを禁じられています。そうした制限から逃れるために氏族の特権を捨てたものは孤児と呼ばれています。最終戦争では自分が育った国を守るという理想を掲げた氏族のメンバーが孤児となることも少なくありませんでした。一口に孤児といっても氏族の面子を潰して出奔したものと氏族から祝福を得て氏族から離れたものでは氏族との関係性が全く異なります。キャラクターにドラゴンマークを持たせたいけど氏族のしがらみにとらわれるのが嫌な場合は氏族は良い選択肢になります。特に喧嘩別れせずに孤児になった場合は氏族との間の絆を利用して冒険に役立てることもできるでしょう。
・捨て子
ドラゴンマークは血縁によって受け継がれます。そのため、氏族が認知していない一見して氏族とは関わりないものにドラゴンマークが現れることがあります。その場合は皮剝がれの子孫かもしれませんし、悲恋の落し子かもしれません。どちらにしても捨て子はドラゴンマーク氏族とは血縁関係以外になんらの関わりを持ちません。一般的に氏族は捨て子を積極的に氏族に受け入れようとしますが、その意思決定には本人の意見が尊重されます。しかし、孤児の振る舞いが余りにも悪評高い場合は圧力をかけて氏族に加入させて管理下に置こうとします。捨て子はドラゴンマーク氏族から完全に関わりを絶ったキャラクターを作成した場合にうってつけの選択肢です。氏族の価値観も伝統も受け継ぎたくないという場合は捨て子を選びましょう。
・蕩児
ドラゴンマーク氏族に生まれながらもその使命や家業から距離をおく者たちは蕩児と呼ばれます。この選択肢はドラゴンマークを持つ冒険者にとって一般的なもので、孤児や捨て子と違ってそういった生き方を選ぶ氏族員は少なくなく、氏族のために働く前に世界を旅したいと考える者も蕩児に含まれます。

イレギュラーな存在:特異型ドラゴンマーク

「カニスのお坊ちゃん、あんたの印は”創る”ものだな、俺の印は”壊す”ものだ」
今まで説明してきた12のドラゴンマークはもたらす効果は予測可能で建設的なものでした。しかし。ドラゴンマークの中にはこの枠に収まらない特殊なマークが存在します。それこそが特異型と呼ばれるドラゴンマークです。
特異型ドラゴンマークは別々のドラゴンマーク氏族の間に産まれた子供に発言することが多いために12の氏族は氏族間での結婚を禁止してきました。ですが、特異型ドラゴンマークは種族、年齢、血統に関わらずに発現する可能性を持ちます。特異型ドラゴンマークの力は予測不可能で破壊をもたらすために使いこなすには相応の時間が必要となります。そのため、マークの力を暴発させて周りの者を意図せずに傷つけてしまい、住んでいた共同体からつまはじきにされてしまうマーク発現者も少なくありません。
特異型ドラゴンマークが恐れられるもう一つの理由としてはるか昔に強力な特異型ドラゴンマークを持ったハラス・タルカナンが特異型ドラゴンマークを持つ者たちを束ねていました。この勢力を恐れた12の氏族が協力して特異型ドラゴンマークを粛清するための大戦争が行われ、多くの被害を出したことがあります。それ以来、特異型ドラゴンマークを持つものは減り、力は衰えましたがモーニング以来、特異型ドラゴンマークが発現するものが増えています。

特異型ドラゴンマークは他のマークと異なり禍々しい色合いを放つ

まとめ

ドラゴンマーク氏族は強力な影響力を持ってキャンペーンを引っ張てくれます。強力な後援者となり、冒険者たちに資源や情報を提供し、エベロンの運命を握る重要な依頼をしてくることもあります。一方で、氏族と敵対した場合、その強大な力と広範なネットワークが冒険者たちにとって大きな脅威となるでしょう。ドラゴンマーク氏族の複雑な内部政治や対立、競争は、キャンペーンにフックを提供し、キャラクターの背景を作ることに役に立つでしょう。
また、ドラゴンマークを持つキャラクターは否応なく氏族へと結びつけられます。自分のキャンペーンに参加している冒険者がドラゴンマークを持つ場合はその氏族をキャンペーンに登場させることを検討してみても良いでしょう。特に氏族の意向とキャラクターの目的がぶつかればキャンペーンの転換点のイベントを生み出すことが出来るかもしれません。
是非エベロンで遊ぶ場合はこの記事のアイデアを活かして皆さんが楽しい卓を遊べることを祈っております!

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