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R.I.P.
10月29日は親友の命日。
20年前の今日、私の人生が大きく変わった日です。
あの晩は、幼なじみ達と飲んだ帰り道でした。
交通ルールを無視した2人組の男たちに親友が注意したことが、悲劇の始まりでした。
男たちは激高し、突然私たちに襲いかかります。
揉み合いの末、親友は近くのマンションに逃げ込みました。
追い詰められた彼は3階の窓から隣の建物へ飛び移ろうとして失敗し、転落。
加害者たちは逃走。
救急車が到着するまでの間、私は必死に親友の名前を呼び続けるも、反応はありません。
その後の警察署での聞き取り調査中、私は刑事に尋ねました。
「友達は...目を覚ましましたか?」
刑事の表情が曇ります。
「まだ聞いていませんでしたか...」という言葉の後の沈黙が、最悪の事態を予感させました。
「残念ですが、お亡くなりになりました...」
その言葉の意味をすぐに理解できず、心が拒絶します。
数時間前まで一緒に笑っていた親友が、もういないなんて信じられません。
しかし、安置室で冷たくなった彼の頬に触れた瞬間、これは現実なのだと突きつけられました。
葬儀で、遺影の前で、泣き崩れ落ちる両親の姿を見た時、自分だけが生き残った事への罪悪感と後悔が押し寄せました。
事件の後、私は人とコミュニケーションを取ることができなくなってしまい、誰とも関わらない日々を送っていました。
犯人たちはまもなく逮捕されましたが、心の闇は晴れることはありませんでした。
そんなある日、気晴らしに子供の頃からの思い出の場所である近所の公園を訪れました。
この何気ない選択が、人生を変える転機となったのです。
木々に囲まれた静かな空間で過ごす時間は、荒んでいた心を少しずつ癒してくれました。
森の中を歩き、季節の移ろいを感じ、木陰で読書をする。
そんな自然との触れ合いが、やがて習慣になり、少しずつ前を向いて歩いていく活力が芽生えてきたのです。
きっと皆さんの中にも、自然の中にいると心が落ち着くという経験をお持ちの方が多いのではないでしょうか。
私にとって、この体験は、後の「焚き火との出会い」へとつながる一歩となったのです。
あれから20年の月日が流れ、現在私は結婚をして子供が生まれたことをきっかけに、家族でキャンプを始めました。
特に焚き火の魅力に取りつかれ、今では定期的に焚き火会を開催しています。
初めて会う人たちと炎を囲みながら心の内を語り合う中で、長年避けていた人との交流に、喜びや楽しさを再発見しました。
親しい人を失った悲しみは消えることはありません。
人生では、時に大きな試練が訪れ、未来が全く見えなくなることがあります。
その瞬間は、すべてが終わったように感じるかもしれません。
でも、どんなに暗い夜でも必ず夜明けが来るように、やがて明るい未来が訪れるということを実感しました。
そして、暗闇の中にいるときこそ、ただ待つのではなく、自ら火を灯して前に進む力を見つけることも大切だと気づきました。
自分の手で光を作り出すことで、未来への道が少しずつ見えてくるものです。
そのことを焚き火が教えてくれたように思います。