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登山と温泉(八ヶ岳山荘VS明治温泉)

私は今日、八ヶ岳の天狗岳に白駒池から登り帰ってきた。
帰りに温泉に入りたいと思っていた私は、自動車を運転していると「奥蓼科温泉郷」の看板を目にして、すぐにハンドルを切り、その角を曲がった。
「奥蓼科温泉郷」をナビに入力して行くと、駐車場に着いた。
周りには温泉らしき建物は何もない。
大きな看板に地図があった。それによると最寄りの温泉は「明治温泉」と言うらしい。
私は日帰り入浴が可能か電話で聞くと、可能だと言うことで、すぐに車に乗った。
あっという間にその温泉に着いたが、道路は悪路だった。
こじんまりとした秘湯のようだった。
宿の人が言うには、昔から湯治の温泉として知られているとのことだった。
たしかに風呂に入ると、赤というか、黄色というかわからないような濁った浴槽がひとつと、透明な浴槽、そして打たせ湯がひとつあった。
私は体を洗うと、まず一番大きな浴槽である濁った湯に入った。温かいいい湯だった。
他にも客が四人ほどいて、濁った湯に入ったり、透明な湯に入ったり、打たせ湯に入ったり繰り返していた。
私も透明な湯に入った。
湯ではなかった。水だった。これが宿の人が言っていた「冷泉」か、と思い、私は「水」に体を沈めた。
入ると冷たさは消えた。
腕などを動かすと冷たさを覚えたが、じっとしていれば冷えるというわけでもなかった。
しかし、私は今回はただ、登山の汗を流しにきただけである。湯治に来たのではない。すぐに赤黄色の濁った湯のほうに戻った。
私は自然と、前回、八ヶ岳の赤岳に登った後に入った、八ヶ岳山荘の湯と比べてしまった。
この「明治温泉」は「八ヶ岳山荘」には及ばないと私は思った。
それはなぜかと言うに、「八ヶ岳山荘」のときは、心身共に疲れ切っていて、命の湯とばかりにたまたま下山口にあった八ヶ岳山荘の湯に入ったのであった。
今回は白駒池からニュウに登り、黒百合ヒュッテのテント場に一泊し、朝、天狗岳に登って、白駒池に下山しただけで、比較的楽な山行だった。
しかし、前回の赤岳登山は、深夜に赤岳鉱泉を出て、闇と霧の寒さの中で岩を登攀した過酷なものだった。死ぬかと思ったくらいに心身にダメージを受けていた。そして、美濃戸口までの長い道を歩いて、ようやく辿り着いた駐車場にある八ヶ岳山荘の看板に「日帰り入浴」の文字を見つけ、飛び込んだのである。
だから、今回と前回とではまったく温泉へ入る私自身の条件が違うのだ。
お湯の質など客観的に見れば、「明治温泉」のほうが上のような気がする。
ただ、登山者にとって、下山した場所にある日帰り浴場はなによりもありがたい。
そういった意味で、あの場所にある「八ヶ岳山荘」に私は軍配を上げたい。
しかし、湯治か観光として楽しむならば、「明治温泉」だろう。
どの湯がいいかは人それぞれと言うことか。

明治温泉の裏には渓流があり、滝もある
登山者以外の一般の人に勧めるならばこちらだろう
*(表紙の写真は明治温泉の正面)

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