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【SVJPイベントレポート】Fond 福山さん Ask Me Anythingセッション

2020年10月20日〜10月22日にシリコンバレー・ジャパン・プラットフォームと世界最高峰の起業家育成プログラムを提供する米国アクセラレーターであるY Combinatorが共催した、シンポジウム「Road to Silicon Valley-世界から求められる日本のテクノロジー-」。YC出身の起業家2名と海外で活躍する日本人起業家がホストとなって、参加者からのさまざまな質問に答えるAMA(Ask Me Anything)セッション。ホスト1名に対して参加者を20名に限定したセッションで、Fondの創業ストーリーから始まり、参加者の悩み、質問に対して考えやアドバイスについてお話いただきました。

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福山太郎
Taro Fukuyama
Fond Technologies, inc. CEO

2011年にAnyPerk(現Fond)を創業。日本人チームとして初めてYCを卒業し、2012年より福利厚生のアウトソース事業を米国で展開する。現在の社員数は約50人。YCのほか、DCM、アンドリーセン・ホロウィッツ、デジタルガレージ、サイバーエージェントなど国内外の大手VCから30億円超を調達。慶応義塾大学法学部卒。日本のアクセラレーター「Open Network Lab」の第3期生。

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Q1. 起業のきっかけや起業する際に始めに何を行ったかについて聞かせてください。

"YCで見つけた事業アイデア"

元々YCプログラムに参加した際は、いわゆる「マッチングアプリ」関連のビジネスアイデアだったんですが、プログラムを進めていく中でポール・グレアムに市場規模が伸びていないから折角Demo Dayに登壇するなら思い切ってアイデアを変えてみてはどうかと提案されたことがきっかけで、ビジネス・アイデアを初週に変更することになったんです。モックを製作し、潜在顧客からフィードバックを貰うことを繰り返し実施し、最終的に「福利厚生」に関する事業アイデアに辿り着くことができました。日本では既に福利厚生事業で上場している企業が2社あるものの、米国では労働人口が日本の3倍いるにも関わらず、福利厚生事業で上場している企業がなく、更に米国では人材の流動性が日本よりも高いため、福利厚生に関するニーズがあるのではないかと気づいたんです。

Q2. 米国における投資家・人材・企業組織作り、その他テック系分野で起業する人が心得るべきことについて聞かせてください。 

"米国と日本の投資家・企業組織作りの違い"

日本と比較すると米国における投資家の数はとても多いと思います。ただ、人が多いが故にしっかりとした投資家を探さなければ、結果的に自社に不利益になることが非常に多いとも感じています。あと、やっぱり米国での企業組織作りは日本に比べて難しいですね。特に人材の流動性に関しては凄くて、例えばサンフランシスコで働いている人々の平均勤務期間は約2年と言われているんですが、コロナ流行の前でたった約15ヶ月でしたし...あとストックオプションに関してはあまりに多くの企業が行っているので、福利厚生面での差別化にはあまりならないですね。やっぱり企業のミッションやビジョンといったところで攻めて行かないと、人材を留めておくことは難しいのではないでしょうか。

"今、英語ができないことは諦める理由にはならない"

英語がネックだから挑戦しないというのは日本人起業家によくありがちですが、他国から来ている人の話を聞く限り、英語ができないから米国での起業に挑戦しないという人は、あまり見たことがないですね。投資家に対して全くわからない英語でまくしたてながら資金調達をする光景も間近で見てきたので、英語が理由で諦めるのは凄くもったいないなと思います。    

"エンジニア人材の確保”

"ソフトウェア的思考を極める"


非エンジニアの人がテック系企業を創業したいときに行うことは2点あると思います。1つ目は、エンジニアの共同創業者が絶対に必要になるということです。2つ目は、非エンジニアの人が「ソフトウェア的思考」を持てているのかという点だと思います。例えば、携帯電話の製品改善を行う際に、ソフトウェア思考がない人はハードウェアを改善しようとしてボタンを増やそうとしますよね。家にあるテレビのリモコンなんかも使わないボタンがいっぱいあるじゃないですか。あれはハードウェア的思考です。

一方で、ソフトウェア的思考とはiPhoneのような画面内に各ソフトウェアを置くことで様々な解決策を無限に提供しようとする思考のことです。つまり、ボタンや物理キーなどを導入して幅広い機能性を追求するのではなくて、1つのハードウェア内に複数のソフトウェアを導入することで、様々な機能性をユーザーに提供するということです。例えば、Apple TVやFire TVのリモコン等は、ボタンが5-6個しかない。これがソフトウェア的思考の代表例です。ハードでなく、ソフトで解決する。これは発想の問題なので、エンジニアか非エンジニアということよりも、この「ソフトウェア的思考」ができるかがプロダクト作りにおいて凄く大事だと思っています。

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Q3. Fondのプロダクト・マーケット・フィットが既に有ったと言う感覚はどんなものでしょうか?また、資金調達をどの時点で行うのが適切だと判断したのかについて聞かせてください。                     

"伸びる市場を見つけること"

自分の肌感覚なので伝わるかは分かりませんが...起業した後、徐々にマーケットに引っ張られる感覚が出てくると思います。いわゆる顧客等に求められ始めるタイミング、プルされる瞬間が出てくるのがプロダクト・マーケット・フィットだと考えています。周りを見てみると多くの起業家はプロダクトの方しか改善しようとしていない傾向があるんですが、現実問題として、どんなに良いプロダクトがあっても市場が伸びていないと意味がないですよね。そもそも市場があるのか、その市場は伸びているのかといったところからソリューションを見つけていく方が良いかなと思います。あと、資金調達に関してはプロダクト・マーケット・フィットが合ったタイミングの方が良いかなと個人的には思います。1番良くないのは、選択する市場を間違えて資金だけ集めてしまい、徐々に資金が底を尽きていくという状況に陥ることですね...                                   

"とにかく顧客と話す時間を増やすこと"


Fond(旧Anyperk)で福利厚生の事業を始めたての時は、営業や顧客マネージメント部分を英語のできる社員にお願いしたりしていました。それ故に思っていたほどPMFがなかったのかなということは感じました。その後、Reward事業を立ち上げる時は英語のレベルも高まったので積極的に前線に出ていき、年間最低100社の顧客に課題・悩み・ソリューションのニーズ等に関して質問をしていました。そうやって解決できるものを常に提供していくことで売り上げを伸ばしていきました。顧客と話す時間が増えるほど、プロダクト・マーケット・フィットは高まっていくと思っているので、顧客の声を繰り返し聞くことが重要だと日々痛感しています。

最後に
〜起業家へのメッセージ〜


よくアメリカで起業を志す際に、英語力やVCとのコネクション等を気にしてなかなか行動に移せない人が多いと感じています。しかし、もしやりたいことが既にあるのであれば、とりあえず打席に立って行動したほうが良いでしょう。物事を始めてからの方が、実際に圧倒的な速度で学べることができると思います。

※本記事は、2020年10月22日に参加者を限定開催したのAsk Me AnythingでのQ&Aのやり取りの一部抜粋です。

SVJP Entrepreneur Program “シリコンバレーへの挑戦“のイベント全体のレポートはこちら


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