【SVJPイベントレポート】Alpaca CEO 横川 毅さん - Ask Me Anythingセッション
2020年10月20日〜10月22日にシリコンバレー・ジャパン・プラットフォームと世界最高峰の起業家育成プログラムを提供する米国アクセラレーターであるY Combinatorが共催した、シンポジウム「Road to Silicon Valley-世界から求められる日本のテクノロジー-」。YC出身の起業家2名と海外で活躍する日本人起業家がホストとなって、参加者からのさまざまな質問に答えるAMA(Ask Me Anything)セッション。ホスト1名に対して参加者を20名に限定したセッションで、Alpacaの創業ストーリーから始まり、参加者の悩み、質問に対して考えやアドバイスについてお話いただきました。
横川 毅
Tsuyoshi Yokokawa
Alpaca Co-Founder & CEO
米国で最も急成長しているAPI株取引プラットフォームであるアルパカ(YCW19)の共同創業者兼CEO。同社のAPIを利用することで、誰もがアルゴリズムやアプリケーションを構築して、手数料ゼロで株式を売買できるようにしています。Alpaca は、Spark Capital、Portag3、Social Leverage、Y Combinator、そして経験豊富な業界のエンジェル投資家を含む世界的なトップ投資家のグループに支えられています。2015年にアルパカを設立する前、横川氏はリーマン・ブラザーズや野村でデリバティブ、証券化、FXなどの世界で様々なポジションを経験してきました。また、大手製薬会社から重厚な物流会社、テック大手までの企業のデータ処理を支援するテック開発会社を設立した後、ディープラーニングを使った画像認識技術のソフトウェアサービスを共同開発し、日本の京セラグループに売却しました。
Q1. YCに行こうと思ったきっかけや瞬間は何でしたか?またYCに応募する際のコツやプログラム参加によるメリットはどのようなものか教えてください。
"成功するためのレールとしてのYCプログラム"
グローバルで成功するためにはアメリカで成功しなければならず、アメリカで成功するためにはレールに乗らないといけないと思ったからです。テック業界における起業でレールに乗るということは「Y Combinator」に参加することだと感じので、YCに応募することにしたという感じです。
"何が本質的な「問題」かを突き詰めろ"
やはりYCに応募する際のコツは、問題解決する上での「問題」がなんなのかというものを徹底的に突き詰めることだと思います。また、YCアプリケーションを提出する際のリファレンスも重要ですね。インタビューは練習次第で突破できると思いますが、米国は何でもテンプレ化したがるので、しっかりと受け答え等を準備する必要があります。
"YCプログラムを通じて得られる2つの価値"
YCプログラム自体には2つの価値があると考えていて、1つ目は、2週間に1回パートナーと面接するというスプリント期間を経験することで起業の現実と意欲が刺激されること。また、YC参加を通じてQuarter毎の目標や達成に向けたスケジュールを2週間毎に全体確認してスパートをかけることが重要ということも学べました。定期的なグループでの振り返りでは他の会社のファウンダーからも、もっと突っ込めよとハッパを掛けられます。とにかく達成にコミットすることを学びました。2つ目は、YCを出ているということでスタンプ(箔や信用)が付く傾向があるということですね。顧客やパートナー企業から見ても評価が上がる部分はありますし資金調達や人材採用という点でも効果は大きかったなと感じています。
Q2. YCプログラム中に横川さんが立てた目標の中で、1番辛かった等の記憶に残ったものがあれば聞かせてください。
"Demo Day ピッチでは 分かりやすさを突き詰めろ"
YCプログラム中で最も重要な瞬間はDemo Dayにおけるピッチです。1番重要なスライドは2枚ぐらいしかなくて、「分かりやすいタイトル」と「グロースの可能性」に関する2枚だったと記憶してます。特に、自分たちが行っているオンライン証券ビジネスではトランザクション数が1つのKPIになるので、その数字を増やすためにはユーザーを増やすか、ユーザー1人あたりの取引数を上げるかと分解できるのですが、どちらかでとにかくホッケースティック(急成長)を生み出すことには命をかけて取り組みました。そういう熱量はチームにも、ユーザーにも伝わったような気がします。特に初期のスタートアップとしてプロダクトやサービスの細かい部分を理解してもらうことが難しい、とにかく初速が凄く伸びているということが1つの判断軸となり投資したいとなることは多いと思います
あと、資金調達時のピッチが良ければプロダクトの本当の価値は無理にピッチ時に伝えなくても良いと個人的には思っているほうなんですが、投資家によっても考えが違うので注意が必要ですね。細かいことは考えずに投資をする投資家も実際に存在します。(笑)やはり投資家によって手法や考え方が異なるので、ピッチに盛り込む内容に関しては色々な意見があると思いますが。
Q3. 米国の投資家が入っていることによるバリューや影響は何かありますか?
"箔をつけるということ"
米国の投資家が入っていると、ビジネスを行いやすくするためのスタンプ(箔を付ける)ことに関しては有効かなと思っています。実際日本にいたときは、とにかく誰でも良いから横文字の人を入れて箔を付けようとしていました。(笑)知名度の高い人を探していたので、米国の著名な投資家を入れようとしていたんです。(笑)
ただ、実際にしっかりとアドバイスやメンタリングしてくれる投資家なども多くて、米国の投資家と接点を持つことは組織運営やビジネスを実行する上でも非常に価値があると考えています。実際に米国投資家経由で人材や潜在顧客等を紹介してもらうことも多いですね。
Q4. 日本以外でフィンテック事業を行うとすると規制のハードルが高く、ビジネスを諦めてしまう可能性もあると思います。どのように乗り越えたのでしょうか?
"ライセンスを取ることで顧客からの信用を獲得する"
国内外を問わず、規制業種で起業する場合はその問題が付き纏うことになりますね。特にMinimum Viable Product (MVP)はライセンスが無いと事業が行えないという問題があります。実際にAlpacaも証券ライセンスを取得しないと商品・サービスをローンチできないので、その点では凄く苦労しました。ライセンスがあること自体がユーザーに刺さる業界なので、やらざるを得なかったですね。逆に考えれば、一度ライセンスを取れば、それである程度の信用を得ることはできるので。結局ライセンスなしでもアイデアのテストはできたかもしれないですけど、それでは何の証明にもならないので真っ直ぐ向き合ってやるしかなかったですね。
最後に
〜起業家へのメッセージ〜
YCのプログラムではFounderとしての責任の重さを叩きこまれました。何が何でもグロースする、ということを繰り返す。グロースが命で、それにコミットすることがスタートアップなんだということを学びました。関連して、アルパカにたどり着くまでの起業家人生を振り返ると、プロダクトマーケットフィットの前に、ファウンダーマーケットフィット。何で自分がやっているのか、ストーリーを語れることが大事なんだなと感じています。それがあるから、自分が納得してコミットできるようになっている気がします。
※本記事は、2020年10月22日に参加者を限定開催したのAsk Me AnythingでのQ&Aのやり取りの一部抜粋です。
SVJP Entrepreneur Program “シリコンバレーへの挑戦“のイベント全体のレポートは以下リンクよりご参照ください。