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やらないことを決める
2023年4月
さっぽろテレビ塔3階への出店が決まりました。
藻岩山と大倉山で
展開してきたレストランと同じ
コース料理をメインに提供する形態での
出店については役員や関係者等、
内外からも「なぜ???」と
疑問の声があがりました。
テレビ塔という「昭和」の時代の象徴。
その場所で「今風」のレストランは
不似合いだと至る所で耳にしました。
そのたびに、私には
「テレビ塔の声」
が聞こえてきました。
この話は大きく脱線してしまうので
また別の機会に記させていただきます。
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【やらないことを決める】
THE GARDEN SAPPORO
HOKKAIDO GRILLE
の出店が決まったとき、
「フレンチレストランはやらない」
とシェフに話をしました。
『フレンチは敷居が高い』
そうした心理的障壁だけでなく
既存の市場でがっぷり四つの
相撲をすることは
時期も尚早でしたし
できれば競争はせずに
業界全体を浮上させたいと
考えていました。
私たちはすでにそれなりに
大きな組織になろうとしていました。
ポートフォリオを組み上げ
何度も何度も計画をたてました。
たとえば、マーケティングを行ううえで
北海道、道央地区のレストランを大凡
調べてカテゴリー1からカテゴリー5までの
ヒエラルキーを設定しました。
▪︎道央圏のレストランヒエラルキー
✅カテゴリー1(約80店舗)
ディナー単価推定20,000円以上の
レストラン群、オーベルジュ、寿司、高級和食
オーナーシェフのお店
✅カテゴリー2(約150店舗)
ディナー単価推定13,000円-20,000円未満の
レストラン群、ウェディング対応の大箱店
寿司、創作料理、ステーキハウス
✅カテゴリー3(約500店舗)
ディナー単価7,000円以上13,000円未満の
レストランやビストロ、寿司、焼肉
和食、高級居酒屋、ホテルダイニング
✅カテゴリー4(約300店舗)
ディナー単価5,000円以上7,000円未満の
レストランやビストロ、居酒屋、ブラッスリー
✅カテゴリー5(-----)
ディナー単価5,000円未満のビストロ、
居酒屋、カフェなどなど多種多様
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上記のようにカテゴリー3は札幌を中心とした
道央圏のボリュームゾーンとなっています。
そして、実際利用してみたり
メニューをみながら様々なシーンでの
利用想定をしていくなかで
コース料理を提供する
レストランスタイルにおいて
道央圏、特に札幌のマーケットでは
10,000円〜15,000円の価格帯に空きがある
ことがわかりました。
私たちはここを
【カテゴリー2.5】
と名づけ、持っているリソースを
すべてここに投入することとしました。
▪︎カテゴリー2.5の攻略方法
このカテゴリー2.5のポジションを
ホワイトポケットとして考え
利用される可能性のある顧客層を設定し
その顧客層に対し、私たちが展開するレストランの
他社との競争優位性や互換性を想定し尽くしました。
まず、第一にここをご利用いただく
お客様は「札幌市民」の皆さまです。
市民の皆さまの「ハレの日」に活用いただける
レストランとしての展開が命題。
そのほかにもあらゆるケースを
想定しましたが、裏を返すと
同業として、この単価ゾーンでの
Food & Beverage + Serviceを
構成するのがとても難しく
ちょうどこのゾーンに
落ち着かせることは、これまでの
常識を外す必要があると考え
私たちだからできる展開
に持っていこうと考えました。
フレンチレストランのディナーだと
この価格帯で顧客満足を形成するのは
少し難しくなってしまうかな。と思います。
価格以上に顧客の期待値が
上回ってしまうおそれがあり
それに対して食材やワイン等の
ラインナップも平凡になりがちです。
わたしたちは新たな店舗では
【フレンチレストランはやらない】
そう決めたことで
これまでの常識的な
コストコントロールから
解放されることになりました。
そのうえで、サービスやクオリティは
そこを目指し、オペレーションシステムも採用。
ワインに至っては、そうしたレストランの
およそ半額で軒並み楽しむことのできます。
なぜそうした価格帯で提供できるのかは
部門別採算(アメーバ)と
ポートフォリオマネジメント(PFM)を
ミックスして事業展開を行なっていることが
大きな要因としてあります。
さらに、すでに展開していた
レストランとの互換性を高めつつ
教育コストを圧縮するためにも
このカテゴリー2.5に資源を集中させる
必要がありました。
時は『人手不足』の世。
人的資源の流動性を高めて
組織を横断的に行き来できる人材が
必要となります。
通常であれば、
このカテゴリー2.5の店舗を
3つ展開することは悪手となるので
段階的にグラデーションを設けた
店舗展開を行うことでしょう。
しかし、私たちはもう1店舗同様の
レストランを出店することで
札幌の観光地 × レストラン = 私たち
というブランディングを
押さえに行きながら
どの店舗からスタートしても
同等のスキルレベルを得られる仕組みづくり
を構築することにしたのです。
それはこれから始まる
中長期戦略ストーリーの序章となり
これから数年後に繰り広げられる
札幌観光の群雄割拠の時代を見据え
レストラン業界を下支えしていくという
覚悟の現れともいうべき選択だったのです。
この選択について根拠となった
業界の動向等については
またあらためて記してまいります。
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新店舗は
『フレンチ』から離れることで
選択肢が広がりました。
ただ、そのグランドオープンから
1か月後には、ビアガーデンのオープンも
控えていました。
2023年4月と5月に
ほぼ同等の売上規模となる
異なる2つのオープンを
札幌の真ん中でスタートさせなければ
ならないという重圧は
それなりに刺激的で
今振り返ると
なんでこんなことができたのか
と不思議な気持ちになります。
限られた資源をどこに集中させるか
その判断力を得たことは大きな成長でした。
「やらないことを決める」という選択は
以降の事業展開でも重要な指針となっています。
最後までお読みいただき
ありがとうございます。