【コメディ】言葉との出会い損ない。ーネットで出会ったふたりの変人。
やはり問題は言葉なのだ。〈言葉と出会い損ない、本の読み方も学ばず、じっくり本に向き合うこともないままにそのことに気づくことなく、出自を偽り、文学にすがり、借り物の言葉を、泡のような言葉を陽気にまくしたてながら、(じっさいには検索知を盛り込んだ世間話ベースの話題しか書けないただの世人であるにもかかわらず)自信まんまんに偽インテリを演じ、人生の暮れ方まで生きてしまった人たちの肖像〉と言えばいいだろうか。いいえ、かれらの「自信まんまん」は虚勢であり、ほんとうはこの世の片隅で身を縮めて生きている哀しい人たちなのだろうか? 夕暮れの公園のベンチに老人が腰掛け、鳩を眺めながらふわふわちぎりパン・チョコクリームを齧り、マウントレーニア・カフェラッテとともにくたびれた食道に流し込む姿が見える。どこかから『家路』のメロディが聴こえてくる。見上げれば空は燃えていて、やがて夜が訪れるだろう。カラスが飛び立ってゆく。かれらはどうしてこんなことになってしまっただろう? しかも、かれらは世間に流通している他愛もない価値観にがんじがらめになってしまって、なにがなんでも自分は人生の勝ち組だ、と偽る。どういうわけかぼくはこういう人たちに文学的(?)関心を寄せてしまう。どうしてだかその理由はぼくにもわからない。ぼくはかれらを軽快なコメディ映画に仕立てて脳内上映し、ぼくは観客席でポップコーンを齧りながら体をひくつかせてゲラゲラ笑う。あるいは、もしかしたら「おまえだって同類じゃないか、しかもおまえの方がよほど腹黒!」とぼくを見なす人もいるかもしれないけれど。いずれにせよ、もしも書き手が主人公にまったく感情移入できないならば、ろくな文章は書けない。ぼくはずうずうしくフローベールに倣ってそれを言う資格があるだろうか、ボヴァリー夫人はおれだよッ!