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源氏物語ー融和抄ー

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『源氏物語』を独自の視点で掘り下げ、紫式部という女流作家の思想にアプローチしています。
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2023年3月の記事一覧

源氏物語ー融和抄ー黄昏に映ゆる時

源氏物語ー融和抄ー黄昏に映ゆる時

 

 万葉集の巻頭を飾る歌です。古来より、雄略天皇の求婚歌と伝えられてきました。雄略天皇自身が作ったというより、雄略天皇を象徴するような歌として歌い継がれたということでしょう。
 古代史を調べる中で、何度となく紐解いたこの辺りの事情を、まさか『源氏物語』を通して改めて紡ぎ直す時がくるとは考えもしませんでした。
 呆れるくらいの時間を費やして、馬鹿にも程があるくらいの要領の悪さではありますが、気分

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源氏物語ー融和抄ー河原の語源に迫る②

源氏物語ー融和抄ー河原の語源に迫る②

 冬のダイヤモンドの一角を担う、ぎょしゃ座のカペラ。その和名を河原星という。

 ぎょしゃ座は老人が子山羊を抱いている形をしていますが、カペラとは、「雌の子山羊」を意味します。
 ぎょしゃ座の神話についてはいくつかの説がありますが、一般的に知られているのはアテナイ王エリクトニオスの話でしょう。
 ですがどの話を参考にしても、何故子山羊を抱いているのかが不明です。

 カペラにあたる雌の子山羊が意味

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源氏物語ー融和抄ー河原の語源に迫る①

源氏物語ー融和抄ー河原の語源に迫る①

 中大兄皇子(天智天皇)が、母斉明天皇(皇極天皇)を弔う為に建てたのが奈良県明日香村の川原寺です。このお寺の礎石に使われたのが石山寺から切り出された石なのです。不思議な縁です。
 以前、川原の語源を考えていた時、ただ川の側に在ったからという理由だけではなく、他にもあるのではないかという気がして、よく似た響きの瓦の語源を調べてみました。
 日本においてはその語源は、サンスクリット語のカパーラにあるの

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源氏物語ー融和抄ー輝く日の宮

源氏物語ー融和抄ー輝く日の宮

 五十四帖に秘められた事について書いたところですが、実は『源氏物語』には失われた巻があると伝わっています。
 現代までにたくさんの写本が存在し流布してきただけに、数え切れないほどの異説があるわけで、完全に解明できる日がくるとは到底考えられないほどです。

 そこでひとつ考えられる事を述べるとすれば、現在の巻名、巻数に落ち着くに当たって、後世の人の手が加わっている可能性は大きいということです。つまり

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源氏物語ー融和抄ー五十四帖に秘された世界②

源氏物語ー融和抄ー五十四帖に秘された世界②

 語り手によって様々な印象を与える『源氏物語』ですが、それとは全く無関係だと思っていた、ある書籍に目を通していた時のことです。索引の表を見ていると、目が止まる人名の数々。もしや?と期待は高まり、その索引を引き続けた結果、期待は確信に変わりました。

 その本は、福岡県、現在の那珂川市に伝わっていた伝承をまとめた『儺の國の星』、著者は真鍋大覚。その伝承の実態は、物部氏あるいは安曇族という古代氏族に関

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源氏物語ー融和抄ー五十四帖に秘された世界①

源氏物語ー融和抄ー五十四帖に秘された世界①

 平安時代、ちょうど紫式部や他の女流文学者達が活躍した中期頃には、観音信仰が流行し、特に石山寺や初瀬寺にはこぞって参詣していました。
 初瀬寺(長谷寺)を訪れると、今でもたくさんの歌碑があり、往時の様子が伺えます。
 始めは貴族を中心に広まりましたが、次第に庶民へも広がっていきました。

 今回のお話は、光源氏が亡くなった後、柏木と女三の宮の間の子薫と、光源氏と明石の君の間に生まれた明石の姫君が入

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