秋ピリカグランプリに応募させて頂きます。タイトル「紙切れ1枚」
「俺の名前、サインしといたから」
「うん。 ・・・・・わかった。」
「ごめん。真亜瑠が死んでから、お前が辛いのに何もしてやれなくて。でも、そんなお前を見てるのも・・・。・・・俺も辛いんだ。」
「うん。・・・私こそごめん・・・。 ドラマでしか見た事なかったけど、紙切れ一枚でって・・・、こういう事なんだね。」
「そうだな・・・。 じゃあ行ってくるよ。 今日は早めに帰るつもりだから、帰ったら俺の荷物はまとめる。」
「うん・・・。」
「でも少しでもいいから何か食べろよ。 この一ヶ月ろくに食べて無いだろ?」
「うん。 でもやっぱり食欲無くて・・・。」
「それも分かるけど・・・、まずは体力だからな。 じゃあ行ってくる。」
「うん・・・。 あ、1つ聞いていい?」
「どうした?」
「あのね、ずっと考えてたんだけど、再婚ってすぐには出来ないのかな?」
「・・・、女性は一定期間出来ないみたい。確か100日だったと思う。子供が出来た時の父親が確定出来ないからが理由らしい。」
「そうなんだ。じゃあ同じ相手となら?」
「法的にはすぐ出来る事になってるけど。ただそれなら、別れなければいい話だと思う・・・な。」
「そうなんだ・・・。」
「・・・どうした?」
「何でそんなにすぐ答えられるのかな・・・って思っただけ。」
「え? ・・・調べたからだよ。 正直言えば、今も別れたいとは思ってないし。 もし別れたとしても・・・。」
「やっぱり・・・。」
「そりゃそうだろ。 悲しいのは分かるけど、犬が死んで離婚って・・・。聞いた事ないよな・・・。」
「私もそれは分かってる。 でもまだ5歳だったんだよ。真亜瑠(マルチーズ)ともっと一緒に居たかったのに・・・。」
「早いよな・・・。」
「うん・・・。」
・・・
・・・・・
・・・・・・・
「なぁ、帰ってからもう一回話さないか?」
「そうだね。」
「やっぱりこんな終わり方を真亜瑠(マルチーズ)が望んでるとは思えない」
「うん」
「じゃあ一旦仕事行ってくるわ。 どっちにしても早く帰るよ。」
「うん・・・、いってらっしゃい・・・。」
翌週、ペットショップで新たなマルチーズを見る2人は、新たな一歩を踏み出していたのであった。
(900文字)