囀る…感想25-2 56話感想その2 デュエット
(以前ふせったーに上げた記事の再掲です)
さて、ストーリーやふたりの心情からはいったん離れ、純粋にただその姿を見たとき、ふたりの動きや姿勢、位置関係がなんて美しいのだろう……とただただ感嘆します。
詰め寄り、引き寄せ、抗うのをまた抱き寄せて。相手の脚と脚の間に自分の脚を差し入れ、腰を引きつけ、また抗おうとするのを相手の目を捉え迫り、最後には一体となる……。
その緊張感漂う攻防はまるでダンスのようで。
百目鬼が矢代さんの右脚を抱えキスするシーンはリフトの振付のようにも見えました。
たとえば男性同士で踊られることもあるというアルゼンチンタンゴ。
哀愁の中に激しい情熱が溢れる、ピアソラのリベルタンゴが聴こえてくるようでした。(付記: 個人的には、ブエノスアイレス午前零時もいいな……いやむしろこっちかも)
今回のふたりの行為は、過去二回の不協和音を奏でるようなそれとは違い、息がぴったりで、同じ熱量をもって相手を求め合っているように見えました。
矢代さんは、四年前のように吐き気に耐え、不安と恐れに慄く表情で逃げようとしながらではなく。
前日のように、百目鬼から一方的にされる行為に戸惑いながらでもなく。
自分から両腕を百目鬼の首に回し、固く抱きついてキスをし、積極的に愛撫を享受する。
百目鬼はただ一方的に自分の熱情をぶつけるのではなく、矢代さんの反応を見つつ、刺激を与え、自分自身も高まっていく。
それはまるで、お互いが相手を信頼し、息を合わせ、高め合うことで初めて成立する、ダンスのデュエットのようだな……と思ったのでした。
(2024/2/7)