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【天声らん語】2022.5.26


和の空間でありながら、異国の風に吹かれて藤が揺れる。慎ましく芳醇な香りを想像させるこの場は、京都迎賓館の藤の間だ。壁面装飾いっぱいに39種類の日本の草花が織り込まれており、外国人ならずとも圧倒されたのを覚えている。床に敷かれた緞通いっぱいに藤の花びらがあり、外国の方をお出迎えするのに歓迎という花言葉をちりばめるのは、日本人のおもてなしの心の神髄だろう。藤は天皇や貴族に愛された花で、源氏物語では高貴な人に『藤』や『紫』といった名前が付けられている。現在では広く親しまれ、5月の連休では藤まつりを訪れた方も多いのではないだろうか。▽コロナワクチンの4回目接種が始まった。今年は自粛無しの連休を過ごし、屋外で会話が無い場合はマスクを外してもよいという。少しずつ、コロナ前の生活に戻りつつあるのかもしれない。上品に咲く藤の花は時々儚げに映り、雨も連想させる。藤の季語は晩春。梅雨が明ける頃には、外国人観光客も増えるだろうか。

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