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それぞれのバレンタイン🍫💕【みゆき編】~ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝の外伝~



まえがき

鈴蘭と申します。
毎朝、SNSのClubhouseで今井雅子先生のnote『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』を読ませていただいてます。

こちらのお話は今井雅子先生の『ドラキュラとあかいチョコレート』と漂流工房さんの『ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝』の世界をお借りした二次創作外伝になります。

『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』はこちら。

『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』はこちら。

今井雅子先生の短編小説『究極の愛のカタチー膝枕』(通称正調膝枕)はこちら。

漂流工房さんの『ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝』のnoteはこちら。

ーキャラクター紹介ー

ドラキュラ

美男子だけどちょっとドジで結構不幸な目に遭う。
吸血鬼なんだけど基本優しい。嫁様の尻に敷かれる座布団なんだけど結構この立場も気に入ってる。
実はすっごく腕の良いパティシエやってます。
娘ちゃんのパパ。

みゆき

夕日の丘でドラキュラさん遊んでいた子どもの1人。バレエ教室で毎日レッスンを受けている。

あると

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。
ピアノを習っていて毎日教室に通っている。
楽器の名前に詳しい。たくとの兄(双子)。


今回のお話は、ふみねぇさんから女の子達がドラキュラさん指導で、お店でチョコレートをワイワイしながら作ってる光景が浮かんできちゃいましたというコメントから作らせていただいたものです。ふみねぇさん、素敵なシチュエーションをご提案くださりありがとうございました。

まえがきが長くなり失礼しました。
それでは、本編スタート。


鈴蘭作 それぞれのバレンタイン🍫💕【みゆき編】~ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝の外伝~


冬休み最後のバレエレッスンの日。

バレエ講師「今日はここまでにしましょう」

みゆき「先生、ありがとうございました」

バレエ講師「みゆきちゃんは明日から学校?」

みゆき「そうです。明日は始業式なんです」

バレエ講師「急な話で申し訳ないんだけど…明日から3月まで教室お休みしないといけないの」

みゆき「3月までですか、結構長いんですね」

バレエ講師「毎日レッスンに来てくれるみゆきちゃんには本当に申し訳ないんだけど…」

みゆきちゃん「わかりました、母に伝えます」

バレエ講師「本当に本当にごめんね、今月と来月のお月謝は結構ですとお母様に伝えてください。みゆきちゃんの今度の発表会はクルミ割り人形で金平糖だったわね」

みゆき「はい」

バレエ講師「ごめんね、自主練習頑張ってね」

みゆき「いえ、自主練習頑張ります。では失礼します」

レッスン室を出て着替えると、教室を出ました。
忙しい先生はこれまでにも何回かレッスンをお休みすることがあったのですが、今回みたいに長いお休みは初めてです。
仕方ないか…明日から自主練頑張らなきゃ。

あると「みゆきちゃん」

歩いてると、後ろからあるとが自転車で走ってきました。

みゆき「あると君」

あると「レッスンの帰り?」

みゆき「うん。でも明日から先生の都合で3月までお休みになってしまって…。お休みの間自主練習頑張ってって言われたの」

あると「そうなんだ…みゆきちゃん、よかったらちょっとお茶していかない?」

少し先にあるカフェに2人で入って行きます。
席に着くと、みゆきはロイヤルミルクティー、あるとはコーヒーをオーダーしました。

みゆき「あると君、コーヒー飲むんだね」

あると「うん、いつも飲んでるよ」

みゆき「私は飲めないわ」

あると「コーヒーのキリッとした苦味が好きなんだよ。だから家でもコーヒー」

みゆき「そうなのね。あると君って甘いの嫌い?」

あると「甘すぎるのは苦手かな。甘さ控え目のスイーツなら食べるよ。和菓子とか」

みゆき「チョコレートは?」

あると「ビター系なら眠気覚ましに食べてる」

みゆき「そうなのね」

あると「みゆきちゃん、今度の発表会でクルミ割り人形やるんだっけ?」

みゆき「そう」

あると「僕のピアノの先生が演奏会するんだけど、今回チャイコフスキーの曲ばかりなんだ。確かクルミ割り人形も入ってたと思う。みゆきちゃん、一緒に行かない?」

みゆき「お誘いありがとう。行くわ」

あると「2月の土曜日なんだけど」

みゆき「予定空けておく」

コーヒーとロイヤルミルクティーが運ばれてきました。

みゆき「あると君と演奏会行くのも久しぶりね。前は結構一緒に行ってたのに」

あると「そうだね。お互いにレッスン忙しいから行く予定立てられないんだよね。久しぶりにみゆきちゃんと行けるの嬉しいよ。楽しみにしてる」


みゆきが自分の部屋に戻ると、LINEの着信音。
【夕日の丘のみんな:女子】のグループLINEからなぎさが書き込みしたようです。

なぎさ『今日、ドラキュラちゃんのお店に行ったら、レジのお兄さんにバレンタインに向けてのチョコレート教室があるって教えてもらったの。手作りチョコレートの作り方とか、色々教えてくれるんだって。』

ゆず『それってドラキュラちゃんが作り方教えてくれるってこと?』

なぎさ『そうみたい。あたしはお得意様だからって教えてもらった』

りん『でも、ドラキュラちゃんに教えてもらうんならお金かかるんじゃないの?』

なぎさ『それが無料でいいみたい。材料費はいるみたいだけど』

ひな『夕日の丘の子ども特典とかやったりしてな(笑)』

なぎさ『そんなこと言ってなかったよ。4人までなら友達連れてきても大丈夫って言われたんだけど、バレンタインデーのチョコ、手作りしたい人いる?』

へ~、ドラキュラちゃんの手作りチョコレート教室かあ。材料費だけみたいだし、ドラキュラちゃんみたいな一流のパティシエさんに教えてもらう機会なんてそうそうないわよね。
手作りチョコの作り方気になるし、参加しよう。

みゆき『私も』

なぎさ『みゆきちゃん、ひなちゃんレッスン大丈夫?』

ひな『ええって。たまには女の子らしいこと、やりたいし』

みゆき『私も。手作りチョコレートの作り方、気になるし』

なぎさ『よかった。じゃあ、お店に伝えるね。明日14時にお店に集合だよ』

明日の14時、楽しみ。


次の日。

みゆきは14時5分前にお店に到着。

みゆき「こんにちは~」

中にいたなぎさとりんが振り返ります。

ドラキュラ「やあ、みゆきちゃんいらっしゃい」

みゆき「ドラキュラちゃん、こんにちは。よろしくお願いします」

ドラキュラ「こちらこそ。こっちで待っててね」

みゆきもなぎさとりんの座ってるソファーに座ります。

なぎさ「みゆきちゃん、レッスン大丈夫?」

みゆき「大丈夫。昨日のレッスンで3月までレッスンお休みしますって言われて時間出来たから」

りん「え?3月までお休みになったの?なんで?」

みゆき「私の先生、忙しい人なの。だから急にお休みになることもよくあるのよ。今回みたいに長いお休みは初めてなんだけど」

なぎさ「そうなんだ。でもみゆきちゃん発表会あるよね?」

みゆき「それは5月だから大丈夫。それにレッスンお休みになったお陰でドラキュラちゃんのチョコレート教室に来ることが出来たからレッスンお休みになってラッキーって思っちゃった」

なぎさ「いつもはレッスン中心だもんね」

みゆき「うん」

そこへひなが入ってきました。

ひな「ドラキュラちゃん、こんちは~!」

ドラキュラ「やあ、ひなちゃんいらっしゃい」

ひな「みんな、早いな。何の話してたん?」

りん「みゆきちゃんのバレエ教室3月までお休みになったって話」

ひな「そうなんや。うちも19時に変更になってん、先生の都合で」

みゆき「ひなちゃんとこの先生も有名だもんね」

ひな「うん。けどおかんが、勉強する時間がなくなるから教室変えよかって言ってて。ウチ、今の先生やから楽しく行ってるのにさあ」

みゆき「そこは、ちゃんとお母さんに伝えなきゃ」

ひな「せやな。言うてみるわ」

りん「宿題とかだったらみんなで集まって勉強会しようよ。その方が宿題早く終わるし遊べるし」

ひな「あ~、それええかも」

お店のドアベルが鳴り、ゆずが入って来ました。

ゆず「遅くなってすみません」

ドラキュラ「まだ14時になってないから大丈夫だよ。ゆずちゃんも座って、ココア淹れてくるね」


ドラキュラさんが淹れてくれたココアを飲みながら、チョコレート教室が始まりました。
ドラキュラさんの説明はとても丁寧で分かりやすく、みんなメモ取りながら真剣に聞いています。

ドラキュラ「今日は初日だからこれで終わり。みんな用にケーキ作ってるから持ってくるね~」

ドラキュラさんの言葉に歓声が上がります。

ひな「さっすが、ドラキュラちゃんやで!!」

厨房からドラキュラさんがワゴンを押して来ました。
下の段にはケーキ、上の段にはティーポットと5人分のカップとソーサーが載ってます。
みんなが手分けしてケーキを配ってる間、ドラキュラさんが紅茶を淹れてお茶会の準備が整いました。

ケーキを食べながらみんなのお喋りが弾みます。

みゆき「ケーキ美味し~」

みゆきがケーキを食べてるとドラキュラさんが来ました。

ドラキュラ「みゆきちゃん、1回目のチョコレート教室お疲れ様」

みゆき「ドラキュラちゃんもお疲れ様でした。ドラキュラちゃんの講義、分かりやすかったです」

ドラキュラ「それならよかった。みゆきちゃんはレッスンで忙しいのにどうしてチョコレート教室に参加してくれたんだい?」

みゆき「ドラキュラちゃんが教えてくれる手作りチョコレートって聞いて気になったからです。
3月まで先生の都合でお休みになってしまったんでチョコレート教室に参加出来ました」

ドラキュラ「そうなんだ。3月までは長いね」

みゆき「忙しい先生だから仕方ないです。でもお陰でチョコレート教室に参加出来ました。私、手作りチョコ作ったことないんですけど…ドラキュラちゃん、よろしくお願いします」

ドラキュラ「こちらこそ。みゆきちゃんはチョコレートを渡したい相手、いるのかな?」

みゆき「はい。彼はコーヒーが好きで甘さ控え目のスイーツなら食べると言ってたので、そんな感じのチョコレート作ってみたいんです」

ドラキュラ「なるほど…じゃあ、候補のチョコいくつかピックアップするから、その中から選んでみる?」

みゆき「はい。お願いします」

ドラキュラさんは厨房に歩いていきました。
ケーキを食べ終え紅茶を飲んでると、ドラキュラさんが戻ってきました。

ドラキュラ「お待たせ。この中から作りたいチョコレート選ぼうか」

ドラキュラさんは5枚の写真入りのファイルをみゆきに渡します。
チョコレートにケーキ、クッキーと色々あり少し迷った後、みゆきは1枚の写真をドラキュラさんに手渡しました。

ドラキュラ「コーヒー風味のトリュフか…これだったら一緒に生チョコも作れるよ。2種類作ってみる?」

みゆき「はい。よろしくお願いします」


その日の夜。
あるとからメッセージが来ました。

あると「先生の演奏会、2月15日の土曜日19時からって連絡来た。みゆきちゃん、予定大丈夫?」

みゆき「大丈夫。楽しみにしてるね」

送信するとベッドにもぐり込みました。
チョコレート作りも演奏会も楽しみ。


みゆきが作るチョコレートはとても簡単で、あっという間に作れるようになったみゆきは、みんなのお手伝いやドラキュラさんのサポートをしていました。
そして、いよいよ明日はバレンタイン。

ドラキュラ「みんな、お疲れ様。今日でチョコレート教室はおしまいだよ。わしも楽しかったし色々勉強にもなった。ありがとう。最後のお茶会楽しんでね」

みんなの前にはドラキュラさんお手製のチョコレート。いつものように紅茶を飲みながらのお喋りが始まりました。
あると君に渡すチョコレートもちゃんと作れたしドラキュラちゃんのサポートするのも楽しかったな。

ドラキュラ「みゆきちゃん、お疲れ様。色々手伝ってくれてありがとうね」

みゆき「こちらこそありがとうございました。チョコレート作りもドラキュラちゃんお手伝いもすごく楽しかったです」

ドラキュラ「みゆきちゃんのお陰で本当に助かったよ、ありがとう。チョコレート、きっと喜んでもらえると思うよ。…あ、もう17時過ぎか。大分暗くなってるからそろそろおしまいにしよう。みんなが楽しいバレンタインを過ごせるように祈ってるよ」

夕焼けが綺麗な空でしたが、気づくことなくみんなバタバタと帰ってしまいました。
ドラキュラさんは暫く空を見上げてましたが、ホール係のお兄さんに呼ばれ、お店に戻りました。


バレンタイン当日の放課後。
あるととクラスが違うみゆきは、昨夜、あるとに明日の放課後に正門で待ち合わせることをLINEで連絡していました。
みゆきが正門に行くと、あるとが待っています。

みゆき「あると君、遅くなってごめんね」

あると「僕もさっき来たばかりだよ。じゃ、行こうか」

夕日の見える丘に向かって歩きます。

みゆき「あると君、今日お誕生日だよね?おめでとう」

あると「あれ?みゆきちゃん、僕の誕生日知ってたっけ?」

みゆき「なぎさちゃんが教えてくれたの」

あると「そうなんだ。なぎさちゃんって情報通だね」

みゆき「確かにそうかも。みんなのこと色々知ってるし」

喋りながら歩いてると、丘までの距離はそんなに感じられず、あっという間に着きました。
遊んでた場所まで来ると、真っ赤な夕日の光が辺り一面を照らしています。

あると「久しぶりに来たけど、ここは変わらないね」

みゆき「うん…あのね、あると君」

あるとが振り返ります。

みゆき「今日はあると君のお誕生日だけど、バレンタインでもあるでしょ。それで…あると君に食べてもらいたくて、チョコレート、作って来たの」

あると「みゆきちゃんがチョコレートくれるのって初めてだよね?」

みゆき「私、チョコレート作ったことなくて…今回はドラキュラちゃんに教えてもらったの。あると君、コーヒーが好きって言ってたでしょ?だからコーヒー風味のあまり甘くないチョコレートを、あると君のこと想いながら、作ったの。受け取ってくれる?」

みゆきからペーパーバックを受け取り中を見ると、箱が2つ入ってます。

あると「あれ?2つ入ってるよ」

みゆき「こっちのチョコレートも食べてもらいたくて…」

1つ目の箱を開けてみると、トリュフが入ってます。

あると「いただきます」

1つ摘まんで口に入れると、フワッとお酒とコーヒーの香りが広がりました。
ビターテイストのそのチョコレートに、自然と笑みが浮かびます。

あると「みゆきちゃん、ありがとう。すごく美味しい」

あるとの嬉しそうな顔を見て、みゆきも微笑みます。

みゆき「よかった。この前カフェに行った時、コーヒーが好きで食べるなら甘さ控え目のスイーツがいいって言ってたから…」

あの時話してたの、ちゃんと覚えててくれたんだ…嬉しいな。
こっちのチョコは明日用においておこう。

あると「本当にありがとう、みゆきちゃん。もう暗いから送るよ、帰ろう。明日は18時に駅で待ち合わせようか」

みゆき「うん、ありがとう。18時に待ってるね」


次の日の18時。
待ち合わせ場所でみゆきは文庫本を読んでいました。

あると「みゆきちゃん、お待たせ」

みゆきが顔を上げると、ブルーブラックのスーツに黒のコート姿のあるとが立っています。

みゆき「あると君、かっこいい…」

あると「みゆきちゃんも可愛いよ。ピンクのワンピースも白いコートもよく似合ってる」

あるとに褒められてみゆきの頬もピンク色になります。

みゆき「ありがとう///」

あると「さ、行こうか」

慣れないヒールの靴を履いていたみゆきは、つまづいてこけそうになりました。 

あると「…っと、危ない」
 
あるとに抱きとめられて、みゆきの顔は真っ赤です。

あると「みゆきちゃん、大丈夫?」

みゆき「うん、ありがとう」

あると「今日の靴、ヒール高めだね。履き慣れないからつまづいたのか」

あるとはそのままみゆきの手を握って歩き出します。

みゆき「あ、あると君、大丈夫だよ」

あると「みゆきちゃんは普段そんな靴履かないでしょ。またつまづいたら大変だから」

そのままコンサートホールに着いても、あるとは握った手を離すことはありませんでした。

みゆき「あると君、チケット買わないと」

あると「先生に払ってるから」

あるとは関係者以外立ち入り禁止の通路に入ります。

みゆき「あると君、ここは入ったらダメなんじゃないの!?」

あると「先に挨拶に来るようにって言われてるんだよ」

ある扉の前に来ると、やっと止まりノックします。

あると「先生、あるとです」

扉が開き、男性が顔を出しました。

男性「来てくれてありがとう。入って」

中に入ると、ソファーを勧められ2人で座ります。

男性「その子がみゆきちゃん?」

あると「はい。みゆきちゃん、こちら僕のピアノの先生」

ドラキュラさんより若そうな男性です。
この人があると君の先生なのね。

みゆき「初めまして。みゆきです」

先生「初めまして。あると君からよく話は聞いてるよ。今度の発表会でクルミ割り人形するんだってね。今日のプログラムにクルミ割り人形も入ってるから聴いてね」

みゆき「はい、ありがとうございます」

あると「それじゃ、僕達は客席に行きます。演奏頑張ってください」

先生「ありがとう」

2人が出ていった後ー

先生「みゆきちゃん、可愛いな。あるとが好きになるのもよく分かる」

客席に来ると、あるとはやっとみゆきの手を離しました。

みゆき「いきなり行くからびっくりしたわ」

あると「演奏会の後はバタバタするから先に来いって言われてたんだよ」

みゆき「先生と会って緊張した~」

あると「じゃあこれ、食べて」

あるとが差し出したのは、みゆきが昨日渡した生チョコでした。

あると「コーヒーのチョコは全部食べたんだけど、このチョコはみゆきちゃんと食べたかったから持ってきたんだよ。はい、どうぞ」

食べると、緊張が解けてきました。

みゆき「美味しい」

あると「美味しいものはみゆきちゃんと食べたいから、このチョコは食べずに持ってきたんだよ」

みゆき「え?」

あると「僕も食べたいからフォークちょうだい」

みゆきの手からフォークを取り上げチョコを突き刺すと口に運びます。
あ…私が使ったフォークで食べちゃった。
これって…間接…?
みゆきの顔が赤くなります。

あると「こっちのチョコもビターで美味しいな。…みゆきちゃん?顔赤いけど大丈夫?」

みゆき「だ、大丈夫」

ホールに開始のベルが鳴ります。

あると「始まるね。残りは後で食べよう」


先生の演奏は素晴らしく、みゆきはうっとり聴き入っています。
2時間の演奏会は大きな拍手と共に幕を閉じたのでした。

みゆき「さすが、あると君の先生ね。素敵な演奏会だったわ」

あると「うん、みゆきちゃんと来れてよかった。あ、もうこんな時間か。でももう一ヶ所行きたいところあるんだよね…みゆきちゃん、時間大丈夫?」

みゆき「あると君とのお出かけって知ってるから遅くなっても大丈夫だよ」

時間は21時を過ぎていましたが、次の日が日曜日ということもあり、もう少しあるとと居たかったみゆきはママにLINEします。

みゆき『ママ、演奏会終わったんだけど帰るのちょっと遅くなりそう』

みゆきママ『あると君が送ってくれるんでしょう?いいわよ、ゆっくりしてらっしゃい』

連絡を済ませたみゆきは、あるとと歩き出しました。

みゆき「あると君、どこ行くの?」

あると「演奏会が終わったらいつも行く場所なんだけど…いつか、みゆきちゃんと行けたらいいなって思ってた所なんだ」

みゆきの手を取ると、繁華街を暫く歩きます。
たくと君、どこに行くのかな?
繁華街を抜けてもまだ歩いていくあるとに、みゆきはワクワクしていました。

あるタワーマンションに着いた2人。
ん?ここかな?

みゆき「あると君、ここは?」

あると「おじいちゃん家。行くのはおじいちゃん家じゃないけど」

エレベーターで最上階まで上がります。

みゆき「わぁ…」

エレベーターを降りると、最上階は展望台になってました。
全面窓ガラスで夜景がとても綺麗です。よく見るとベンチもいくつかあります。
絨毯が敷き詰められたそのフロアは静かで落ち着いて話も出来そうです。

みゆき「すごく素敵…」

あると「ここはマンションの住人だけの共用スペースだからあまり人がいないんだよ。前もっておじいちゃんに話しておいたから、ここにいても大丈夫。さっきまでいた所は賑やかすぎてゆっくり話も出来ないと思ってね」

夜景を見ながら歩きます。

あると「みゆきちゃん、お腹空いてない?」

みゆき「さっきチョコもらったから。あ、でも飲み物は欲しいかも」

あると「そこのベンチに座ってて。買ってくるよ」

このフロアに自販機はないらしく、あるとはエレベーターで降りていきました。
みゆきは暫く夜景を見ていましたが、ベンチに座ると文庫本を開きます。展望台の照明は暖色系で本も読みやすそうです。

あると「みゆきちゃん、遅くなってごめん」

あるとが戻ってきました。手には缶コーヒーとロイヤルミルクティーのペットボトル。

みゆき「あると君、ありがとう」

あるとも隣に座り、チョコレートを出します。

みゆき「演奏会に来たの久しぶりだったんだけど、素敵な演奏会ですごく楽しかったわ。イメージトレーニングにもなったし…あると君、誘ってくれてありがとう」

あると「みゆきちゃんが次の発表会でクルミ割り人形するのは、知ってたからね。タイミング的にもちょうどよかった。でも、前の日にみゆきちゃんからプレゼントもらえるとは思ってなかったからびっくりしたよ。…親には誕生日とバレンタインのプレゼントをよく一緒にされてだけど」

みゆき「イベントとお誕生日が重なるとまとめてプレゼントってあるあるなのかしら?」

あると「かもしれないね」

あるとはクスッと笑うと、ミニフォークでチョコを突き刺し食べます。

あると「僕とたくとは同じ誕生日だから、バレンタインと誕生日プレゼントは小さい時から1人1つずつだったんだ」

みゆき「そうだったのね」

あると「親からのプレゼントはもちろん嬉しい。けど…みゆきちゃんからもらったチョコレートには勝てない」

みゆき「え?」

あると「みゆきちゃん、好きだよ。昨日チョコレートもらえた時はすごく嬉しかった」

みゆき「あると君…私もあると君が好き。
ドラキュラちゃんのチョコ教室の話聞いた時、作ったことないチョコレート作ってみようと思ったのはね、あると君に食べてもらいたかったから…後、一流パティシエのドラキュラちゃんなら初心者の私にも作れる美味しいチョコレートを教えてくれるんじゃないかって…」

あると「初めて作ったとは思えないくらい美味しかったよ。みゆきちゃんが僕のために作ってくれたチョコレートだから、余計に美味しく感じたのかも」

みゆきちゃん「ドラキュラちゃん、言ってた。渡したい人のことを想いながら作ったらきっと美味しいチョコレートになるよって…」

あると「本当にそうだと思う」

あるとはチョコレートを仕舞うと、みゆきの手を握ります。

あると「お互いレッスンで忙しいけど、これからもみゆきちゃんと一緒にいたい。僕のピアノのことをもっと知って欲しいし、みゆきちゃんのバレエへの情熱も理解したいんだ。…みゆきちゃん、僕と付き合ってくれる?」

みゆき「私も同じこと考えてた。あると君、これからもよろしくお願いします」

あるとは微笑み、みゆきの手の甲に唇を寄せました。

あると「こちらこそ、これからもよろしく」


数日後ー
ドラキュラさんのお店にみゆきとあるとが来ました。

ドラキュラ「みゆきちゃん、あると君、いらっしゃい」

みゆき「ドラキュラちゃん、こんにちは」

ドラキュラさんは繋がれてる手に気づきます。

ドラキュラ「チョコレート、美味しく食べてもらえたみたいだね」

みゆき「はい」

ドラキュラ「それはよかった」

仲良く手を繋いだままお店を出ていく2人を見送ります。

ドラキュラ「お幸せに」


                終

あとがき

お読みくださりありがとうございました。
こちらのお話は、今井雅子先生の『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』に登場する夕日の見える丘でドラキュラさんと遊んでいた子ども達を、オリジナルキャラクターとして作らせていただいたものです。
夕日の見える丘の子ども達と漂流工房さんのドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝のキャラクターの娘ちゃんが幼稚園で一緒にクリスマスパーティーを楽しむお話も少し前に書かせていただきました。
幼稚園のクリスマス会🎄🎅🎁🔔あの丘の子ども達と一緒に🎶~ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝の外伝~はこちら。

今回はみゆき編として書かせていただきました。

タイトル画像はみんなのフォトギャラリーからお借りしました。

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