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幼稚園のクリスマス会🎄🎅🎁🔔あの丘のみんなと一緒に🎶~ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝の外伝~



まえがき


鈴蘭と申します。
こちらの外伝は、今井雅子先生の『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』のスイート篇・ビター篇及び、『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』のビタースイート篇の三次創作で、漂流工房さんの『ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝』シリーズの更に外伝になります。
今井雅子先生の『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』はこちら。

今井雅子先生の『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』はこちら。

漂流工房さんのnoteはこちら。

今井雅子先生、漂流工房さん、ありがとうございます。

今回のお話は、ふみ姉さんから「夕日の丘にいたあの子ども達と娘ちゃん達でクリスマス会したら楽しそうだよね」とコメントいただいたところから始まり、漂流工房さんがドラキュラさんが大きくなった子どもの1人と出会うお話を作ってくださり、私がその続きを書かせていただいたものです。
ハンドベルのアイデアもふみ姉さんからご提案いただきました。
ふみ姉さん、漂流工房さんありがとうございます。

メインキャラクター紹介

ドラキュラ
美男子だけどちょっとドジで結構不幸な目に遭う。
吸血鬼なんだけど基本優しい。嫁様の尻に敷かれる座布団なんだけど結構この立場も気に入ってる。
実はすっごく腕の良いパティシエやってます。
娘ちゃんのパパ。

嫁様
鬼、ものすごく力が強くて頭もいいし料理もできる完璧美女。
定番お菓子、チョコinフルーツの発案者
娘ちゃんのママ。
基本優しいんだけどドラキュラさんを尻に敷く鬼嫁やってる。弱点はものすごい方向音痴。

娘ちゃん
ドラキュラさんと嫁様の娘。幼稚園児。
ドラキュラと鬼のハーフ。嫁様の血を受け継いで力が強い。
性格はすっごく素直で優しい子。

【夕日の丘のこどもたち】紹介注:現在は中学2年


ゆず

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。引っ込み思案で物語好きな心優しい女の子。
ドラキュラさんを最初に『ドラキュラちゃん』と呼んだ子。

たくと

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。合唱団に入ってる声の大きな男の子。
「ドラキュラちゃんの名前にも『ち』が入ってる!」と言った子。あるとの弟(双子)。

ひな

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。体動かすのが大好き。ダンスにハマっていたが、オリンピックで跳馬の競技を見て体操に興味を持ち、体操教室に通ってる。
ドラキュラさんが目が覚めた時、嬉しくて踊り出した子。

かける

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。
スポーツ大好き食べることも大好き。
サッカークラブのレギュラーで毎日学校が終わってからクラブで練習している。

みゆき

夕日の丘でドラキュラさん遊んでいた子どもの1人。バレエ教室で毎日レッスンを受けている。

あると

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。
ピアノを習っていて毎日教室に通っている。
楽器の名前に詳しい。たくとの兄(双子)。

りん

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。博学。しっかりしててみんなのまとめ役。しゅうの幼なじみ。

しゅう

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。スイーツ好きな男の子。将来の夢はパティシエ。お兄さんがパティシエなので試食係として色々なお菓子を食べている。りんの幼なじみ。

なぎさ

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。
動物や植物が好きな女の子。
年中クラスの時にハンドベルですごく苦労してるので園児にハンドベルの楽しさを教えるために特訓に参加。

わたる

夕日の丘でドラキュラさんと遊んでいた子どもの1人。
乗り物や外国の名前に詳しい。得意科目は地理。なぎさと同じくハンドベルのマスターに時間がかかった。

随分まえがきが長くなり失礼しました。
それでは、本編スタート。

鈴蘭作 幼稚園のクリスマス会🎄🎅🎁🔔あの丘のこどもたちと一緒に~ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝の外伝~


ゆず「ドラキュラちゃん、お久しぶりです…」

厨房で作業していたドラキュラさん、声をかけられ振り返るとカウンターの向こうには女子中学生が立っています。 

ドラキュラ「まさか、その呼び方を知ってるのって…あの時の丘にいた子ども達の1人か?」

ゆず「はい。思い出してくれましたね、よかった。ホントお久しぶりです。ドラキュラちゃんは変わらないからひと目でわかりましたよ。懐かしくてつい声かけちゃいました」

ドラキュラ「ちっちゃい女の子だったのがすごく可愛い女の子になってるからわからなかったよ。…そう言えばドラキュラちゃんって名前言い出したのは君だったねぇ」

ゆず「覚えててくれたんですね、嬉しい…それじゃあまた。どこかで会えるといいですね」

不思議なご縁で繋がっていたドラキュラさんとゆずだったのでした。
その日の夜。娘ちゃんを寝かしつけた嫁様にお昼の出来事を話したドラキュラさん。

嫁様「その子ども達って私と出会う前に一緒に遊んでた子ども達のこと?」

ドラキュラ「うん。最初に血をいっぱい吸ってしまったから死んでしまったと思ったんだけど、あの時の子ども達、気絶してただけみたいだったんだよね。で、泣きくたびれて寝てしまったわしをみんなで起こしてくれたんだ。その時にいた子ども達の1人。わしのことをドラキュラちゃんって最初に呼んだのもその女の子」

嫁様「その時の子どもに会えるなんてすごい偶然ね。その子も大きくなってたんでしょう?」

ドラキュラ「うん、多分中学生くらいだと思う。ちっちゃい女の子だったのにすごく可愛い女の子になっててびっくりしたよ」

嫁様「私も会ってみたいな」

ドラキュラ「どうして?」

嫁様「なんとなくw  ね、ご縁が繋がってるならまた会えるかもしれないわよ」

ドラキュラ「そうだね、どこかで会えるかもしれないな」


その日の夜。
ゆずはグループLINEに書き込みをしました。

ゆず『みんな~、今日は〈あの〉ドラキュラちゃんに会ったよ!!』

ゆずの書き込みを見たメンバーが次々返信します。

かける『〈あの〉ドラキュラちゃんって、夕日の丘で寝ててみんなで起こしたあのドラキュラちゃん?』

たくと『マジか!?どこで会ったんだよ?』

ゆず『ちょっと前に出来たケーキ屋さんだよ。後ろ姿だったんだけど全然変わってなかったからすぐ判ったの』

しゅう『ってことは、ドラキュラちゃんはパティシエなのかな?』

ゆず『そうみたい。イートインスペースで食べたケーキもテイクアウトのケーキも全部ドラキュラちゃんが作ってるんだって。すっごく美味しかった』

ひな『うん、めっちゃ美味しかったで』

あると『ひなちゃんも行ったの?』

りん『私も行ったわよ』

みゆき『私も』

なぎさ『女子メンで行ったんだよね~』

かける『いいな~。オレもドラキュラちゃんの作ったケーキ食べたい』

ゆず『かけるくんはサッカーで忙しいでしょ?』

かける『そうなんだよな~、たまには練習サボろうかな』

ひな『とか言って休まへんやんな、かけるんはw』

かける『ま~なw』

りん『ねえ、みんな。ちょっといい?』

りんがみんなに呼びかけます。

りん『ちょっと前にね、幼稚園の園長先生に会ったの。で、お願いされたんだ』

みゆき『りんちゃん、園長先生とよく喋ってたよね』

りん『うん。この前ママとお買い物行った時に会ってね、その時にお願いされたんだ』

あると『お願いされたって、何を?』

りん『今度、幼稚園でクリスマス会するんだけど、年中クラスはハンドベルでクリスマスの曲を演奏するらしいのね。でも難しいから、練習についていけない子が何人かいるんですって』

わたる『あ~わかる。めっちゃ難しかったよな、あれ』

りん『年中クラスの時にやったハンドベル、私もマスターするまで大変だったわ。で、今回もクリスマス会で年中クラスはハンドベルするらしいんだけど、練習についていけない子たちが結構いて…その子達に教えてあげて欲しいって頼まれたのよ、園長先生に』

みゆき『そうなんだ。私バレエのレッスンあるんだけど1時間くらいなら大丈夫よ』

なぎさ『私も1時間なら行けるわ』

ひな『ウチもウチも!体操の教室あるけど1時間やったら行けんで』

ゆず『私も…大丈夫』

りん『ありがとう。女子は全員OK…と。男子はどう?1時間くらいなんだけどハンドベル教えるの手伝ってくれない?』

かける『わかった。少し遅れて行くって監督に伝えとく』

りん『ありがとう、かけるくん。でもいいの?かけるくん、レギュラーだよね』

かける『園長先生困ってるのに放っておけないだろ。教える期間ってどれくらい?』

りん『毎日1時間で期間は5日間』

かける『それくらいなら大丈夫だよ、監督に言っとく』

りん『かけるくん、ありがとう』

あると『ボクも大丈夫。ピアノのレッスンは夜だから』

たくと『オレも。合唱団は土日だから行けるよ』

わたる『ボクも問題ないよ』

しゅう『ボクもOKだよ』

りん『みんな、ありがとう。園長先生に伝えるね』

グループLINE終了後、りんは園長先生に連絡し来週の月曜日の15時から幼稚園でのハンドベルの練習が決まったのでした。

月曜日。
クリスマス会で演奏するハンドベルを教えるために、中学生のグループが幼稚園にやって来ました。夕日の丘でドラキュラさんと遊んでた10人の子ども達です。

りん「園長先生に挨拶してきたわ。子ども達は星組で待ってるみたいだから行きましょう」

星組の教室には10人の園児がいました。
りんがドアを開けると娘ちゃんが走ってきます。

娘ちゃん「こんにちは!!」

りん「こんにちは。先生はいるかな?」

娘ちゃん「うん、あっちにいるよ」

作業している先生の所まで案内する娘ちゃん。

娘ちゃん「せんせー、お姉さん達来たよ」

先生「娘ちゃん、ありがとう。
りんちゃん、なぎさちゃん、みゆきちゃん、ひなちゃん、ゆずちゃん、かけるくん、あるとくん、たくとくん、わたるくん、しゅうくん、みんな久しぶりね。来てくれてありがとう。ここにいる子達にハンドベル教えてあげてください。よろしくお願いします」

りん「はい。それじゃ始めましょ」

それぞれがマンツーマンでハンドベルを教えていきます。
先生よりも優しく丁寧に園児に教えていく子ども達。
出来なくて泣きそうになってた園児も、繰り返し優しく教えてくれるお兄さんお姉さんに、少しずつ笑顔を見せるようになりました。
そろそろ1時間。先生が声をかけます。

先生「は~い、今日の練習はここまでです。お兄さんお姉さんにご挨拶しましょう」

園児たち「おにーさん、おねーさんありがとうございました。明日もよろしくお願いします!!」

かける「みんな、上手だったよ。また明日も練習頑張ろうね」

園児「かけるくん、ボク、お家で練習頑張るね!」

かける「うん、頑張って」

お迎えの時間になり、園児たちは帰っていきました。

先生「みんな、お疲れ様。この後時間ある?職員室に飲み物とお菓子準備してるんだけど」

かける「先生、すみません。もうサッカークラブ行かないと…。監督に終わったら早く来いって言われてるんです」

あると「ボクも…ピアノのレッスンがあるのでこれで失礼します」

ひな「ウチも今から体操教室やねん、先生ごめん!!」

みゆき「私もバレエのレッスンの時間なので…また明日来ます。」

先生「みんな忙しいのね。それなのに子ども達にハンドベル教えてくれてありがとう。じゃあ、予定ある人はまた明日お願いします。まだ時間大丈夫な人は一緒にお茶しましょ」

かける、あると、ひな、みゆきは帰っていき、残った6人は職員室の奥の応接室に案内されました。

先生「みんなと会うの久しぶりだから本当に嬉しいわ。りんちゃん、みんなのまとめ役ありがとう。なぎさちゃんもゆずちゃんもりんちゃんもたくとくんもしゅうくんもわたるくんも大きくなったわね。今、中学生だったっけ?」

たくと「そう、中2」

先生「みんな忙しいのに本当にありがとう。子ども達には私たちもずっと教えてたんだけど難しかったみたいで…マンツーマンで教える時間も取れなくて困ってたところだったの。でも、あなた達のレッスンのおかげで基本は覚えてくれたみたい」

わたる「ハンドベル、意外と難しいんですよ。で、先生は園児全員との練習でしょ?そうなると、練習についていけなくて進むスピードが速く感じる子は、どんどん遅れてしまうんですよね」

しゅう「居残り練習もしてなかったんですよね?」

先生「そう、お迎えの時間があるから。だからハンドベルの動画を見て、お家でも練習してもらうようにお母様たちにお願いしてたんだけど、ほとんどやってもらえなくて…そんな時に園長先生がりんちゃんに会って…ハンドベルのマンツーマンレッスンをして欲しいとお願いしたの。忙しいのに快く引き受けてくれたあなた達には本当に感謝してる」

なぎさ「私もハンドベルの練習には苦労したから…子ども達の悔しい気持ち、すごくよく判るんです。ハンドベルは難しいし大変だけど、でも練習頑張ったら楽しいものだって子ども達に知ってもらいたくて幼稚園に来ました。みんな、コツを掴むの速くて今日だけで基本をマスターしたんですよ」

先生「それはなぎさちゃんの教え方が上手だからよ。いいえ、なぎさちゃんだけじゃないわ。みんなの教えてるとこ見てたけど、子ども達に真剣に向き合ってて親身になって教えてた。出来なくても何度も丁寧に教えてたし、1つ出来るといっぱい褒めて…私はこんな教え方してたかしらって自分を見直すきっかけにもなったわ」

ゆず「先生…」

先生「忙しさにかまけて、子ども達とちゃんと向き合えてなかったのかもしれないわ。今日あなた達のマンツーマンレッスンを見て改めて思ったの。みんなには大事なことを教えてもらったわ。ありがとうね。…あら、もうこんな時間なのね」

時計は17時を過ぎていました。
外はかなり暗くなっています。

先生「遅くなってごめんなさいね。送ろうか?」

たくと「しゅうとわたるとオレで送るから大丈夫ですよ」

先生「たくとくん、しっかりしてきたわね。ちょっとびっくりしたわ」

たくと「そうですか?」

先生「みんな、大人っぽくなってるもの。いつまでも園児だと思ってたら失礼よねw」

たくと「そりゃもう中学生ですしw」

先生「ごめんね、先生の中ではみんなはずっと幼稚園児のままだからw」

幼稚園の門まで見送ってくれた先生に手を振り6人は歩いていきます。

先生「明日はあのお店のケーキ買ってこようかしら?予定を空けて来てくれるんだからそれくらいしなきゃね」

わたる「ハンドベル、ちゃんと教えられるかなって心配だったんだけど、みんな今日1日で基本をマスター出来たからすごいなって思ったよ」

なぎさ「そうよね、私は全然出来なかったから…あの時マンツーマンで教えてくれる人がいたらよかったのにって思ったわ」

わたる「それはボクも思ったよ」

なぎさ「ね、わたるくんの家、反対方向よね?なのにどうして送ってくれるの?」

わたる「そりゃ、なぎさちゃんが心配だから」

なぎさ「え?」

わたる「物騒なニュースも結構見るし」

なぎさ「そうなの?私、ニュース見ないから」

わたる「そうなんだ」

なぎさ「植物や動物のニュースなら見るけど」

わたる「ま、幼稚園から帰る時はボクがなぎさちゃん送るよ」

なぎさ「ありがとう、わたるくん」


りん「送らなくても大丈夫なのに」

しゅう「送るというより隣だから。だったら別々に帰るより一緒に帰った方がいいでしょ」

りん「まあ、そうね」

しゅう「ね?」

そのまま暫く黙って歩く2人。

しゅう「先生、久しぶりに会ったけど全然変わってなかったな」

りん「そうね、相変わらず綺麗だったわね」

しゅう「あの幼稚園って、毎年クリスマス会の演目、年中クラスはハンドベルだったんだね」

りん「そう。年少クラスはクリスマスソング、年中クラスはハンドベル、年長クラスはクリスマス劇なのよ」

しゅう「そうなんだ。りん、よく知ってるね」

りん「園長先生とよく喋ってたから。色々教えてくれたのよ」

しゅう「へ~」

りん「とにかく、ハンドベルのレッスンの手伝いありがとう。明日もよろしくね」

しゅう「うん。あ、もう着いたね。じゃまた明日」

家に入っていくしゅうを見送るりん。

りん「自分のこともあるのにこっちを優先してくれてありがとう」

パティシエになるために頑張ってるしゅうに、園長先生からのお願いの話をすることをりんは少し迷っていたのですが、結局グループLINEでみんなに協力を呼びかけました。
しゅうはその時何も言わず、園児にハンドベルを教えてくれたのでした。


ゆず「たくとくん、送ってくれてありがとう」

たくと「気にしなくていいって。帰る方向同じなんだから。それより」

ゆずの顔を覗き込むたくと。

たくと「ドラキュラちゃん、元気だった?」

ゆず「うん。元気だったよ。たくとくん、それ聞くために送ってくれたの?」

たくと「まあな。ドラキュラちゃんに会ったのゆずちゃんだけだろ?だから帰り道で色々聞いてみたくてさ。…ま、それだけじゃないけどね」

ゆず「?」

たくと「ゆずちゃん鈍すぎw」

ゆず「どういうこと?」

たくと「ま、今は判んなくてもいいよwそれより、ドラキュラちゃんのこと教えてよ」

ゆず「? うん、この前行ったケーキ屋さんはドラキュラちゃんが全部ケーキ作ってるんだって。それからね…」

楽しそうに話すゆずを見つめるたくと。
…今はまだ言わない方が良さそうだ。

ゆず「…たくとくん、聞いてる?」

たくと「聞いてるよ。ドラキュラちゃん、すごいパティシエさんだったんだね。そのお店行ってみたいな」

ゆず「じゃあ、みんなで行こ?」

たくと「オレは…ゆずちゃんと行きたいな、ダメ?」

ゆず「ダ、ダメじゃないよ…」

たくと「じゃ、今度2人で行こうな」

真っ赤な顔のゆずの右手を握り歩きだすたくと。
一歩、前進。慌てずゆっくり進もう。


ドラキュラさん家の夕食タイム。

娘ちゃん「でね、ずっと出来なかったハンドベルがちょっとだけ出来るようになったの」

嫁様「よかったわね」

娘ちゃん「うん、ゆずお姉ちゃんのお陰なの。ゆずお姉ちゃんもあの幼稚園のクリスマス会でハンドベルやってたんだって!!」

嫁様「娘ちゃんの先輩だったのね」

娘ちゃん「うん、お家での練習のやり方も教えてもらったからご飯食べたら練習頑張る!」

夕食タイムの後、リビングで一生懸命練習する娘ちゃん。時間はいつの間にか20時近くになってます。

嫁様「娘ちゃん、そろそろ寝ないと。明日もゆずお姉ちゃんと特訓するんでしょ?」

娘ちゃん「わ、もうこんな時間!?ママ、おやすみなさ~い」

嫁様「は~い、おやすみ」

娘ちゃんが寝ついた頃にドラキュラさんが帰ってきました。

ドラキュラ「ただいま」

嫁様「おかえりなさい」

ドラキュラ「娘ちゃんは寝てしまったか。最近娘ちゃんと話せなくて寂しい」

嫁様「仕方ないわよ、今はクリスマス会に向けてハンドベル特訓中だから。本番は今週末の土曜日」

ドラキュラ「そうなんだ、それは行かないと!!休み取っておくよ」

嫁様「今日から娘ちゃんの先輩たちがハンドベルを教えてくれてるそうよ。金曜日まで特訓なんですって」

ドラキュラ「へえ、そうなんだ」

嫁様「明日もゆずお姉ちゃんと特訓だって張り切ってるわ」

ドラキュラ「ますます楽しみになってきたよ」


火曜日。
中学生のグループが星組に入ってくると、真っ先に娘ちゃんが走ってきます。

娘ちゃん「ゆずお姉ちゃん、こんにちは~!!」

ゆず「娘ちゃん、こんにちは。お家で練習してきた?」

娘ちゃん「うん!早く特訓しよっ」

ゆず「うん。じゃ、行ってくるね」

みんなに手を振り、ゆずは娘ちゃんと行ってしまいました。

りん「じゃ、あたし達も始めましょ」

昨日と同じようにマンツーマンで教えます。
園児たちは、みんなしっかり練習してきたのが判ります。

あると「昨日より上手になってるよ」

園児「ありがとう、あるとお兄ちゃんのお陰だよ。お家でもいっぱい練習したし」

ひな「すっごく上手やで!!」

園児「ありがとう、ひなお姉ちゃん」

子ども達はそれぞれ園児を褒め、特訓は進みます。
1時間はあっという間で、先生の「そろそろおしまいにしましょう」の言葉に園児は抗議しましたが、「お兄さんお姉さんも忙しいから続きは明日にしましょうね」の言葉に渋々片付け、帰っていきました。

先生「みんな、お疲れ様~。今日はドラキュラさんのお店のケーキ買ってきたんだけど、食べていかない?」

ひな「え!?ドラキュラちゃんのケーキ!?食べたいけど、今日も教室やねん。持って帰ってもええかな?」

みゆき「私もバレエ教室毎日通ってるんです。なので持って帰りたいです」

かける「オレもテイクアウトでお願いします」

あると「ボクも…せっかく準備してもらってるのにすみません」

先生「全然大丈夫よ、あるとくん。みんな毎日レッスンしてるのね、すご~い。じゃ包んでくるね」

先生にケーキを手渡されたお稽古組は、急いで幼稚園を出ていってしまいました。

たくと「なんか忙しなくてすみません」

先生「たくとくんが謝ることじゃないわよ
。それにしても毎日レッスンなんて本当にすごいわね」

残った6人は応接室で先生と話しながらドラキュラさんのケーキを堪能したのでした。
園児たちは帰ってからも練習を欠かさず、水曜日、木曜日と順調に特訓は進んでいきました。
金曜日。
特訓最終日ということもあり、この日はお稽古組もレッスンを休み、特訓後のティータイムはみんなでケーキを食べていました。


先生「みんな、毎日ありがとう。お陰で他の子ども達と合わせてもミスしなくなったわ」

りん「それはよかったです」

ひな「みんな、めっちゃ頑張ってたもんな」

かける「こうやって幼稚園に来るのも、もう終わりかと思ったらなんか淋しいな」

先生「クリスマス会は、みんな来てくれる?」

みゆき「クリスマス会は明日でしたよね?」

先生「ええ」

みゆき「バレエ教室にはお休みの連絡入れてるので行きます」

かける「オレも監督に話してるので行きますよ。みんなの勇姿も見たいし」

ひな「ウチもおかんから体操教室にお休みの連絡してもらったから行くで~」

あると「ボクも大丈夫です。明日は先生の都合で休みなので」

先生「そうなのね、よかった!!他のみんなも大丈夫?」

りん「大丈夫です。なんなら準備も手伝いますよ」

先生「準備は先生みんなでやるから大丈夫よ。それより…ちょ~っとみんなにお願いがあるんだけど…いいかな?」

しゅう「なんですか?」

先生「実はピアノ演奏を披露する予定の先生が風邪引いてね、明日はどうしても無理って連絡来たの。で、先生の代わりにみんなでハンドベル演奏してもらえないかしら」

たくと「いきなり明日本番かよ!!」

先生「ごめんね、連絡来たのさっきだったのよ~」

わたる「他に出来る人はいないんですか?」

先生「他の先生は私も含めてみんな裏方なのよ」

りん「じゃあ、先生たちは難しそうですね…」

なぎさ「ねえ、ここまでやってきたんだしみんなでハンドベルしよ?」

かける「だな、オレたちしかいなさそうだしw」

子ども達はすぐ先生と打ち合わせを始め、明日のクリスマス会のラストに特訓を頑張った10人の園児とコラボでハンドベルを演奏することが急遽決まったのでした。

先生「みんな、本当に本当にありがとう(泣)」

ゆず「今の時期、風邪とかインフルエンザで体調崩す人多いから仕方ないですよ。明日は何時に来たらいいですか?」

その後も打ち合わせは続き、気がつけば19時になろうとしていました。

先生「うわっ、もうこんな時間!?みんな、遅くまで引き留めてごめん!!明日のクリスマス会、よろしくお願いします。気をつけて帰ってね」

幼稚園を出た子ども達。
明日のクリスマス会の準備の手伝いもするため7時に幼稚園に集合することにしました。

たくと「まさかまたハンドベルすることになるとは思わなかったぜ」

しゅう・わたる「ボクもw」

あると「とりあえず曲は毎日やってたんだし大丈夫なんじゃない?」

かける「まあな」

りん「急でびっくりしたけど、あの子達とコラボ演奏出来るのは嬉しい」

ゆず「ね、楽しみだよね」

なぎさ「困ってる先生見てたらつい、言っちゃった。みんな、ごめんね」

ひな「気にせんでえーって!明日はみんなで楽しもうや!!」

みゆき「うん、楽しみましょ。あ、私こっちだから。バイバ~イ」


土曜日。
いよいよクリスマス会当日です。
嫁様が朝ごはんの準備をしていると、いつもより早く目が覚めた娘ちゃんがリビングに入ってきました。

娘ちゃん「パパ、ママ、おはよ~」

嫁様「娘ちゃん、おはよう。よく眠れた?」

娘ちゃん「うん!いっぱい寝たよ!」

ドラキュラさん「おはよう、娘ちゃん。いよいよクリスマス会だね。娘ちゃんのハンドベル楽しみにしてるよ、頑張ってね」

娘ちゃん「パパ、ありがとう!頑張る!!」

嫁様「今日はサンドイッチよ、召し上がれ」

娘ちゃん「わ~い、いただきま~す!!」

ご飯を食べ終わった娘ちゃん、迎えに来た先生と幼稚園に行ってしまいました。

嫁様「さあ、私達も急ぎましょ」

ドラキュラ「娘ちゃんのハンドベル、楽しみだなあ」


娘ちゃんの乗ってるバスが幼稚園に着いた時、10人の子ども達は数人の先生と一緒にクリスマス会の準備を進めていました。

娘ちゃん「あ!ゆずお姉ちゃんだ!!ゆずお姉ちゃ~ん、おはよ~」

バスを降りた娘ちゃん、園庭で作業していたゆずを目ざとく見つけると駆け寄ります。

ゆず「娘ちゃん、おはよう」

娘ちゃん「ゆずお姉ちゃん、クリスマス会に来てくれたんだね!!ありがとう!!」

ゆず「うん。今は先生のお手伝いだけど。いよいよクリスマス会だね。頑張って」

娘ちゃん「うん!!」

そこに2、3人の先生が来ます。

先生「ゆずちゃん、お疲れ様。準備終わったかな?」

ゆず「はい。まだやることありますか?」

先生「ゆずちゃん達のお陰で予定より早く終わったわ。ありがとう。もうみんな集まってるみたいだからゆずちゃんも行って」

ゆず「はい。じゃ、娘ちゃんまた後でね」

娘ちゃんに手を振り、ゆずは行ってしまいました。

先生「さ、娘ちゃんも教室に行きましょうね

クリスマス会が始まりました。
園長先生のお話の後は、年少クラスのクリスマスソングです。かわいらしい歌声が教室いっぱいに響きます。
パパママの顔はみ~んなニコニコです。

嫁様「そう言えば、娘ちゃんもクリスマスソング歌ってたわね~。可愛い」

ドラキュラさん「そうだったね」

嫁様「あ、終わったわ。年中クラスのハンドベル始まるわよ」

両方の舞台袖からお揃いのスモック姿とベレー帽を被った年中クラスの園児が出てきます。

嫁様「可愛い~。あ、娘ちゃん出てきたわ」

ドラキュラさん「娘ちゃ~ん!!」

ドラキュラさんの声に気づいた娘ちゃんが小さく手を振ります。

先生「年中クラスはハンドベルを演奏します。1曲目は赤鼻のトナカイ、2曲目はジングルベル、3曲目はきよしこの夜、4曲目はもろびとこぞりて、5曲目はWe Wish You a Merry Christmasです。それでは、お聴きください」

ハンドベルを一生懸命演奏する園児たち。
特訓を頑張った娘ちゃん達10人の園児も楽しそうに演奏しています。誰1人ミスすることなく素敵な演奏会は終了しました。

ドラキュラさん「娘ちゃん、楽しそうに演奏してたなあ」

嫁様「特訓の成果、ちゃんと出てたみたいね。本当に素敵な演奏だったわ。(プログラムを確認して)ん?先生のピアノ演奏なくなってるわね。体調不良のため出演出来なくなったみたい。代わりに…あら、特訓頑張った娘ちゃん達とハンドベルレッスンをしてくれた娘ちゃんの先輩達とのハンドベルスペシャルコラボライブがあるんですって。年長クラスのクリスマス劇の後、ラストの演目だそうよ」

ドラキュラさん「それ、娘ちゃんから聞いてたっけ?」

嫁様「昨日、急遽決まったみたい。曲は…きよしこの夜、もろびとこぞりて、We  Wish  You  a  Merry  Christmas の3曲」

ドラキュラさん「そうなんだ。娘ちゃんに教えてくれた先輩のことも気になっていたんだ。楽しみだな」


舞台袖に戻ってきた娘ちゃんを待っていたのはゆずでした。

ゆず「娘ちゃん、お疲れ様~。上手に演奏出来てたよ」

娘ちゃん「ゆずお姉ちゃん、ありがと~!」

ゆず「この後のプログラムは年長クラスのクリスマス劇だったわよね?」

娘ちゃん「うん!そ~だよ」

ゆず「その後のことは先生から聞いてるかな?」

娘ちゃん「ううん、先生のピアノ演奏だよね?」

ゆず「それがね、先生風邪引いてピアノ演奏なくなってしまったの」

娘ちゃん「え?そうなの?」

ゆず「うん。だからね、私たちと一緒にハンドベル演奏してみない?」

娘ちゃん「ゆずお姉ちゃんたちと?」

ゆず「特訓頑張ったみんなと私たちとで。…どうかな?」

娘ちゃん「うん!!やりたい!!!」

ゆず「よかった。曲はね…」

こうして、マンツーマンで教えた園児にそれぞれスペシャルコラボライブの話を伝え、クリスマス会ラストの演目が決定したのでした。

年長クラスのクリスマス劇が終わりました。
司会の先生がピアノ演奏がなくなりスペシャルコラボライブの開催を告げると、両方の舞台袖から特訓を頑張った10人の園児と中学生10人が出てきます。

ドラキュラさん「ん?あの女の子どこかで見たような…」

娘ちゃんの横にいる女の子を見て首を傾げるドラキュラさん。

先生「このお兄ちゃんお姉ちゃんはこの幼稚園で年中クラスだった時、ハンドベルを演奏していました。今回はクリスマス会のスペシャルゲストとしてコラボをお願いしました。では演奏曲を紹介します。1曲目はきよしこの夜、2曲目はもろびとこぞりて、3曲目はWe Wish  You  a Merry Christmas です。それでは、どうぞ~」

ハンドベルの演奏が始まります。
事前に練習してた訳でもないのに、園児と子ども達の演奏は綺麗なメロディーを紡いでいます。それは、毎日頑張った特訓のお陰でした。
パパもママも園児たちも聴きいってます。

ドラキュラさん「あ、思い出した。あの時の女の子だ」

ケーキ屋で声をかけられたことを思い出したドラキュラさん。あの夕日の丘で一緒に遊んでた子ども達と娘ちゃんが肩を並べてハンドベルを演奏する姿に感動し、涙ぐむドラキュラさん。
そんなドラキュラさんに気づいた嫁様。

嫁様「(小声で)あなた、どうしたの?」

ドラキュラ「(小声で)娘ちゃんの隣にいる女の子。あの子がわしをドラキュラちゃんって呼んだ女の子だよ」

嫁様「(小声で)そうなの?じゃ、舞台にいる10人の中学生は私と出会う前にあの丘で遊んでた子ども達なのね」

ドラキュラ「(小声で)うん…娘ちゃんと一緒にハンドベルしてるの見てたら、不思議な繋がりを改めて感じてね。なんだか感動してしまって…」

優しい目で舞台を見つめるドラキュラさん。
そんなドラキュラさんにそっと寄り添う嫁様。

嫁様「(小声で)終わってからみんなに紹介してね?」

ドラキュラさん「(小声で)もちろん」

嫁様の肩を抱き寄せ、舞台を見守るドラキュラさんでした。

演奏が終了し、クリスマス会は幕を閉じました。娘ちゃんを待ってるドラキュラさんと嫁様の前に10人の子ども達が来ます。

ゆず「ドラキュラちゃん」

ドラキュラさん「やあ、素敵な演奏だったよ。お疲れ様。娘ちゃんをマンツーマンで教えてくれたのは君だったんだね。君のお陰で家でも楽しそうに練習してたよ。本当にありがとう」

かける「うわ、本当に〈あの〉ドラキュラちゃんだ」

たくと「すげぇ、全然変わってねぇ」

後ろの方で話してたかけるとたくとにも声をかけるドラキュラさん。

ドラキュラさん「久し振りだね。みんな大きくなったなあ」

たくと「ドラキュラちゃん、お久しぶりっす」

かける「ドラキュラちゃん、本当にあの時のままなんだね」

ドラキュラさん「あの時は楽しかった」

ひな「何言うてんねん、ドラキュラちゃん!今もめっちゃ楽しいで!!」

ひなの勢いにちょっとびっくりするドラキュラさん。

ドラキュラさん「(クスッ)そうだね。みんな大きくなったけど変わらないな」

りん、みゆき、なぎさ、あると、わたる、しゅうに挨拶していると娘ちゃんが来ました。

娘ちゃん「パパー、ママー終わったよ~」

中学生のみんなが一斉に振り返ります。

娘ちゃん「おにーさん、おねーさん今日は楽しかったです!!ありがとうございました!!」

りん「この子って…ドラキュラちゃんの子どもなの?」

ドラキュラさんは軽く頷き、嫁様と娘ちゃんをみんな紹介します。

ドラキュラさん「こっちが嫁様、こっちが娘ちゃんだよ。改めてよろしくね」

嫁様「初めまして、嫁様です!よろしくね」

娘ちゃん「娘ちゃんで~す」

中学生達「よろしくお願いします」

不思議なご縁で繋がった子ども達とドラキュラさん一家でした。

               終

あとがき

お読みくださりありがとうございました。
またもや長編になってしまいました。
すみません💦

こちらのお話は今井雅子先生の絵本のようなお話『「ち」に飢えるさみしさードラキュラとあかいチョコレート』『「ち」のつく幸せードラキュラとあかいチョコレート』の三次創作であり漂流工房さんの『ドラキュラとあかいチョコレート二次創作外伝』の更に外伝となります。
今回の話に出てくる夕日の丘の子ども達は今井雅子先生のお話に登場する子ども達です(人数は私が勝手に考え10人にしました)
そちらの物語を読んでいただいてからだと、より楽しんでいただけるかと思います。


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