芹沢怜司の怪談蔵書「8.壁の中から」
「決めました。引っ越します!」
知人は話を聞いてすぐ本を引っ張り出して町の場所を調べた。怪談好きの琴線に触れたのだろう、あの異様な雰囲気の町に住んだら思う存分怪異を堪能できると興奮している。
「まずは下見ですかね。ついでに怪談の調査もしましょうか。そういえば海から招く手に出てきたホテルもあそこでしたっけ」
「住宅街や商店街からはかなり離れているけど同じ県だよ。……まさかホテル跡地にも行くのかい?」
「いやいや! まだ死にたくありませんから行きませんよ。少なくとも怜司さん