今更ながら鋼の錬金術師を全巻揃えた話。
※鋼の錬金術師のネタバレを含みます。
社会人になって2か月ほど経ちました。学生時代からの大きな変化として、お金についてあまり悩まなくなったことが挙げられます。毎月のバイト代とカードの支払い金額を照らし合わせ、実質的に今月はいくら使えるのかというようなお金に関して悩まなければならない時間が常にありました。もちろん私自身の浪費癖というどうしようもない性格もこの悩みに拍車をかけているということもあります。社会人になってそういった悩む時間、ストレスから一切解放されました。これは特段給料が高い会社に就職したという意味ではなく、単に私が実家から会社に通っているため、そこそこの貯金などを行ってもお金が余っているというです。職場の同期が社宅やアパートに入っている中、おそろくは私だけが実家から職場に通い、ぬくぬくと子供部屋おじさんをやっているのでお金に余裕があるというわけです。そういう訳で今月は高いパソコンを買ってしまって、さすがに大きな買い物はだけはやめておこうかなと思って、ブックオフとかで漫画を大人買いしています。
さて、前置きが長くなりましたが、ハガレンこと鋼の錬金術師を全巻揃えました。ハガレンといえば私が小学5年生のときに2009年版のアニメがTBS日曜5時枠で放送を開始し、1年半ほどかけて物語の完結まで制作されました。TBSの日曜アニメ枠を見て育った私にとってハガレンはトラウマ的な意味も含めて衝撃的な作品でした。ガンダム00セカンドシーズンの次の週から突然エグいキメラのエピソードでトラウマを植え付けられ、それでも必ず日曜日はハガレンをリアルタイムで見ていました。私の人生においてハガレンからの影響は多大であることは間違いないと思います。中学生くらいから親からお小遣いをもらいハガレンの原作をちびちびと集め20巻くらいまで持っていたのですが、いつからかそもそも古本屋に通わなくなり、ネットフリックスをはじめとした定額見放題サービスでは2009年版アニメが見放題になっているので、残りを揃えようと腰を上げるのが難しい状態でした。
そんな中、会社からの帰り道にブックオフがあったのでなんとなく寄ってみたところハガレンが100円で全巻売っているを発見し、気が付けば残りの巻数をもってレジに直行していました。さながらセントラルに身一つで帰還して戦車の砲弾を切り裂くキング・ブラットレイのような速度で購入し帰宅しました。そしてしっかりと手を洗い、アルコール消毒を行った後に、ハガレンを読み始めました。私がなぜここまで憑りつかれたような状態になっていたのかはよくわかりません。”私は完全な存在になりたかった。ハガレンを完全に理解したかった!ハガレンのすべてを知りたかった!”的な奴なんですかね。そういうわけで足掛け10年かかってハガレンの原作を全巻揃えました。
ストーリーは全て知っていましたが、改めて読んで感動しました。本当に素晴らしい漫画です。アルを連れて帰るためにエドが自分の真理の扉を破壊するシーンで、エドは真理から錬金術を失って平気かという質問をされます。これに回答するコマでエドの顔が読者のほうに向いています。そして「錬金術が無くてもみんながいるさ」と力強く答えています。このコマからは、鋼の錬金術師の連載は終わってしまうけど、鋼の錬金術師はみんなの心にいるぜという温かいメッセージを感じ取れました。原作でこのシーンを読んだ時は、正直アニメでこのセリフを聞いたときよりも感動した気がします。
そういう感じで原作には原作の良さがあって本当に最高の漫画だなとしみじみと味わいながら読み進め、世界一胸キュンなプロポーズシーンも読んで、もうあと少しだなと寂しい気持ちになっていました。すると単行本最終巻の最後に、外伝なる未見エピソードがついているのを発見し、国土錬成陣に気が付いたヒューズ中佐が如く焦りました。しかもアルの鎧が回収されていたとか結構重要そうなエピソードっぽくて余計焦りました。2009年版アニメには絶対に収録されていないエピソードで、もしかしたら円盤の特典とかで映像化されている可能性はありますが、少なくともテレビ放映や定額見放題サービスでは見ることはできないエピソードなので、10年ぶりにハガレンの知らない物語を読むことになりました。
外伝エピソードを読んでの感想ですが、正直に言えば泣きました。外伝としてこれ以上ないってくらい素晴らしいエピソードでした。ハガレンの物語はもう語ることは何もないといえるほどしっかりと丁寧に描き切っているので、外伝と聞いたときは少しだけ蛇足かもなという憂いはありました。しかし、このエピソードは本当にあって良かったと思えるほど素晴らしいものでした。話の内容はセントラルに残されたアルの鎧がエド達のもとに到着し、アルがその鎧でオートメイルを作ってほしいとウィンリィに頼むという流れです。頭の部分はデンが持って行ってしまい、それ以外の部分はすべて加工し直してオートメイルの部品になりました。そしてデンが持って行った頭に鳥が巣を作りその巣をエドが最後に見つけて終わります。鎧はアルにとってはかなりの年月入っていた自分の体であり、我々読者にとっても鎧はハガレンを象徴するポップアイコンの一つという認識もありました。なのでウィンリィが「こっちのアルもお帰り」と言ってくれて嬉しかったです。アルが鎧をオートメイルの部品にして誰かを助けたいという決断をしたのもアルらしくてとても良いなと思いました。そして鎧の頭に鳥の巣が育っているコマで泣きました。たとえ金属であっても、生命の営みが次の生命の営みにつながっていくという普遍的なメッセージを画一つで語っていて凄いと思いました。加えてこの最終巻である27巻の表紙はエドがアルの鎧の頭を持っている絵で、最後のページもエドとアルの鎧の頭で締めているところも上手いと思いました。
なんか熱くいろいろ書いてますが、そもそもハガレンの原作をさっさと買って読んでいればこのエピソードを10年も寝かさないで済んだわけですし、原作を読んでいる人からすれば、今更そんな話しておせーよって話なんですが、それでも読んでて感動したんで長々と書いちゃいました。改めてハガレン読み返して本当に面白かったです。私の好きな作品の傾向として、その作品で語られているセリフや世界観などが、現実世界で生きる上でも使える重要な知識や物の見方を嫌味なく説いているものが多いのですが、ハガレンはまさに、生きる上で大切なことを教えてくれる素晴らしい漫画だと思います。ハガレンは間違いなく今後も語り伝えられていく作品だと思います。……十分だ。ああもう十分だ。なんも要らねぇや。がっはっは……じゃあな、鋼の…錬金術師よ。