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ラーメン屋での出来事
「ゆきゆきて、神軍」という1987年公開の映画がある。
ドキュメンタリー映画なのだが、主人公が「ビデオカメラが回っている」という状況を意識しすぎ、行動がエスカレートしていく様が見受けられる映画だ。
「映像」は当時、間違いなく市民にとって特別な物だった筈だ。
画面の向こうの、選ばれた者だけが映る世界。
役者、プロ野球選手、タレント。
先の主人公は、カメラが回ることで、自分を彼らと重ね合わせていったのだろう。
30年後の2017年、日本国内におけるスマートフォンの普及率は72.2%、インターネットの普及率は83%となり、送り手にとっても受け手にとっても「映像」は身近な存在となっている。
動画配信プラットフォームも、今や飽和している程だ。
前置きが長くなったが、先日ラーメン屋に行ったときのことだ。
券売機の前に、一人で喋りながら、ボタンをなかなか押さない20歳程の女性がいる。
「えー、無難にとんこつで行く?」「辛味噌とんこつ?」
これから自分が食べるものを決めるのに、なぜ誰かに相談しているんだ?
電話の相手は、この店でバイトしている友達で、今日は休みだから電話で聞いているのか?
想像が膨らむ。
「あ!◯◯さんコメントありがとうございます。」
後ろから画面を覗くと、動画配信アプリである ツイキャス(TwitCasting)の画面が表示されている。
写り込んでしまうと、視聴者のキッズ達から
「なんか後ろで並んでる奴デカくない!?」
「デカすぎンゴ!!」「デカすぎニキwwwww」
といったヘイトスピーチされては困るので、直ぐにカメラの視界から消え、
壁に貼ってある求人情報をひたすら眺めていた。
ラーメンを食べ始めてからも、リスナーからの質問に答えるため、
店員に対して、インタビュアーの様な口調で質問をする。
「ここの店って新しいんですか?」
「ちょwww昼からってwww店員さんwアルコールって置いてます?」
まるで、
「ネットの向こうにいるリスナーさん達と一緒に、この店を評価してるからな!」
「下手なこと言ったら叩かれるぞ!」というように。
フロアの空気は、完全にツイキャス主の者になっていた。
見たくもない素人のバラエティ番組の音声だけを無理やり聞かされているような状況で、食った気がしなかった。
カメラが回っていれば、ある程度のことは許されると思う人!
マジで勘弁してください。
画面の中では主人公かもしれませんが、ラーメン屋では主人公ではありません。