恋文 #忍者ラブレター #毎週ショートショートnote
自宅ドアを開ける寸前
俺の声帯から聞いたこともない
高音が飛び出した。
何処から飛んできたのか
時代劇でしか見た事ない矢が
目の前の玄関ドアに勢いよく突き刺った。
殺される!
と思ったが殺される理由が
思い当たらない。
人に恨みを待たれるような事を
した記憶もなければ
借金した事もない。
意味がわからないが
さすがに玄関ドアに矢を
挿しっぱなしは、まずいだろうと
引っこ抜いて部屋に入った。
玄関にしゃがみこみ、ため息をつく。
訳がわからない。
え?今って何時代?
令和?そうだよね?
刺さっていた矢に
しっかりと紙が巻きつけられている。
ああ……矢文だ。
って、なんで矢文?
恐る恐る紙を解く。
何故か薄目で、そっーーーっと
紙を捲っていった。
………………?
恋文?ラブレター?!
それは、
転職する部下からの恋文だった。
先代の命で忍者を継がなければ
ならなくなってしまい里に帰る前に
どうしても俺へ
思いを伝えたかったらしい。
矢文の忍者ラブレターを手にしながら
せめて、くノ一からだったらと
現実逃避してみた。
そう言って俺は玄関を出た。
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