逃げて #てるてる坊主のラブレター #三日坊主のクレーター #毎週ショートショートnote #ショートショート
落石で円形に窪んだ地形にポツリポツリと雨粒が降り注いでいる。
てるてる坊主のラブレターとは裏腹に、真っ黒な雲が徐々に増えていき気がつけば空を覆い隠していた。
真っ黒な雲から涙がポタポタと地上に落ち始めている。修行に耐えられないと逃げた彼はどこにいったのか。
一日目で既に、生気を失っているような表情だった彼。ここに連れて来られ、反省の為に坊主にさせられたのが嫌だったのだろう。
ニ日目には、起きてくることさえも苦しいような、表情だった。声をかけたが、荒々しく罵倒されてしまった。せっかく仲良くなれると思ったのに。
「逃げ出したい」
そう彼に言われて、僕は戸惑った。ここに来て、こんなに早く逃げ出したいと口にしてきた人がいなかったから。
三日目、彼は僕の教えた方法でここから出ていった。無事に帰れただろうか。たった三日だったが人といられるのは楽しかった。
雨粒は大きくなり、草木を激しく揺らした。
三日坊主のクレーターに雨水が溜まり始めた。
【410文字】
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