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冷たくてごめんなさい #書庫冷凍 #毎週ショートショートnote


冷えたサスペンス小説を片手に燃える書庫が私の瞳に映る。

人々が集まってくるなか、口角を下げられない私は本を口元へ近づける。ヒンヤリとした感触と顔にかかる熱風。

燃え盛るわが家と言うなの書庫冷凍。

ごめんね。

声に出さずに唱える。

………。

「はいはい!ごめんなさいね!」
強い口調で謝る。
全く謝っている雰囲気はない。

今日届いた新刊。
本当は明日届くはずだった。

夫がいる時に宅配便が届くと不機嫌になるため、置き配も平日に変更している。

ぶつぶつと文句を呟く夫に

「あなたが休みの時は、宅配便来ないようにしてるの!今日は業者が間違えたんだからしかたないでしょ!」

自分までイラつき、つい口調が荒くなる。

冷たい眼差しと冷たい言葉
「また本増やして、本屋にでもなるのか」

せっかく新刊本が届いたというのに、嬉しさよりも怒りと悲しみに包まれる。私の楽園は夫にとって書庫冷凍庫にしかすぎない。



手には書庫冷凍された1冊。
目の前で燃える書庫1軒。

書物達ごめんなさい。


【414文字】

#書庫冷凍  
#毎週ショートショートnote

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スズムラ
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