
Photo by
kiyofico
バンドを組む残像 #毎週ショートショートnote
瞼を閉じるとバンドを組む残像が蛍光灯の灯りを通り抜け、毛細血管の間に映し出された。
楽器は苦手だった。ただ歌う事は好きだった。仲間同士カラオケで何時間も過ごした。
日々忙しく疲れすぎて生きている意味がわからなくなっていた。突然の虚無感に襲われた。そんな時に仲間から連絡があった。
集まらないか?
何気ない誘いが嬉しかった。2次会、3次会と続き、最後にバンドをやっている奴の所で飲み直した。
ボーカルやってみるか?
誘われて舞台に立たせてもらった。全身に熱い血が巡っていくのを感じ生きてる心地がした。俺の声に合わせて仲間の音が乗るのが気持ち良かった
もう一度味わいたい。
欲張りな考えが頭を過ぎり仲間に声をかけた。
モニターに映し出される、冗談を真に受けた素人が悦に浸る姿。笑い声が聞こえた。
酒のせいだろうか全身に熱い血が流れた。気がつくと仲間だった奴に楽器を振り下ろしていた。それがギターかベースか分からない。
そう呟き
俺は取調室で瞼を閉じた。
【412文字】
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