で、結局レスの話はどこへ行ったの?『あなたがしてくれなくても』
以前『あなたがしてくれなくても』の第1回を見てnoteを書きました。
初期の頃から原作を読んでいる身としては、原作とは違うキャラ設定をどう活かしてくるのか、期待と不安が交錯していたのですが、結果的に不安が的中した感じです。
最終回は、ヒロインであるみちと新名さんが結ばれなかったことに非難がまき起こっていたようですが、製作陣が「結局はイケメンとのハッピーエンドを求めていたんでしょ」と勘違いしてしまわないためにも、ここにハッキリと書き残しておきたいと思います。
私は最終回を見て「これまで見てきた11話分の時間が無駄だった」と思いましたが、それは別に元サヤエンドがどうとかではなく、作品のメインテーマであったはずの「レス」の問題が全く解決しないまま、放置されて終わったからです。
えっ、これって単なる不倫ドラマだったの!?
タイトルにもなっているほどのメインテーマだったはずの問題が、放置されたまま「気持ちの揺れ動き」みたいなことでお茶を濁したまま終わったことに、心の底から驚きました。
原作も人気が出たせいか、連載が長引いて焦点がぼやけつつあるきらいはあるものの、まだ連載中なこともあって、ここまで悲惨なことにはなっていない。
しかし、ドラマの製作陣も原作者とやり取りしつつ製作を進めていたという割には、肝心のテーマを置き去りにしたまま、特にラスト2話は「どっちとくっつくか」みたいな話になっていて、そうじゃないだろ!と。
お互いを嫌いになったわけじゃないのに、レスに悩みつつ他の男性に惹かれていくヒロインと、ただ今の生活がなんとなく続いていけばいいなと思っているお子様な旦那。
昔なら結婚してまもなく子供ができて、レスであることは問題になっても離婚までは行かず「家族」だから、という言葉で誤魔化されていた問題が、現代であるがゆえに大きく浮上してくるわけです。
かたや、バリキャリで私生活はないも同然の妻と、妻に顧みられず男としての自信をなくしつつある旦那という組み合わせ。
男女逆だと至って普通の話だけれど、女性の方が仕事に夢中で家庭を顧みないとなると、ちょっと話が違ってくるのが、このカップルのポイントです。
男性はやっぱり「下方恋愛」「下方婚」の方がしっくり来るのではないか?という疑念を鋭く突きつけてくるわけです。
トキメキと、家族としての愛と、そして性欲。
この3つがないと夫婦として成り立たないのか?
それともどれかがなくても、お互いが納得していれば成り立つのか?
そもそも他人である夫婦同士が、お互い納得するということがあり得るのか?
原作でもドラマでも、主人公のみちと新名さんは一線を超えていません。
未遂のシーンはあるけれど、トキメキのレベルで止まっています。
これに関しても、本当に「大人のドラマ」であれば、原作にはないけれど一歩踏み込んでほしかったなあと思います。
だって、ある程度触れ合えばなんとなく相性ってわかるじゃないですか。
夫と比べてどうなのか、どっちがよりグッと来たのか、そのあたりまで描写してこその大人のドラマという感じがしますけどね。
性欲パートを担当するのはみちの旦那でしたが、ここはうっかり盛り上がったものの、男はワンナイトラブのつもりで、女は相手に惹かれてしまうというよくある構図になりました。
ところがここに関しても、女性の方があっさり退場して、うやむやになってしまいました。
このドラマ、踏み込み不足とご都合主義を補うために、登場人物が突然デウス・エクス・マキナよろしく物分かりが良くなって、話がスラスラと進んでしまうという場面が何度もありました。
最後まで見た感想は、一体誰に忖度して、こんな尻切れトンボなドラマを作ってしまったのかということです。
ヒロインが誰とくっつこうと、一人で自立することになろうと、このドラマでは些末なことです。
それよりも身体の関係は夫婦に必要なのか。それとも別の何かがあれば大丈夫なのか。その場合、性欲はどうするのか。外で解消するのか。それは不義を働くことになるのか。
一人で自立して生活するとしても、トキメキと性の問題は必ずどこかで起きるでしょう。
そこが描かれないままに、元の旦那と仲良く歩いているところがラストシーンでは、ここまで見た視聴者は「はぁ?」と思いますよねえ。
さて、漫画のラストはどうなるのでしょうか。
ドラマの進行には原作者も関わっていたようですが、最新話で2組とも離婚した後、この先の展開は果たしてどうなるのか。
なんかもう不安しか感じないのですが、とりあえず最終回まで見届けられたらいいなあ、と思います。
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