リアルニンジャのニンジャクランに関する考察~ニンジャクランの分類によるアワビ・ニンジャクランとタナカ・ニンジャクランの分析~
※これはニンジャ学会誌895号に寄稿したもので、半年以上の経過したので公開します
リアルニンジャのニンジャクランに関する考察~ニンジャクランの分類によるアワビ・ニンジャクランとタナカ・ニンジャクランの分析~
Consideration on the ninja clan of "Real ninja"
~Analysis of "Abalone ninja clan" and "Tanaka ninja clan"~
雀bot *
本論文は、リアルニンジャのニンジャクランを分類解析することで、アワビ・ニンジャクランとタナカ・ニンジャクランのさらなる分析を進めることを狙うものである。
*: https://twitter.com/suzumeninja
Keyword: リアルニンジャ、ニンジャクラン、ニンジャ古代史
はじめに
ニンジャスレイヤーには多数のニンジャクラン(作中では「ニンジャ・クラン」及び「ニンジャクラン」の表記でブレがあるが、本論文では後者で統一する)が登場する。その多くはニンジャソウルがディセンションしたニンジャの登場によって、どのようなニンジャなのか説明がある。しかし、アワビ・ニンジャクランについては、回復系のジツが得意だということしか判明していない。また、テレキネシス・ジツを用いるタナカ・ニンジャクランは、なぜタナカなのか不明である。
本論文では、リアルニンジャのニンジャクランに関する系統分類を行い、そこからアワビ・ニンジャクランとタナカ・ニンジャクランの詳細を考察するものである。
1.本論文上のリアルニンジャのニンジャクランの定義
本論文では、「○○・ニンジャ・クラン」「○○ニンジャ・クラン」「○○・ニンジャクラン」「○○ニンジャクラン」(○○には1文字以上のカタカナが入る)の表記を、リアルニンジャのニンジャクランと定義する。
1.1.作中に登場したニンジャクラン
2016/10/09現在までに、本文及びニンジャ名鑑に登場しているニンジャクランは、以下の37クランである(以降、ニンジャクラン名については、全て「ニンジャクラン」は省略して記載する)。
・アクマ(アクマ変身とアクマカラテ)
・アワビ(治療系のジツ)
・イカ(多数の手足を操る)
・イタミ(「痛み」や「苦痛」をエネルギーに変える)
・イヌ(俊敏さと獲物への執念深さ)
・ウィッチ(詳細不明)
・オオカミ(狼人間に変身する)
・オーロラ(オーロラを操り、幻惑を見せたり電磁波を出す)
・カイコ(投網や糸を使う)
・カゼ(風を操るソニックカラテ)
・キノコ(茸を取る為のドトン・ジツと、茸の扱いに長ける)
・クジャク(孔雀の尾羽のようなカラテエネルギーを展開する)
・コエ(声帯模写のジツ)
・コブラ(コブラ・カラテとフドウカナシバリ・ジツとドク・ジツ)
・コリ(氷に関するジツ)
・コロス(ジツを無効化するキリングフィールド・ジツと痛覚遮断)
・サソリ(蠍の構え)
・サメ(詳細不明)
・シノビ(隠密行動が得意)
・ジョルリ(無機物の遠隔操作)
・セミ(音波攻撃)
・ダイナソー(恐竜のような肉体)
・タナカ(テレキネシス・ジツ)
・ダマシ(ゲン・ジツや情報操作)
・ツル(詳細不明)
・テッポウ(銃器を使うピストルカラテ)
・トカゲ(設定変更で消滅)
・トブ(詳細不明)
・ドラゴン(チャドーとドラゴンカラテ)
・ナイト(剣と鎧と騎乗)
・ハチ(蜂のように空を飛ぶ)
・ヒカリ(光に関するジツ)
・ビッグ(体の大きさを活かしたビッグカラテ)
・ヘビ(蛇めいた武器とドク・ジツ)
・ホロビ(病毒で汚染)
・モズ(上空からの急降下攻撃)
・ヨロイ(鎧を使うカラテ)
なお、本論文では、名前のみが登場した正体不明のクラン(ウィッチ、サメ、ツル、トブ)及び、設定変更によって消滅したクラン(トカゲはヘビになった)は、考察から除外する。
2.ニンジャクランの分類
まず、ニンジャクランを深く理解するために、共通の特徴を持ったクランごとに分類する。ここでは、それぞれのニンジャクランのカラテやジツに注目して分類する。そうした結果、アワビとタナカ以外の32ニンジャクランを10種に分類することができた。
2.1.部位特徴系
・コエ、ビッグ
肉体の特定の部位や特徴に関するジツやカラテを使用する。声帯模写を行う、巨体を使う、といった身体的特徴がそのままニンジャクランの名前となっている。
2.2.行動系
・コロス、シノビ、ダマシ
特定の行動に関するカラテやジツを使用する。ニンジャクランの名前が、自分が行う行動(自分が殺す、自分が忍ぶ、自分が騙す)となっていることが最大の特徴である。
2.3.状態系
・イタミ、ホロビ
肉体に与えられる状態に関するジツやカラテ、あるいは状態を与えるジツやカラテを使用する。行動系と異なり、ニンジャクランの名前が、自分や相手に与える単語(痛みを自分に与える、滅びを相手に与える)になっている。
2.4.自然現象利用系
・オーロラ、カゼ、コリ、ヒカリ
自然現象を使用してカラテやジツを使用する。先の生物系とことなり、模倣ではなく利用となっている。これはどういうことかというと、自然現象そのものを生み出すことができるということだ。
例えば、カゼはソニックカラテで風を発生させる。一方で、ヒカリのように、自分自身に自然現象の性質を付与するニンジャクランも存在する。
2.5.生物生存模倣系
・アクマ、イカ、イヌ、コブラ、サソリ、ダイナソー、ドラゴン、ハチ、ヘビ、モズ
人間以外の生物が生存するための動きや、その生体を模倣したカラテやジツを使用する。例えば、イヌのカラテは身を守るためのものであり、モズの空中からのダイブも狩りを行うためのものである。このタイプには、主に肉食(もしくは雑食)の動物が分類されることになる。
アクマとドラゴンという生物は、実在したか不明だが、アクマは、少なくとも、アクマ・ニンジャを崇拝(つまり模倣)している。ドラゴンについては、食性は不明だが、爪や尻尾を使っての攻撃を模倣していることから、少なくとも生存のために戦う必要があったに違いない。
2.6.生物繁殖模倣系
・クジャク、セミ
人間以外の生物の繁殖するための動きや、その生体を模倣したカラテやジツを使用する。生物生存模倣系と異なるところは、模倣する動きが生存に直結しないことである。
クジャクのジツは、広げた羽を模倣したものである。羽を広げる行為は繁殖(つまり、子孫を残す行為)のための行動であり、極端なことを言えば、孔雀は羽を広げなくても生存することはできる。同様に、蝉の音を鳴らす行為も繁殖のための行動だ。
また、このような生物生存模倣系との違いはあるが、非常に重要な共通点もある(詳しくは後述)。
2.7.有機物利用系
・キノコ
人間以外の生物を利用して、カラテやジツを使用する。これも、模倣ではなく利用である。
キノコは、茸の生体を模倣して胞子を飛ばしたりするわけではなく、茸を食べることによって力を得る。
2.8.肩書き系
・ナイト
肩書きや役職に関するジツやカラテを使用する。knight(騎士)は肩書き(あるいは職業などの自分の身分を表すもの)である。
伝承模倣系と同じく、この肩書きそのものがニンジャによる可能性があるため、人間の手によって生まれたかどうかは判断できない。
2.9.伝承模倣系
・オオカミ
言い伝えに通じるカラテやジツを使用する。オオカミがなぜ生物生存模倣系ではないかというと、そのジツのためである。オオカミのジツは、狼人間への変身(月の影響を受ける)であるが、これは狼という生物の特徴ではなく、人々に語り継がれている伝説だ。
無機物利用系と異なり、この伝説そのものがニンジャによる可能性があるため、人間の手によって生まれたかどうかという点では別のタイプとなる。
2.10.無機物利用系
・カイコ、ジョルリ、テッポウ、ヨロイ
無機物を使用してカラテやジツを使用する。この無機物の定義だが、ここでは「人間(つまりモータル)が生み出した物」とする。
浄瑠璃や鉄砲、鎧は言わずもがな人類の進化によって生まれてきた道具であるが、蚕もまた、人類が完全に家畜化した生物であり、そういった面では、人間の手によって作られたという分類になる。
3.全てのニンジャクランに共通すること
10種に分類したニンジャクランであるが、それらには共通する点がある。それは、「子孫を残すこと」ということである。生物繁殖模倣系は勿論だが、生物生存模倣系でも、戦うことで生き残る(生き残れば子孫を残せる)となり、最終的に行き着く先は同じである。
また、それ以外のクランでも、道具など「自分自身以外の周囲の物や環境」を使うことで強くなり(生存率を上げ)、最終的に子孫を残すことに繋がる。
しかし、いくら長生きしてもニンジャは子を成せないのだから、「子孫を残すこと」とは矛盾するのではないかとの指摘もある。これについては、ニンジャにとって子孫とはミーミーのことであり、それを受け継がせるために強くなる(あるいは目立つ)必要があると考えれば不自然ではない。
4.アワビはどのようなニンジャクランだったか
以上のクラン分類から、アワビがどの系統になるかを考える。
まず、アワビは生物であるから、生物生存模倣系、生物繁殖模倣系、有機物利用系のどれかに分類されるものと考えられる。
次に、アワビは治療系のジツが得意だったという点から考察すると、石決明(せっけつめい)という漢方薬にたどり着く。石決明とは鮑の殻を乾燥した物であり、とくに視力に関する症状に効果があるとされている。ニンジャにとって視力とは、イクサにおいて敵の動きを知る要であり、これを治療できるとなれば、治癒系のジツが得意ということも説得力がある。
つまり、アワビとは、「鮑の成分を利用して治療を行うニンジャクランであり、キノコと共通点がある」という可能性が高い。
なお、治癒系という他のニンジャクランからも入用なニンジャクランが滅びた理由は、おそらく茸と異なり鮑は海でなければ入手できなかった点であろう。イクサが激しくなるほどに、場所を問わず陸上であれば茸を提供できるキノコのほうが有用なのは言うまでもない。
5.タナカにはどのようなニンジャクランだったか
以上のクラン分類から、タナカがどの系統になるかを考える。
まず、作中にはウーンガン・タナカ、カギ・タナカ、タナカ・メイジンなど、タナカの姓を持つ人名が存在する1)。
このことから、タナカは姓であり、肩書きではないということが分かる。つなり、前項にあげた10種の分類のどれにも分類されないのだ。
つまり、新しい分類になる。ここでは、「設立者名系」と「技術模倣系」の2種の可能性を考える。
5.1.設立者名系
設立者名系とは、設立者の「ニンジャネームそのものがクラン名となったもの」である。
近いニンジャクランだと、ドラゴンがある。ドラゴンのニンジャはドラゴン・ユカノからドラゴン・ゲンドーソーと、ドラゴンの名が受け継がれている(ユカノは記憶を失っていたが、ここではこのように表記する)。つまり、ドラゴンは、「ドラゴン」という名をニンジャクランの中で引き継いでいるのだ。
「ニンジャクランの創立者の名を、ミーミーとともにニンジャクラン内のニンジャが引き継ぐ」と考えると、タナカは、『設立者の名がタナカだった』という結論にたどり着く(タナカという生物や自然現象は存在しないため、設立者のニンジャネームとなる)。
つまり、タナカ・ニンジャが登場することによって生まれたのがタナカであるということだ。これはまた、タナカ・ニンジャというリアルニンジャが存在した可能性も示している。更に言うなれば、”タナカ・ニンジャから田中の名字が発生したとする説” 2)と合わせれば、タナカ・ニンジャは稲作が日本に伝来したときに生まれたリアルニンジャということになる。
また、太霊道の創始者である田中 守平(たなか もりへい、1884年9月8日 - 1929年12月17日、90日にも及ぶ断食中に霊的能力を体得したとされる)も、タナカに使えていたモータルの血を引いていたのであろう。霊的能力の開眼も、ニンジャに仕えていたモータルの遺伝子情報に刻まれていたものが隔世遺伝で目覚めたと考えることもできるのではないだろうか。
なお、一見すると設立者名系は”ニンジャは新しいものを生み出せない” 3)という説に矛盾するように見える。しかし、モータルだった時代にテレキネシスを生み出し、そのままリアルニンジャになったと考えれば矛盾しない。
5.2.技術模倣系
技術模倣系とは、「人間(つまりモータル)が生み出した技術」を模倣しているクランである。無機物利用系との違いは、模倣するものが道具か技術かという違いがある。道具の場合は道具の名前がニンジャクラン名になるが、技術の場合は技術を模倣された人物名がニンジャクラン名になる。
技術模倣系は”タナカ・ニンジャから田中の名字が発生したとする説”に反するが、ニンジャネームと名字の関係については諸説あるので、複数の面から考える必要がある。
タナカが技術模倣系だとすると、田中 守平がタナカ・ニンジャであった可能性が高い。そうなった場合、タナカは江戸時代以降のニンジャクランとなる。ニンジャの立ち枯れの時代に発祥したニンジャクランだということが、過去のニンジャクランとクラン名の分類が異なる原因である可能性も否定できない。
6.総括
既存のニンジャクランを分類することにより、ごく僅かな情報しか存在しなかったアワビとタナカについて、新たな可能性を見出すことができた。今後、新しいニンジャクランの存在が判明しても、今回の分類を利用することで詳細な予測を行うことができるだろう。
また、『2.ニンジャクランの分類』については、“ニンジャが全ての始祖であるという説“4)になぞらえて発祥が古いと考えられる順番(ニンジャ→自然現象→生物→伝承→人工物)で並んでいる。これについては今回の論文の主題と異なるため、学会員各自で考察していただきたい。特に、この論文に疑問をいだいた学会員各位については、ぜひ論文を執筆していただきたい。ニンジャクランに関する研究は発展途上であり、多くの視点と意見を必要としているのだから。
参考文献
1) 論文「ネオサイタマの戸籍法の変化に関する考察」より
2) 論文「ニンジャクランの名称とモータルの名字の関係」より
3) 論文「ニンジャの創造性~ミューズとはなにか~」より
4) 論文「ギリシャ神話に内包されたニンジャ真実」より
※参考文献は雀botのニューロン内に存在する、架空の論文です