(※極めて個人的かつ不確かな記憶を手繰り寄せて書いたものになります。ご了承ください。) Intro 雨は降らなかった。 快晴というわけでもなかったけれど、去年のようなずぶ濡れでの入場とならずに済んだことをまずは喜んでいた。 煌々と賑やかな川崎の街、どちらにしろその夜空には、星の瞬きなんて望むべくもない。 開場1時間前に現地に着くと、既に想像を遥かに超える長さの列が出来上がっていた。 前回は開場直前まで2列とかだったのに……と悲喜こもごもの感情をこねくり回しながら、
彼女は少し前に、神秘性について語っていた。 今の彼女が自身に欠けていると意識するもの、求めていたもの。 普段の配信で見せるユーモアや明るい声色、「オタク」らしい一面に、度々口にする弱音。 秘めることが得意でないというよりは、自身の内面の一端を曝け出すことの価値を理解していると言う方が正しい気がする。 初めて彼女の声を耳にした日のことを思い出す。 浮世離れした、ずっと遠い世界で仄かに響いているような歌声。 暗がりをキラキラと照らす輝きに、触れれば幻と消えてしまいそう