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30年うまくいかなかったんだから、やり方は変えてみてもいいんじゃない?:読書録「入門シュンペーター」

・入門シュンペーター 資本主義の未来を予見した天才
著者:中野剛志 ナレーター:デジタルボイス
出版:PHP新書(audible版)


どっかのネット記事で面白いと言う評判を見た覚えがあって、Audibleで見つけて聞いてみました。
まぁ、Audibleで聞くにはちょっとこみ入りすぎてる(特に終盤)ところもあって、聞き流しになっちゃった面もありますけどw。
でもかなり面白かったし、作者自身が言ってる通り「シュンペーター」に対する誤解なんかも自分の中にある事ははっきりと分かりました。

<目次>
1. どんな人がイノベーションを起こすのか
2. 資本主義とは何か
3. なぜ日本経済は成長しなくなったのか
4. 創造的破壊とは何か
5. 企業の成長戦略
6. どんな企業がイノベーションを起こすのか
7. シュンペーター的国家
8. 資本主義は生き延びることができるのか


前半はシュンペーターの理論の解説。
初期の「起業家」に関する解説から、後期の「大企業の重要性」を重視したスタンスまで解説されています。
ここで説明されている起業家を聞けば聞くほどイーロン・マスクが頭の中に浮かんできましたw。
大企業を重要視してたっていうのは、確かに意外な感じがしますね。
ポイントは余力のある資金を技術開発に回せると言うこと。
また、資金を回すためには、安定性が重視されると言うことから、新自由主義的な政策に対しては批判的…と言うのは中野剛志さんらしいです


後半は、シュンペータ以降の後継者たちの理論なども紹介しつつ、日本の失われた30年に関する解説が加えられています。
中野さんの指摘によれば、シュンペーターの創造的破壊を掲げながらも、新自由主義的な政策を取り組むことによって、創造的破壊のベースとなる安定性や余力が失われていったということが失われた30年の土台にあると言うこと(株主資本主義)。
ここら辺はちょっとよくわからない。
ただこの30年うまくいかなかった事は確かなので、方向性を変えていくと言う所は重要なのかもしれないというのが僕のスタンス。
コーポレートガバナンスも批判してるけれども、ここに関しては、昨今の企業の不祥事とかを考えると何とも言えないなぁと言うところはあります。


一方で、なぜアメリカが成長したと言う点に関しては政府の役割を重視していると言う点が挙げられています。
一見市場に任せるように見えて、実際には政府が相当に介入をしているし、産業政策も立てているというのが中野さんの解説です。
MMT理論何かとも絡めつつ、政府の積極的な関与を主張すると言うのは、中野さんのスタンスですが、その理論的なベースっていうのはここら辺にあるのかもしれません。
まぁ、ここら辺が「よくわかんないなぁ」って言う部分なんですけどw。
現在の日本の政治的状況がどういう風になってるかっていうの一言では言えませんけれども、案外こういう方向性が出てくるかもしれないと言うような気配もあるかなぁ。
ただ単純に「政府にお任せ」ってのも違う気もするんですよね〜。(シュンペーターの「社会主義」論なんかも、そういう意味じゃ興味深かったです)
まぁその前にお金周りや組織決定の透明性を高めないと、なかなか積極的に政府が介入していくって言うところに賛同はされないような気もしますが


全体としてはなかなか面白い作品だったと思います。
とにかくこの30年うまくいってない事は確かなので、今までのやり方は違うやり方をやってみないとどうしようもないじゃないんすかね。
減税や政府の積極的介入なんていうのはそういう方向性の1つだと思うんですけど、まぁその前に非効率になっているいろいろな組織を透明化して効率を上げさせるって言うところが前提になるんじゃないかとも思いますね。
そうじゃないと政府の役割拡大とかなかなか賛同を得られないだろうし。
そういう観点から、生成AIなんかに期待するっていうのが、もう1つの僕のスタンスなんですけどね。


だからこういう動きなんかには期待しちゃいます。



#読書感想文
#入門シュンペーター
#中野剛志
#PHP新書
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