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日本で走るはじめてのマラソンが、名古屋ウィメンズマラソンでよかった

はじめて走る国、はじめての母国レース、はじめてのペーサー、はじめてのタイムが印字されたゼッケンetc…とわたしにとってはたくさんの”はじめて”がぎゅぎゅっと詰まったレース。そして2020年の1月ぶりの42.195km。待ちに待った大型のシティレースがようやく帰ってきた。日本中の、もしかしたら世界中のランナーの、いろんな想いが詰まった”名古屋ウィメンズマラソン”を走ってきました。

はじめての母国、にっぽん🇯🇵

記念すべき35レース目は、ようやく母国の日本で走ることになりました。日本で走る人にとって普通なことが、わたしにとっては普通じゃなかったり、プチカルチャーショックが発生したので、ちょっと面白いので記録に残しておきます。

・母国語飛び舞うなかで走ることが、こんなにも楽だなんて!

海外で走ることが常のわたしにとって、レース中に飛び舞うのは英語か現地の言葉だけ。英語はそこそこ、スペイン語は生きるのに必要なくらいは話すのですが、それでもマラソン走りながら他言語を理解して話すのはそこそこ頭を使っていたみたいです。日本で初めて走って気づいていちばんびっくりしたこと。
このレースではじめてNo English,No Spanishを体験したのですが、めちゃくちゃ楽!だって頭使わない!沿道の応援がほんと嘘偽りなくすべて理解できる、プラカードに何が書いてあるか瞬時に理解ができる、「ありがとう!」って言葉の意味がちゃんと伝わる。…純粋に感動しました。
しかも走りおわって疲れてるときに、頭ふわふわした状態でもコミュニケーションが問題なくとれるってすばらしい。日本でずっと走ってるランナーからしたら「何言ってんだ?」みたいな話なのですが、初めて日本を走る身としてはめちゃくちゃ新鮮でした。同時にきたる海外レースに備えて自分の言語レベルも上昇させたいとおもったり。

・沿道の応援、海外レースにもぜんぜん負けてない!

海外のレースでいちばん好きなポイントが、アルコール摂取過多なのかってくらいハイテンションな応援だったりするので、日本の応援はどんな感じなのかな?って気になっていたのですが、めちゃくちゃ楽しかったです🙌
コロナの影響で沿道の人はいつもに比べると少なかったみたいだけど、応援がすくなかったとかぜんぜん感じませんでした。大声であんまり話してはいけないとか、近くに寄っちゃいけないとか、いろんなことを考えないといけないときに、最大限できる応援をしてもらった気がします。
プラカードに書いてあることばたち「26000円の元を取れ!」「ティファニーが待っている!」には特に笑わせてもらいました。ボランティアで給水のスタッフも今回は声かけはそんなにできなかったみたいですが、そんななかで身振り手振りで応援してくださって涙ぽろってしました。

2018年に東京マラソンのボランティアをしたとき、シーンってしたスタート地点に度肝を抜かれてから、”日本の応援ってたぶんあんな感じだからなあ…”ってこころのどこかで引っかかってたんです。

それが喉に引っかかった魚の骨みたくぽろっと外れて、日本の応援だって最高にイケてることを全身で感じることができました。

・音楽がもうすこしあったら、もっと最高だとおもった30km付近

ペーサーをしていてひしひしと感じたのが、一般ランナーさんの疲れ具合。ハーフを過ぎたあたりまではみんな結構るんるんでお話しながら走ってたくらいなのですが、25kmを過ぎたあたり、たぶん名古屋城くらいを過ぎたところから、疲れが急激に襲ってる感がしました。名古屋ウィメンズマラソンは27、8kmを過ぎてから31km地点の折り返しまでがまっすぐなんですが、メインストリートからすこし外れてることもあり応援の声も少なくなり無音の世界に。
いちばんしんどい時間に、無音は正直きつい。初フルマラソンのこの時間帯は地獄みが深みって感じました。
海外のレースはえげつない時間(25~35kmあたり)の時間帯はもちろんのこと、ミュージックやらおいしいエイドステーションやら、マッサージブース(これはわたしもびびったけど、30km地点にあった)とかがあって、派手さにめちゃくちゃ力を入れている感があります。マラソンのコースマップにエイドステーションならぬミュージックステーションがあったりして飽きさせない工夫がすごい。

我が国では騒音条例とかの関係もあるのかと考えたのですが、33km地点にRedbullの派手派手ブースがあったので。

ことばだけじゃなくて音楽の力って想像以上にわたしたちの背中を押してくれる。Redbullに続いて、背中に翼をはやしてくれるブースを待っています🎧

・ちょっとびっくりした名古屋シティハーフマラソンとの合流

5時間で42.195kmを走る、つまるところキロ7分ペースで走ります。わりとお話しながらでも走れるペースです。特に序盤はみなさんお話しながら走ったりしていました。そんななかで時間帯もあるのか、15kmくらいを走りはじめたあたりで、同日開催の名古屋シティマラソンのランナーさんと合流することに。フルマラソンである名古屋ウィメンズマラソンは女性のみだからか、ハーフである名古屋シティマラソンのランナーはほとんどが男性でした。

わたしがびっくりしたのは、ハーフマラソンを走るトップランナーの男性たちです。ハーフマラソンの方たちと合流するときに、「左によってください」とスタッフの指示もあり、わたしたちペーサー陣ふくめ、後ろにつづく一般ランナーさんは左側によることに。右側車線はほぼ完璧にあけていました。

なのに、どうして左側のわたしたちすれすれの、白い線の上を相当なスピードでみんな走るんだ😇片側車線をあけている意味😇

5時間のペーサーのおねえさん、まじで接触しかけてほんと危ないってなりました。一般のランナーもきゃっ!ってよろけたりしていました。それなのに謝罪も一瞥もなく走り去っていくの。スポーツマンシップってなに?
次の日、けっこーガチランナーのお友だち(フルマラソン3時間くらいで走る、はやい)に話たら、「最短距離狙ってるんよね、タイム狙うって人のきもちはわかるんよね…」と言われました。
わたしは速く走るとかまったく意識したことないし、ハードな練習だってしたことありません。だからタイムを叩きだすために血の滲む努力をしたんだって気持ちをしっかり理解することはできません。

だけれども危うく接触事故を起こすような走りかたして、それでベストタイムを更新することはよきことなのでしょうか?ほんとタッチの差で接触しそうだったペーサーのおねえさんの隣にいて、それを目の当たりにして、ほんとにびっくりしました。だって右側車線はがらがらなんだよ、なのに危ない走りかたしなくても…って思ってしまいました。雰囲気も人を刺すような感じでとっても怖かった。

どんなに足が速くても、2時間台でマラソンを走る人でも、子どもがハイタッチを望んでいたらそっちに行ってハイタッチするし、給水のボランティアにありがとう!って叫ぶランナーがわたしのあたりまえ。2時間46分で走るオランダ人のランナーは折り返してすれ違ったとき「あとすこしで折り返しだよ!がんばって!」って声をかけてくれました。タイムを求めること、人にやさしくすること、どっちが正しいとかはわからないけど、わたしが好きなのは一緒に走ったときに怖くない走りかた。

はじめての地元

生まれた地で走る。簡単に出来そうで、意外とそうでもないことを世界の34レースを走って身を以て感じました。戦争や貧困、政情不安でレースを開催できなくなった国をいくつも目にしました。コロナウイルスが流行してからは、走ることが難しい状態にすら陥りました。そんな世界の災禍で42.195kmのレースが地元であることが、どれだけ幸運なことなのか。その幸運を、幸運なことに享受することができたので、色褪せないように記しておきます。

・ばあちゃんの83歳の誕生日だった

ばあちゃん、としえの83歳のお誕生日は名古屋ウィメンズマラソンの前日でした。ばあちゃんは去年から名古屋ウィメンズマラソンをわたしが走るのをずっと楽しみにしてくれていて、名古屋ウィメンズマラソンの特番をぜんぶ録画してくれたそうです。録画の容量が減るって理由で速攻で消去されたそうですが。この孫にして、このばあちゃんありって感じ。
としえは83歳です。83歳にしてはめちゃくちゃ若いし、ピンクのスカーフ巻いてるし、わたしが名古屋に行くたびにおせっかい焼いてくれるし、とりあえずイケイケのばあちゃんです。

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そんなパワフルなばあちゃんでも海外にはなかなか行けません。飛行機に乗ると腰が痛くなってしまうから。それなのに孫はいつもマラソン走りに海外ばっか行く、よく愚痴ってました。

「わたしが死ぬまえに、ゆうりが走ってるの目にうつしておきたいわあ。」

沿道での応援はなるたけお控えくださいってホームページでもありましたが、コースがほんとばあちゃんちのどんぴしゃ近所。ばーちゃんは近所をお散歩がてら孫の勇姿を目に焼きつけてくれたみたいです。人ってほんといつ死ぬかわからないから。わたしも、ばあちゃんも。

こうやってばあちゃんの誕生日プレゼントがてら、地元を走れてほんとによかった。
ちなみにばあちゃんには”nicolai bergumann”のプリザードフラワーボックスを別途差し上げました。秒でじいちゃんの仏壇に飾られた”nicolai bergumann”でした。3年は持つから、3年は同じ花です。じいちゃん南無( ˘ω˘ )🙏

・血を繋がった人たちに名前を呼んで応援してもらった

わたしの地元は愛知なので、わたしの家族以外は親族みんな愛知県に住んでいます。レース中に出現した名城病院で産み落とされてます、わたくし。ランナーさんのひとりがまさかの名城病院で働いていて、新生児のわたしと会っていたかも説で盛りあがりました。

そんな世間話をしつつ市役所やら県庁を尻目に長い長いまっすぐを走りぬけて、折り返して33km地点くらい。

「ゆうりー!ゆうりー!」

聴き慣れた声。従姉妹のあゆちゃんとさきちゃんの声。斜めひだりを目にすると見覚えのある親族の姿が。

ホームページにも沿道で応援はご遠慮くださいってあるからと伝えると「ペーサーなら同じペースだし、何時に着くかわかるでしょ。その時間に家から散歩がてらチラ見にしいくわあ。」と言っていた叔母さん。チラ見じゃないやん、がっつりやん。
「すいません、あれ、うちの親族です、近所だったみたいで。」
恥ずかしすぎて一緒について走っていた一般のランナーの方に言い訳みたいなことしてしまいました。
「あらあ、すてきねえ。」「こんな可愛いペーサーさんなら応援したくなっちゃうわあ」
そうフォローしてくれるランナーさんにありがとうをしつつ、応援しにきてくれた叔母さんたちに手を振りました。
めちゃくちゃ恥ずかしいけど、めちゃくちゃうれしかった。初めて感じる高揚感でした。

ちなみに42.195kmを走りおえたあと、従姉妹の子ども4人分のお誕生日祝いやらで大金が吹っ飛んだのもよき想いでです( ˘ω˘ )🙏

はじめてのペーサー

「ペーサーやってみる?」

そう言われたとき、ほんと何の考えもなしに「やりますう😇」って応えてました。脊髄反射ばりです。だってわたしの知ってるペーサーってめちゃくちゃ緩かったし、あれくらいならわたしにもできるだろっておもってました。詳しくはこちらの前日譚にて。

5時間をめざすランナーが集うIブロックの前に足を踏みだすまで、ほんとに手が震えてました。ほんとです。

ペーサーの重要性を知るほど緊張して、ペーサーをやったことある方同士の「5秒遅れただけで、5秒遅い!って怒鳴られたことあるよ。」「あっわたしも怒られたことあります。」みたいな会話を耳にして泣きそうになって、わたしに大役果たせるのか、こころから楽しんで走れるのか不安でした。

あのときのわたし、よく逃げなかった。やらない後悔よりやる後悔を選択した過去のわたし、よくやった。

ペーサーをやってほんとうによかった。胸をはって宣言できます。

今までのレースは”自分のため””自分の楽しみのため”に走っていました。もちろんチャリティーは別だし、人を不快にすることはしないは鉄則だけど、わたしがいちばん楽しむことが最重要事項。

この名古屋ウィメンズマラソンは”人のために走る”初めてのマラソンでした。

5時間のペーサーは3人体制。お2人がすでにペーサーを経験済みのスーパーガールだったので、わたしはとんでもなく緊張することなくサポートに徹することができました。
今回はニューバランスさんからのご依頼で、ペーサー業務の傍らでレース内動画撮影も一任されたのが余計によかったのかもしれません。海外のレースのときは、いつも走っては撮影しての繰り返し。慣れていることをさせてもらうのはありがたい。

かるーい声かけをして鼓舞しながら走っていると、ハーフ地点くらいでとあるランナーさんが「一緒に走っていてとても楽しい」って走りながら伝えてくれました。
言葉にうまくできないくらいのよろこびで胸がいっぱいで、なんか変な笑みを浮かべていた記憶があります。でも途方もなくうれしかった。

そのランナーさん以外にも「お姉さんすごくかわいい!名前は!?」「初マラソンだけど楽しいですっ!」「お姉さんともっと一緒に走りたいからがんばります!」ともう録音しておきたいな????自己肯定感爆上がりなんだが????と感じずにはいられないお言葉をたくさん頂戴しました。

人のために走ることが、こんなにも楽しくて、こんなにもうれしくなるなんて。

最後のゴール地点ではみんな頑張ってラストスパートかけてくれて、ティファニーもらうところで「ぶじサブ5切れましたっ、ほんとにありがとうございますっ!」とわざわざお礼を伝えにきてくれた姿を目にしたときは、お礼をされることやったつもりではなかったのだけど、人のために走ることってすごく素敵だなって身をもって感じることができました。

最高の想いでに昇華した名古屋ウィメンズマラソンを終えた翌日。SNSに一通のメッセージが入っていました。

「おかげ様で4時間57分、サブ5達成できました❣️
どうしてもお礼が言いたくて。
パワーをありがとう❗️」

新幹線で涙でました。わざわざ探してくれたんだなってわかって、胸にこみあげる感情が止まりませんでした。

2月は心ないことを言われることが多い時期でした。

「あなたみたいに未来を考えず好きなことばかりやっていて、アラフォーになって結婚もできなくてキャリアも積んでない女性が問題になってるんだよ。」
「もっとタメになることやりなよ。」「いまやってることってお金になるの?オリンピックとかに出場できるの?お金にもなってないのにやる価値あるの?」

こんなことを会社のある人に言われて、その瞬間には「あんたそこまで言えるくらい出来た人間なの?」とキレたのですが、家に帰ってひとりになると胸を刺した言葉が頭で渦をまいて。

「わたしがやっていることって意味あるのかな。」「お金にならないと価値ってないのかな。」

そんな言葉が頭をよぎることが多くなりました。ほんとに辛かった。ぜんぶやめちゃいそうにもなった。

でも、やめないでよかった。わたしは人のために走って、自分も楽しく走って、みんなで楽しく走った。それはすごく意味のあることだとわたしは感じてます。お金は大切だけど、お金で買えない価値があるってマスターカードのCMもずっと宣伝してるし。わたしはお金で買えない価値をたくさん手に入れてきたんだから、そんな嫌味な人の言葉なんてスワイプして消しちゃおうってようやく思えました。

名古屋ウィメンズマラソンを走って、いろんなランナーさんから「元気をありがとう!」「引っぱってくれてありがとう!」ってたくさんのありがとうをいただきました。

だけど、勇気を、元気を、パワーをもらったのはむしろわたし。

日本で走るはじめてのマラソンが、名古屋ウィメンズマラソンでよかった。

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鈴木(宮原)ゆうり
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