書記が数学やるだけ#92 バーゼル問題を2通りで解く
バーゼル問題とは級数の問題の一つで,平方数の逆数全ての和はいくつかという問題である。1644年に ピエトロ・メンゴリによって提起され,1735年にレオンハルト・オイラーによって解かれた。
問題
今回は2通りの解法について扱うことにする。
こちらは最近の入試でたまに見かける誘導(2019東海大医など)の強化形。
で,こちらは自己推薦とだけあって,分量が半端なく多い。全問証明問題なのでゴールが見えているのが救いか。
説明
結論はこちら。
これはゼータ関数のうちζ(2)の場合に当たる。
解法
最初はただの式変形,しかしこれが強力な誘導となる。
次にごちゃごちゃした数列和を分解して,漸化式をたててnの式を求める。「Σをバラしてスライドして変形」の地力が試される。
Tnの式も求める。
sinθとtanθについての不等式を立てて,SnとTnについての不等式に持ち込む。
最後ははさみうちの定理から,値が求まる。問題文からゴールが見えていたか,というのも差がつくポイントではなかろうか。
ではもう一つの解法について。
前半はウォリス積分の典型問題である。
ウォリス積分については過去記事で扱った:
ここからが勝負どころ。
(訂正:画像(3)→(4))
ここで唐突にゴール地点であるπ^2/6が出てくる。
そして最後ははさみうちの定理を使い,残りが等式として示された。
バーゼル問題について,オイラーはsin x のマクローリン展開を利用して解く方法を編み出した。オイラーはさらに,全ての素数の無限和の積を作成して展開すると全ての自然数の逆数の無限和ができることを発見した。この素数のみで作られた積をオイラー積という。
後に素数の法則性について,ガウスは自然数の中に素数がどのくらいの割合で含まれているかを示す「素数定理」を発見した。
やがて,リーマンにより,オイラーが研究していた級数を複素数全体にまで拡張しそれをζ(ゼータ)関数と名付けた。ゼータ関数は重要なもので,リーマン予想に直結する。
リーマン予想とは「リーマンゼータ関数のすべての非自明な零点の実部は 1/2 である」といった予想で,未だ未解決である。これは素数の分布にも関わるもので,もし解決したとしたら素数の法則がわかるようになるかもしれない(仮にそうなったとして,これは祝福にも呪いにもなりうることだ)。
本記事のもくじはこちら:
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