Goodman & Gilman 薬理学まとめノート#30 Antiarrhythmic Drugs
Chapter30 "Antiarrhythmic Drugs"についてのまとめ。
何が書いてあるか
・細胞膜を横切るイオンの流れは,心臓の活動電位を構成する電流を生成する
・イオンの電気的および濃度勾配は,ポンプ,特にNa+/K+-ATPase,細胞内の固定アニオン電荷によって確立される
・Na+チャネルは,安静時の心臓細胞内で閉じているので,Na+は正常な安静時の心臓細胞には入らない
・特定のタイプのK+チャネルタンパク質(内向き整流チャネル)は,負の安静時電位では開いたままであるため,K+は電気的または濃度勾配に応答して負の電位で細胞膜を横切ってこれらのチャネルを介して移動することができる
・イオンチャネルは,一般的に時間,電圧またはリガンドに依存した方法で,電気化学的勾配に沿って,導電性細孔を通過するイオンの流れを可能にしたり阻止したりするような構造変化を受ける
・膜が脱分極すると,Na+チャネルタンパク質は「閉じた」状態(安静時)から「開いた」状態(導電時)へとコンフォメーションを変化させ,その後急速にオープン状態から "不活性化 "非導電状態にコンフォメーションを変化させる
・活動電位のフェーズ0の最大アップストロークの傾きは,主にNa+電流により決定される
・内向きのNa+電流によって生成された膜貫通電位の変化は,順番に他のチャネルの一連の開口(および場合によってはそれに続く不活性化)を生成する
・細胞がNa+電流によって脱分極されると,”一過性の外向き "K+チャネルは迅速にコンフォメーションを変化させ,開状態または導電状態に入る(フェーズ1)
・活動電位のフェーズ2プラトーの間,主にL型Ca2+チャネルを介した内向きの脱分極電流は,主にK+(「遅延整流器」)チャネルを介した外向きの再分極電流とバランスをとる
・遅延整流電流(総称してIKと呼ばれる)は時間とともに増加するが,Ca2+電流は不活性化し(したがって時間とともに減少する),その結果心臓細胞は最初のNa+チャネルの開通から数百ミリ秒後に再分極する(フェーズ3)
・薬物が心臓の活動電位を延長し不整脈を誘発する一般的なメカニズムは,KCNH2の発現によって生成される特異的な遅延整流器電流IKrの阻害である
・Na+/K+-ATPaseによりNa+とK+の,SERCA2やNCXによりCa2+の細胞内濃度が一定に保たれる
・LQTSやCPVTのような稀な先天性不整脈疾患は,しばしば致死的な不整脈による突然死を引き起こす可能性がある
・インパルス伝播:洞房結節→心房全体(P波)→房室結節→His-プルキンエ系→心室(QRS波)→心室の再分極(T波)
・心室の最初の脱分極から再分極が終わるまでの時間をQT間隔と呼ぶ,心室活動電位が長くなるとQT間隔が延長し不整脈を引き起こす
・不整脈とは,定義上,インパルスの開始と伝播の正常なシーケンスの乱れである
・βアドレナリン刺激,低カリウム血症,心筋細胞の機械的伸展は第4相の傾きを増加させペースメーカー速度を加速させるが,アセチルコリンは第4相の傾きを減少させ過分極化(最大拡張期電位をより負にする)することでペースメーカー速度を減少させる
・細胞内またはSRのCa2+過負荷の条件下(例えば、心筋虚血、アドレナリン性ストレス、ジギタリス中毒、またはCPVT)では,正常な活動電位に続いてDADが発生することがある
・基礎となる心拍数が遅い,細胞外K+が低い,活動電位持続時間を延長する特定の薬剤(抗不整脈薬など)などによる心活動電位の顕著な延長が起こると,第3相再分極がEADによって中断されることがある
・心臓の再分極が著しく延長すると,長いQT間隔を伴う多型心室頻拍(torsades de pointesと呼ばれる)が起こることがある
・リエンントリーの典型的な例は,患者が心房と心室の間に従属的な接続を持つWPW症候群である
・PSVTという用語には,房室再入室と房室結節再入室の両方が含まれ多くの臨床的特徴を共有している
・VFをはじめとするいくつかの不整脈は,薬理学的な治療ではなくDC cardioversion-胸部に大電流を流すことによって治療される
・VFを検出して自動的に除細動ショックを与えることができるICDは,VFのリスクが高いと判断された患者に使用されることが多くなっている
・薬物はペースメーカーの自然放電の4つの決定因子のいずれかを変化させることで自動リズムを遅らせることができる:(1) 最大拡張期電位の増加(2) 第4相の傾き減少(3) しきい値電位増加(4) 活動電位の持続時間増加
・抗不整脈薬は2つの主要なメカニズムによりDADsまたはEADsに起因する不整脈を抑制することがある:1. アフターデポラリゼーションの発生抑制,2. 上昇ストロークを担当している内向きの電流との干渉
・DADに起因する不整脈は,ベラパミル(細胞内へのCa2+流入を減少させることによってDADの発生を阻害しSRのCa2+負荷およびSRからの自発的なCa2+放出の可能性を減少させる),または異常なアップストロークを生成するために必要な閾値を上昇させるNa+チャネル遮断薬によって阻害され得る
・CPVTでは,ベラパミルよりも効果的なのは,フレカイニドやプロパフェノンなどの薬剤によるRyR2とNa+チャネルブロックの併用である
・Na+チャネルをブロックすることによって作用する薬物は,一般にブロックからの回復の電圧依存性をシフトさせ,その結果難治性を延長させる
・SAまたはAV結節組織では,Ca2+チャネル遮断によって難治性を延長する
・拡張期におけるNa+チャネルのブロックからの回復は,定常状態のNa+チャネルブロックの程度を決定する重要な因子である
・共通の電気生理学的特性によって薬物を分類することは,基本的な電気生理学的作用と抗不整脈作用との関連性を強調するものである
・しきい値を増加させることにより,Na+チャネルブロッカーは自動性を減少させ,DADまたはEADに起因する引き金となる活動を阻害することができる,また多くのNa+チャネルブロッカー第4相の傾きを減少させる
・Na+チャネル遮断薬は伝導速度を低下させ心房細動速度を遅くする
・K+チャネルブロッカーはQT間隔を増加させ,除細動のエネルギー必要量の減少,急性虚血によるVFの阻害および収縮力の増加をもたらす
・Ca2+チャネルブロッカーは一般的に心拍数を低下させ,房室結節伝導の速度が低下するので,房室リエント性頻拍のように房室結節が回路に関与する再入室性不整脈に効果がある
・心房粗動や細動の心室速度を低下させる作用があるベラパミルとジルチアゼムは,心房粗動や細動における急速な心室速度の一時的なコントロールと,PSVTを洞調律に迅速に変換するために承認されている
・β遮断薬は房室結節伝導時間を増加させ,房室結節屈折性を延長させるため,房室結節に関与する再室性不整脈を終結させ心房細動やフラッターにおける心室反応を制御するのに有用である
・一般的に心臓の不整脈を誘発する因子には,低酸素,電解質障害(特に低カリウム血症),心筋虚血および特定の薬物がある
・不整脈治療は,患者にとって明らかな有益性が確認できた場合にのみ開始すべきである
・治療法の選択に寄与する因子としては,症状だけでなく,構造的心疾患の種類や程度,薬物療法前のQT間隔,伝導系疾患の併存,非心疾患の有無などが挙げられる
・抗不整脈薬治療のリスクとしてよく知られているのは,生命を脅かす結果をもたらす可能性のある新たな不整脈を誘発する可能性があることである
・心筋虚血に反応して,正常な心臓では安静時電位,伝導速度,細胞内Ca2+濃度および再分極に変化が生じ,そのいずれかが不整脈を生じさせたり,抗不整脈療法への反応を変化させたりすることがある
・アデノシン:天然ヌクレオシド,アセチルコリン感受性K+電流を活性化,リエントリー性上室性不整脈の急性終結のために急速静脈内ボーラスとして投与される
・アミオダロン:甲状腺ホルモンの構造的類似体,Na+チャネルをブロック,Ca2+電流や過渡的な外向き遅延整流器および内向き整流器K+電流の減少,非競合的なアドレナリン遮断効果,心室頻拍や心停止を起こすVFの第一選択薬
・ジギタリス配糖体(ジゴキシン,ジギトキシン):細胞内Ca2+の増加により正の強心作用を示す
・ジソピラミド:キニジン類似のNa+チャネル遮断作用,心房粗動や心房細動のある患者の洞調律を維持し心室頻拍やVFの再発を予防するために使用される
・ドフェチリド :IKrチャネルを強力に遮断することにより活動電位とQT間隔を延長する
・ドロネダロン:アミオダロンの非ヨウ素化ベンゾフラン誘導体,アミオダロンと同様に複数のイオン電流を遮断する,心房細動および心房粗動の治療薬
・エスモロール:β1選択的な薬剤,赤血球エステラーゼによって代謝され非常に短い排泄半減期(9分)を有する
・フレカイニド:Na+電流と遅延整流器K+電流(IKr)とCa2+電流をブロック,Na+チャネルブロックからのτ回復延長,RyR2 Ca2+放出をトリガーとしたDADの抑制
・イブチリド:IKr遮断薬であり,内向きのNa+電流も活性化,心房細動またはフラッターを洞調律に即時転換させるために急速点滴で投与
・リドカイン:心臓のNa+チャネルの開通および不活性化の両方をブロック,局所麻酔薬,心室性不整脈の急性静脈内治療にも有用
・MgSO4:静脈内投与荷よりTorsades de Pointesの再発予防に有効
・メキシレチン:リドカインの類似体,一次代謝を減少させ慢性的な経口治療を可能とする,心室性不整脈の治療薬
・プロカインアミド:局所麻酔薬プロカインのアナログ,開いたNa+チャネルのブロッカー
・プロパフェノン:ブロックからの回復の時定数が比較的遅いNa+チャネル遮断薬,CYP2D6を介した肝代謝によって排泄
・キニジン:Na+電流と複数の心臓K+電流を遮断,Na+チャネルの開放状態遮断薬,ブルガダ症候群や短QT症候群などの異常な先天性不整脈症候群におけるVFの再発予防に特に有用,下痢は最も一般的な副作用,CYP2D6の強力な阻害剤
・ソタロール:非選択的なβ-アドレナリン受容体拮抗薬,活動電位の持続時間とQT間隔を延長,遅発性整流器やおそらく他のK+電流を阻害することで心活動電位を延長させる,心室性頻脈性不整脈と心房細動/粗動の両方の患者への使用
・ベルナカラント:複数のイオンチャネルの阻害剤,心室抵抗性に大きな影響を与えることなく心房不応期を延長する
ノート
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