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学術バーQ『医学・創薬科学バー』参加レポート(Writer Rinka)

※学術バーQ『医学・創薬科学バー』に関する記事は本記事で一旦終了,明日以降は平常運転に戻る


学術バーQ『医学・創薬科学バー』の1人目の登壇者として参加,以下にその結果や反省点などを箇条書きでまとめる。なお私は2人目の発表まで聴いて帰宅したのでそこまでの記録である点に注意。


・まず,来客数が予想よりも多かったことは嬉しくもあり何より安心した。カウンター席が埋まれば十分だと思っていたが,最終的にテーブル席まで満員となった。お盆の時期で数が減るかと思いきやそうでもなかった点が意外であった。

・聞いたところ,X経由で来た方が多いようであり,宣伝戦略の重要性を考えさせられた。なお,登壇者の中ではWriter Rinkaが最もフォロワー数が少なかった(X+noteを合わせても)。

・客層を全て把握できたわけではないが,文系の方から創薬・動物実験に関わる方まで広い範囲の客層を掴むことができており,『医学・創薬科学バー』の狙いに十分合っていたと思う。

・逆に,人が多いということはキャパシティをオーバーしている可能性があり,もしそれで集客を逃すとしたら勿体無いことである。対策として,『医学・創薬科学バー』にはいろいろなテーマが混在しており,これらテーマを分割することで客層を分散させるといった戦略が考えられる。

・分割するにあたってのキーワード;医学史,伝統医学,中国古代史,天然物科学,分子シミュレーション,生命をシミュレーションする,漢方薬とは何なのか,統計学,動物倫理,共感疲労,微生物学,顧みられない熱帯病

・ここからは私の発表について。まず,時間通りに終えられたこと,スライド内容を一通り話せた点は良かった点である。特に時間管理について,1時間の持ち時間のうち,30分で一区切りできるような内容に(たまたま)なっていたのは評価できる。

・今回は漢方薬からネットワーク科学の研究へと一気に繋げるため,「漢方薬は複数の成分からなり,それが体質全体に働きかける」ことをかなり大雑把に話した。正直,1時間で話し切れる内容ではなかった。漢方理論の説明を大幅に端折ってしまったことで,東洋医学独自の発想がイマイチ伝わりきらなかった可能性がある。もし次に話す機会があるとすれば,漢方理論の説明に時間を割きたいとことである。

・漢方って何?といった疑問はそれなりにある気がした,これに対して答えられる範囲で答える機会を別途設けても良いと思った。

・ネットワーク科学については,専門外ということもあり説明が中途半端になってしまった。生命はネットワークでできている,というのは想像すれば誰でもわかる話で,スケールフリー性やスモールワールドなどの踏み入った話までできればと思った。

・研究事例として自分の成果を示したが,論旨がより明快,手法が堅牢な他人の論文の紹介でも良かったかもしれない。ネットワーク薬理学において,ネットワークを可視化しておしまいというのはあまり良くない,それを細胞なり動物なりで実証して初めて妥当性が示される,ここまで見せても良かっただろう。

・細かい話ではあるが,COIについて言及すべきだった(当然ない)。

・多かった質問「生薬の成分は判明しているのか?」は非常に答えが難しくかつ善い質問であり,その場ではだいぶ歯切れが悪かったと思うので,ここでまとめておく;

・結論から言うと「全部はわかっていない」である。確かにGC-MSなどの技術で定性的な化合物特定は進んでいるが,それはあくまで今ある技術の範囲内に限定され,実際には特定できていない化合物が多数あるとされている。

・日本漢方で用いられる生薬の主成分・含量の多い成分については概ね解明されているのでそれでいいのかと言われると微妙で,微量成分が毒性をきたす可能性を排除することはできない。過去には,細辛をはじめとしたウマノスズクサ属の植物に,腎毒性を持つアリストロキア酸が混入していることが問題となったことがある。

・また,体内で代謝されることで構造変化を起こすことまで考えると,成分数はとてつもない数になる。さらに,代謝して初めて薬理活性・毒性を有するケースも多々みられる。

・以上,『医学・創薬科学バー』参加レポートをまとめた。今後も学問を広げる場を盛り上げていきたいと思う。


筆者の記事まとめ:


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