FDNコモンカードPauper評価
11月15日発売『ファウンデーションズ』の全カードが公開されました。
5年間もスタンダードで使用可能なセットというのも初めてのことで驚きですが、通常のプレイ・ブースターに加え、ビギナー・セット、スターターコレクション、ジャンプスタートと一気に大量の製品が同時発売されるのにも圧倒されます。
マジで何なんだこの量は……
また、パウパーには関係ありませんが、プレイ・ブースターにはお馴染みのスペシャルゲスト(SPG)、スターターコレクションには統率者用のカード(FDC)が収録され、それらはスタンダードでは使用不可など本当に初心者に優しくない仕様となっています。
位置づけとしては基本セットにも似ていますが、それと同様に大量に収録されるカードも再録カードが大半かつパワーも抑えめということもあり、紹介できるカードが少ないので、『ファウンデーションズ』(FDN)と『ファウンデーションズ』ジャンプスタート(J25)は一緒にカード評価をしていこうと思います。
ちなみに『ファウンデーションズ』はカードナンバー0001から0133までが、ジャンプスタートは0001から0029までが新規カードで、それ以降は再録となっています。
注目カード:白
《内陸の選別者》
《魂の管理人》系統のクリーチャーですが、相手の出すクリーチャーには能力が誘発しなくなっています。
これに限らず近年のカードはこういったタイプのほうが多いので仕方なし。
その代わりタフネスが2となっていて《祭典壊し》などの範囲除去に対しての耐性があるのが嬉しい。
トータルでは《月皇の古参兵》のほうが高性能だとは思いますが、他のクリーチャーもタフネス1が多いのであれば、タフネス1除去への耐性を上げるために敢えてこちらを採用することもあるかもしれません。
《継位兎》
今まで白にだけ存在しなかったデッキに何枚でも入れられる系のカード。
《執拗なネズミ》や《人道に対する膿》がサイズアップだったのに対し、重ねれば重ねるほど横に兎が並んでいくというのは特色が出ていて面白いですね。
性能としては1枚目から2/2/2と最低限あり、3枚目で《甲虫背の酋長》相当。
白は《護衛の誓約》など実用的な全体強化がある色なので、見た目以上の破壊力がありそう。
なにより2マナという軽さが何枚デッキに入れても邪魔にならないので、前述の2枚より遥かに専用構築を成立させ易そうです。
安定感がある白単、《暴走の先導》や《君たちは酒場で出会った》で枚数を稼げる白緑、トークンをリソースに変換し易く《過酷な命の糧》での直接ダメージを狙える白黒など色々な兎デッキを組んでみたくなります。
《兵団の結集者》
サイズは並みながら起動型能力で《民兵のラッパ手》相当の効果を何度でも使用できます。
しかし、通常のアグロであれば「カードを稼いでいないでゲームをクローズしろよ」と言いたくなるマナ域なので採用は微妙なところ。
どちらかと言えば壁コンボなど大量のマナが出るコンボ寄りのデッキでこそ真価を発揮しそうです。
注目カード:青
《論破》
《取り消し》の上位互換は多数存在しますが、ドローの質を向上させるということで《解消》や《悪意ある妨害》の系譜と言えます。
《対抗呪文》が存在するコモン構築において、1マナ重くなることによるリターンを求めると占術や諜報では力不足ということなのか、それらが採用されるところを見ることは全くありませんが、性能がもう一段上になってどうなるか。
『モダンホライゾン3』以降は青系のコントロールに《こそこそサクサク》を採用するようなアプローチも散見され、手札入れ替えの価値というのは上昇傾向ですし、シンプルに《綿密な分析》を墓地に送れる点は《トレイリアの恐怖》を軸としたアーキタイプには嬉しいような気がします。
現在は5枚目以降の《対抗呪文》としては専ら《焦点の喪失》が採用されていますが、その対抗馬となることができるのか注目。
注目カード:黒
《寄生の賢者》
性能はまんま黒くなった《宿命の旅人》で、如何にも平成のカードと言った趣ですが、黒くなったことで《屍肉喰らい》と併用し易くなったのは嬉しいかもしれません。
黒の1マナの死亡誘発型能力持ちは競合が多いですが、生成するトークンの質はシンプルに強いのでどうかというところ。
最も、「大事なのは質でなくて餌としての量」となると圧倒的に《巣のシャンブラー》に軍配が上がってしまうので難しいのかもしれません。
注目カード:赤
《燃焼の学者》
《献身的な精霊術士》とコストは同じですが、サイズが3/2になっているため出たときに1枚分のアドバンテージが取れるクリーチャーとしては申し分ないクロックになっています。(タフネスはやや貧弱)
能力は手札への回収ではなく衝動ドローっぽくなっていますが、「次のあなたのターンの終了時まで」と猶予が長いタイプになっているので使用には耐えそう。
《儚い存在》のような撃つタイミングが重要なカードの再利用には向きませんが、《稲妻》のような状況を選ばず最低限の使い道があるカードを対象にすれば問題ないでしょう。
《弾けるサイクロプス》
コストやタフネスから《ニヴィックスのサイクロプス》が連想されます。
パワーが0だったり、インスタント・ソーサリー以外でも能力が誘発するようになっていますが、基本的に《窯の悪鬼》や《祭り壊し》と並べて呪文を連打する運用なるので大きな違いはないでしょう。
《僧院の速槍》が禁止されクリーチャーの頭数不足に悩んでいた赤単の《窯の悪鬼》軸のアーキタイプとしては、3マナとはいえ呪文1つあたり+3/+0できる新人には期待せざるを得ません。
ただ《ニヴィックスのサイクロプス》(『ドラゴンの迷路』初出)が10年以上前のカードということを考えると素でトランプルなどが欲しかった感もあります。
注目カード:緑
《勇往邁進》
モード選択ができる《地勢》ですが、《ロリアンの発見》が示す通り、土地にもなる呪文の強さは言わずもがな。
性能としては小型クリーチャー主体のアグロ向けで、特にP/T修整の恩恵が大きい感染のようなアーキタイプは相性が良さそうです。
コンバットトリックと抱き合わせる関係でインスタントになっている点も地味に嬉しく、こちらが後手で相手が青かった場合でも《呪文貫き》をケアせずに通せるタイミングが多そうです。
《ぬめぬめ笛吹き》
素のサイズは貧弱ですが、攻撃時には無条件で3/2になるため《ボーラスの占い師》などを単体で突破でき、最低限の性能はあります。
さらに、自身も含め4体以上のクリーチャーをコントロールしていれば4/3破壊不能にまで上昇し、こうなると《マイアの処罰者》等でも止まらず無視できない打点となります。
条件を満たすハードルは高いものの、緑単などでは特に構築に手を加えずともクリーチャーを展開していけば自然と達成できるものでもあるので、《巣の侵略者》といった横に展開するタイプのクリーチャーと併せて採用したいですね。
元のパワーが2なので《凶暴な一振り》との相性が良好なのも《Finishing Move》亡き後の緑単では嬉しい要素。
《森林の主》
現代版《ワイアウッドの野人》、といってもサイズが上がっているわけでもなく、相手の出したビーストで能力が誘発しない下位互換。
せめて3/3くらいにはなっていても良かったのでは?
しかし、これで同系統のカードが2種8枚まで使用可能になったため、いよいよビーストがアーキタイプとして成立するかも?
新規コモンの面白枠。
注目カード:再録コモン落ち
《窃取》
『団結のドミナリア』アンコモンからのコモン落ち。
ほぼシングルシンボルになった《困窮》ですが、黒単のようなデッキでの《困窮》の採用率を考えると性能的には微妙なんでしょうね。
ただ、弱いというわけでもなく、昨今は黒の除去コントロールも多色化が進んでいますので、メタゲーム的に必要になることもあるのかもしれません。
パーツがクリーチャーとクリーチャー以外で分かれているようなコンボデッキを相手する際には重宝しそうではあります。
しかし、近年のパウパーは墓地からのリソース回収カードの進化が目覚ましく、単に捨てさせるだけでは容易に回収されてしまうのが難点なため、追放するタイプの上位互換の登場に期待。
《ゴブリン奇襲》
カードナンバー的に『ファウンデーションズ』ジャンプスタート初出(アンコモン)の再録コモン落ちという変な立ち位置のカード。
性能的に『フォーゴトン・レルム探訪』アンコモンの《君は二匹のゴブリンを見つけた》の同型再版という点でも実質コモン落ちになっています。
デッキ検索をすると《君は二匹のゴブリンを見つけた》はスタンダードのゴブリンに割と4枚積みされていたカードのようですが、パウパーの赤単だと《実験統合機》を採用する関係で3マナのカードの採用はかなり難しそう。
同時発売のセットでのコモン落ちという存在の出落ち感が半端ない1枚。
《薮打ち》
『兄弟戦争』収録のアンコモンでしたがコモン落ち。
《地勢》と《格闘》とのモード選択により実質土地の枠に除去を入れ込めるというのは画期的です。
サイズの修整がない格闘除去なので、ある程度はクリーチャーの太さが要求されるため、軽いクリーチャーが主体の緑単より他の色を入れて少し重めの構成にしたほうが使い易いのかもしれません。
サイズは申し分ないものの干渉手段に乏しかったスリヴァーや《軍旗の旗手》のような致命的なクリーチャーの処理に課題を抱えていた呪禁などは御守り枠で採用を検討しても良さそうです。
《テツモスの大神官》や《節くれ背のサイ》などの英雄的を持つクリーチャーとのシナジーを狙うのも楽しそう。
《ドゥイネンの精鋭》
『マジック・オリジン』アンコモンからのコモン落ち。
元アンコモンにしてはシンプルな性能ですが、エルフであれば条件を満たすことは容易く、1枚から2体のエルフを展開できるのは《エルフの先兵》《ティタニアの僧侶》《幸運を祈る者》《森林守りのエルフ》などのエルフ参照と非常に相性が良いです。
現状、エルフはスロットをシナジーで埋め尽くされていて、何と入れ替えればいいのかというのは難しい問題ですが、ぜひ試してみたいカードであることは間違いなし。