MKMコモンカードPauper評価
2024年2月9日発売の新セット『カルロフ邸殺人事件』(MKM)のカードリストが公開されました。
ドラフト・ブースターとセット・ブースターが統合されプレイ・ブースターとなり、コモンの枚数が81種類と大幅に減少する初めてのセットということでパウパーへの影響がどうなるか注目でしたが、確かに追加されたカードが少ない印象こそ受けるものの、構築に入るかもしれないというレベルのカードがガッツリと減っているわけでもなく、通常セットらしい通常セットになっている気がしています。
カルロフ邸殺人事件のメカニズム
変装
変異と大変異のアッパーバージョン。
裏面のときに護法(2)が備わっている以外は同じ挙動のため、そこまで新規性を見いだせないうえに構築級のカードが作り辛いメカニズム。
特に今セットのコモンはパウパー環境で時折見かける《水深の予見者》等と違い表面にするためにはマナの消費が必須となっているため、マナの消費量に対して十分なバリューを提供してくれているカードになり辛く、率直にいってテンポが悪い。
偽装
こちらは予示のアッパーバージョンですが、コモンにはカードを偽装する手段が存在しません。
調査
みんな大好き手掛かり・トークン生成。
手掛かり・トークンは最初の定義済みアーティファクト・トークンであるためか、これだけ調査という独自のルールを持っているのが今になると珍しいです。
マナこそかかりますが純粋にカード・アドバンテージを得られる強力な能力。
容疑
「容疑をかけられた」状態のクリーチャーは威迫を得てブロックできなくなります。
効果は永続なので、威迫カウンターが乗っている状態くらいに思っておけば十分そう。
一応は容疑をかけられた状態を参照するようなカードもあるものの、構築級のものは存在しない印象。
証拠収集
墓地リソースを消費(墓地の望む枚数のカードを追放)して様々な追加効果を発揮しますが、追放したカードのマナ総量を参照する点が探査と大きく異なります。
必要なマナ総量に割と大きな値が指定されているものが多く、構築では基本的に軽いカードが採用されがちなことも考慮すると、やや使い辛そうな印象。
指輪物語の土地サイクリングのサイクルは良い相棒になりそう。
事件
新しいエンチャント・タイプですがコモンの収録はなし。
注目カード
《ひよっこ捜査員》
《スレイベンの検査官》の同型再版ということで、カードパワー的には実績も十分。
アグロデッキに5枚目以降として採用しても良いですし、ミッドレンジデッキでも《残響する衰微》対策で分けて採用される可能性があります。
《スレイベンの検査官》は既に《きらきらするすべて》との相性の良さを買われ、アーティファクト中心のデッキでの4枚採用もされているカードだけに、こちらも活躍を見込めそうです。
《推理》
2マナで1ドローしつつ、後半マナを追加してもう1ドローということで《熟慮》系統のドロー呪文。
単純なドロー呪文としてのマナ効率も2マナずつの分割として見ればそこそこですし、インスタントで隙が少なく、かつ、カードを消費せずアーティファクトを展開できるという点が昨今のアーティファクト・シナジー中心のデッキで都合が良さそうです。
《妥当な疑惑》
パウパーで《マナ漏出》系統の打ち消しは《焦点の喪失》が僅かに採用されている程度ですが、呪文を打ち消すだけでなく盤面に影響を与えられる打ち消し呪文として割と面白い性能をしています。
根強い人気のあるクロック・パーミッションデッキでは《深き刻の忍者》に威迫を付けられると強力ですし、相手のクリーチャーに容疑をかけることで、ブロックを阻害するという選択肢もあります。
要求するマナが2マナで腐りやすいという点がネックになりそうですが、デッキに1枚挿しておくと意外な活躍をしてくれるかもしれません。
《自白勧告》
証拠収集6を行った際の効果は《マークールの布告》のクリティカル(確率的に5%)と同等。
基本的にメインで採用するにはフラッシュバックのある《チェイナーの布告》や作製のある《税血の刃》が優位ですが、サイドボードから追加することを考慮するなら、追加で布告除去を入れたい相手の筆頭が緑白呪禁であり、そういったデッキは布告除去対策として《若き狼》をサイドインしてくるため対策カードを無視できる除去という点は魅力。
メタゲーム的に緑白呪禁や白単英雄的が鬱陶しいなら候補。
《闇討ち》
打ち消されない黒の除去は初。
ぶっちゃけ特徴的なのはそれだけで、流石に構築で使うにはマナ効率が悪すぎます。
これを十全の性能で使用したいならトロンくらいの大量マナが出せないと厳しそう。
《うなる大殺犬》
デッキの構成に依っては後続のクリーチャー全てにEtB能力で諜報1を付与するようなものです。
1/1/1と低スタッツながら威迫があるため最序盤なら自ら殴りにいける点もグッド。
アグロデッキのドロー操作からコンボデッキのサポートでもワンチャンありそうな性能。
《毒素の分析》
《焼印刃》系統のカードですが、コンバット・トリックの性質から言ってトータルのマナ効率よりも1マナで構えられるほうが小回りが利いて便利。
何気に絆魂も付与されるのが《墓所のネズミ》で全体接死ダメージを狙う際に光りそう。
イラストが不気味。
《答えの要求》
追加コストにアーティファクトの生け贄を選べるようになっただけの《胸躍る可能性》ですが、それだけで《胆液の水源》とのシナジーが見込めるようになるため、赤のドロー呪文としては最上位と言える性能。
追加でアーティファクト・トークンが出てくる《命取りの論争》と比べれば性能の低さは否めませんが、黒を足すことなく前述のパッケージを仕込めるようになることは、今後の赤を含む中速~低速デッキの構築において大きな影響がありそうです。
《機械壊しのオランウータン》
《躁の蛮人》のバリエーションも《不遜な歓楽者》《略取するバーバリアン》に次いで3種目となります。
デフォルトで到達が付いているうえに自ら4/4になる選択もあり盤面への影響力はなかなかのもの。
とはいえ生け贄にする用のアーティファクトがそれなりに採用されていないと強みを発揮できないので、同系統の先輩と比べても手放しに強くなっているとは言えません。
それこそ《胆液の水源》をメインから4枚採用するようなアーティファクトの生け贄シナジーを軸とするデッキで追加のサクり手段として採用を検討するくらいになりそう。
《疑惑の爆発》
条件を満たせば2マナ4点となり、打ち消されないクリーチャー除去としては最軽量となります。
もっとも無条件で3マナ4点の打ち消されないインスタント火力である《白熱する議論》と1マナしか変わらず、コストを軽減するための条件もそこそこ厳しい。
何より《白熱する議論》と同様に最強の護法クリーチャーである《トレイリアの恐怖》に届かない点があまりに残念。
《瓦礫帯の異端者》
クリーチャーが優秀とされている緑ですが、意外に1マナのEtB能力持ちは珍しく、諜報2は相手に依らず有効な効果であるため緑単ストンピィのようなデッキに採用できそうです。
本体は回避能力の無い1/1/1と貧弱な性能ではあるものの、墓地に落ちた後に+1/+1カウンターに変換できるため、《怨恨》を付けて殴りに行くには十分でしょう。
1マナという軽さを考えれば切削シナジーを軸とするデッキの初動としても及第点かもしれません。
特に黒緑の切削シナジー軸のデッキで採用するなら《墓所のネズミ》を2/2にすることができる点が大きな強みとなりそう。
《人道に対する膿》
今セットの面白枠。
《執拗なネズミ》系統のカードは戦場に出し、それらを維持しなければ効果が発揮されないという弱点がありましたが、これは使えば使うだけ後続が大きくなって出てきますし、墓地の追放などによっても効果を妨げることができません。
また、わざわざ3マナ支払って2/2から展開せずとも手札から捨てたり切削で墓地に落とすことにより1枚目から巨大なサイズで出すことができる点が画期的。
とは言え3マナはそこそこ重く、結局は何枚も連打することを考えるとテンポ面で厳しいため、面白そうではありますが実戦ではどうかという感。
《こっちに行ったぞ》
調査により終盤のリソース不足を補填できます。
《耕作》の基本土地カード1枚分が手掛かり・トークンになった形ですが、終盤に《苛立つアルティサウルス》などから捲れることを考えるとパウパー的にはこちらのほうがマシかなと思います。
もっとも《不屈の自然》を採用するような旧態依然なランプデッキが環境におらず、すんなり採用できそうな席がないというのも確かではあります。
《脱出トンネル》
パウパー環境のマナベースを長く支えてきた《進化する未開地》の上位互換がいよいよ登場。
追加された能力はささやかながら、クリーチャーを介したワンショット系のコンボデッキではかなり有用。
特に《裏返し》コンボはブロック指定後のタイミングまでクリーチャーのパワーを2以下に抑えられるため非常にマッチしていると言えます。
(例えば同じクリーチャー経由系のコンボデッキでも感染などは状況によっては《怨恨》をエンチャントしますし、能力の起動に対応して火力が飛んできたところを《巨大化》で守るとパワー2以下を満たさなくなり能力が立ち消えしてしまう。)
またコンボデッキでなくても相手のブロッカーのせいで殴りに行けない状態の《深き刻の忍者》の攻撃を通し0マナのキャントリップ的に使ったり、同じく《呪文づまりのスプライト》の攻撃を通して忍術で回収したりとメインデッキを歪めることなくシナジーの強化に使えるます。
既存デッキの土地との置き換えが容易であることも含め、すぐ対戦で見かけるようになりそうです。
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