中年の恋
大人女子、オトナ女子というけれど、50歳は立派なおばさんである。自覚もある。髪は白髪染めをしているし、化粧をしなければ鏡を見たくもない。
先日も、ものすっごくがっかりしたことがあった。
それは5年振りに証明写真機に入ったときのこと。
私の持つ資格は5年毎に更新申請をせねばならず、資格者証も更新される。その資格者証に貼り付けるために写真を撮った。
出来上がった写真を見る。自分の老けっぷりったら。再び5年使う証明書なのに。そこにあるのは紛れもない真実ではあるのだけれど、何とかしたくて後日ばっちり化粧をし、撮りなおしたのだった。さして変わらんかったけど。
前置きは長くなったが、ともかくそんな感じの私なのだが、年下の中年男に言い寄られている。彼が言うには
「恋心を抱いています」
なのだそうである。私は恋していないので迷惑である。このため連絡はブロックをした。彼は同じ文芸サークルの仲間であった。転勤のために先先月、飛行機で去っていったが未だ会員なので、会報紙に書いている投稿作への感想を寄せてくれている。それは有難いのだが、その感想にするりと上記のようなことをほのめかす。そこは大変に迷惑である。
中年の恋。男のほうがロマンチストなのか、性欲の問題なのか。好きだ、好きだった、などと言われることが、この年にしてもたまにあるので本当に驚いている。 それとも、そうしたことに関心を持てない私が枯れているのか。
冒頭に書いたように、老けたが、汚くは見えないように努力している。それは仕事をしているから、ということもあるし、何よりも自分に失望したくないからだ。私は美しいものがとても好きで、美術館や博物館に足を運び、目の保養を楽しんでいる。また、そう高価でないアクセサリーなどを時どき買い、身に着けることも楽しみのひとつだ。恋愛のためではない。そもそも結婚している女に言い寄るのは、それはもう、遊びと決まっている。
「恋したい」
そのように言われたこともある。よそでやってくれ。
「俺たち、あの頃付き合っていたら、どうなっていたかな」
知らん、何年前の話だ。そもそも私は友達としか思っていない。
「ずっと好きだった」
嘘だということを知っている。歌詞のパクリだろ。
中年になると、男は図図しくなるらしい。男女の友達付き合いは、若い頃のほうが楽にできていたような気がする。
少し前までは中年になったことで「おばさんって、楽ちん!」と、解放感に浸っていたけれど、どうも、そうでもないらしい。
繰り返すが、私は美しいものが好きなのだ。
おじさんとおばさんの恋、というかはっきり書いてしまうが
セックスシーンやいちゃいちゃなんて、大概美しくない!
美しいラブシーンを、見たり読んだりするのは好きである。
中年の恋、ダメとは言わないが、美しいものであって欲しい。
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