科学技術「原子力自動車」
【人類滅亡の序章】
1950年代末期。
原子力を使った様々な交通機関が研究されていた。
でも安全性や経済面から実用化されたものは、ほとんど無かった。
そんな中、自動車にも原子力エンジンを搭載しようと研究がされていた。
【原子力エンジン車】
この原子力エンジンを備えた車は、5車種研究されていた。
フォード・ニュークレオン
アーベル・シンメトリック
シムカ・フルグル
スチュードベーカー=パッカード・アストラル
フォード・シアトリティ XXI
この5車種が研究されていたが、いずれも販売されていない。
理由は、安全性、経済性の面から実用化には至らなかった。
【夢と希望の未来】
当時の車は、ガソリン、ディーゼル、電気、と色々な燃料機関があった。
でも、あえて原子力機関の物が開発されていった。
車、電車、船、飛行機。
その理由は、当時の原子力エネルギーに対する期待度が高すぎた為だった。
原子力には、素晴らしい未来があり、輝かしい世界を作れる。
そんな風潮が当時の世界にはあった。
そしてみんな、神が与えし夢と魔法のエネルギーと勘違いしていた。
そんな中、原子力自動車が開発されても、全く違和感がない時代だった。
では、実際に開発された原子力自動車とは、どんな物だったのか?
「フォード・ニュークレオン」
フォード社が1958年に設計図を書いて作った、コンセプトカー。
実際には、完成してなくて実物大の模型にとどまっている。
この車は、後部に原子炉を備えていていた。
車の使用用途に合わせて交換して使用する物だった。
寿命を終えた原子炉は、交換して使う形になっている。
でも、1回で8000㎞も走行できた。
当時ガソリンスタンドが、原子炉交換スタンドになると期待された。
「アーベル・シンメトリック」
アーベル・シンメトリック社が、デザインしたコンセプトカー。
フォード社の原子力エンジンに影響されて、1958年に発表した。
本当は、ディーゼル車として開発されていた物を急遽変更した。
でも、この時フランス政府が原子力開発を禁止した為、断念された。
完成すれば、40kwの大電力で走行できる予定だった。
ザクIIの電力が「951kW」だから車に40kwは、凄い電力になる。
「シムカ・フルグル」
フランスの自動車メーカー「シンカム」が1958年ににデザインした車。
車のデザインは、タイヤが見え難く宙に浮いているようになっている。
この車は、ジャイロセンサーが付いていて、2輪走行する車。
更に、音声ガイド、レーダーコントロール、等も装備される予定だった。
最高時速は、150㎞とされていて完成すれば当時としては、驚異的な速度。
でも、フランスの原子力開発禁止に伴い、断念された。
「スチュードベーカー=パッカード・アストラル」
アメリカ「スチュードベーカー=パッカード」社が1957年に制作した。
この車は、実際にに作られ販売店に展示されていた。
タイヤは1つしか無く、ジャイロセンサーにより1輪走行する。
乗り心地は、まるで宙に浮いている様な乗り心地だったらしい。
当時、各地の販売店に展示されていたが、近年行方が解らなくなっていた。
でも30年後に発見され、修復された。
そして今、スチュードベーカー博物館に展示されている。
「フォード・シアトリティ XXI」
フォードが開発した2代目の原子力エンジン車。
この車は、原子力発電でバッテリーに電気を充電させる車。
そしてバッテリーの電気で車を動かす。
この車には、当時としては、画期的な機能が満載されていた。
カーナビ、交換可能なバッテリー、6輪車、など凄い機能だった。
しかも、タイヤの6つの内、前輪の4つのタイヤは4輪駆動だった。
現在では、既に実用化されている機能になる。
当時の夢物語が今は現実になっているので、夢は絶対叶うと言う事です。
【感想】
今では、考えられない危険な事にチャレンジしていた時代だったのですね。
車に原子炉なんて、事故を起こした時、凄い事になりそうです。
こんな車が一般的になっていたら、街中で核爆発が起きていた事でしょう。
核弾頭が街中を走り回っているような状況ですからね。
原子力は、制御し続けないとメルトダウンして放射能をまき散らします。
電源OFFにすると、暴走し始めます。
考えただけでも、車に原子炉なんて恐ろしくてなりません。
当時の国民的感覚は、勘違いじゃ済まされない事だったのですね。
もしこのまま原子力車が販売されていたらと思うと、ゾッとします。