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どこで落としたか、覚えていない。
大切なハンカチ落とし落胆す見上げた空の月も悲しき
(TAISETSU NA HANKACHI OTOSHI RAKUTANSU MIAGETA SORA NO TSUKI MO KANASIKI)
コロナ期間でマスク負けして、絹のハンカチが手放せなく
なってしまった。
デパートで見つけた、美しくてなかなかのお値段だった
絹のハンカチ。
洗い替えも必要なので3枚買って、毎日手洗いしていた。
色違いを1枚ずつと、別の柄のを1枚。
色違いの2枚は特に気に入っていたのに、そのうちの1枚をどこかに落としてしまった。
時々、マスクの代わりに口元に当てて使っていて、
相棒みたいな戦友みたいなアイテムだったのだ。
失くしたこともがっかりだったけれど、どこかに一人きりで置いてきてしまったことが悲しかった。
どこで落としたか、覚えていない。
あるはずはないのにどうしても探すように下を見ながら
歩いていると、ふと月明かりに気づいて空を見上げた。
冬の初めの冴えた夜気のなか、ぽかりと浮かぶ満月。
今日はお月様も悲しく見える。
でも、仕方ない。また、新しい子を迎え入れよう。
帰り道、月明かりに照らされた影と一緒に家に帰った。
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