シニアは知見を「言語化・文字化」することが大切
これまでに多くのビジネスパーソンと面談をする機会をいただいてきた中で必ず挙がってくる共通の内容があります。それは自らの「強み」(アピールポイント)がよくわからないということです。
シニア世代はこれまで長きに亘って仕事をしてきた中で実に様々な経験をしてきたはずです。その中で独自の知識やノウハウを身につけてきたと思います。それらを毎日の業務の中で発揮してきたでしょう。にもかかわらず多くの方は自分の強みをはっきり自己認識できていないという事実があります。
自身の会社員時代を振り返って思うのは、その時その場で身につけた知識やスキルは、目の前の業務をやり遂げると一旦、頭の引き出しに格納したままにしてきたと思います。頭の引き出しには経験知や暗黙知として留まってはいるものの明確な「言語化」や「文字化」してこなかったがゆえに、いざ人に伝えようとすると漠としてよくわからないという感覚になるのだと思います。
ビジネスパーソンもシニア世代(50歳以上)になってくると役職定年や定年が見えてくるものです。自分が獲得した強みをアピールすることが必要になる機会が出てくるでしょう。早い時点で自身のアピールポイントを明らかにして「言語化」し「文字化」しておくことが重要だと考えます。
なぜなら、これからの職業人生後半に向けて自身の「ビジネス戦略」を考えておくことが必要だからです。時間が過ぎるにまかせておくのではなく、当然のように定年延長するというのでもなく、一度、立ち止まって後半戦をどう生きていくのかを考えることが大切だと考えます。それは自分の今後の人生の充実度を大きく左右することになるからです。
事業を営む企業に長年勤めてきたビジネスパーソンには、1つ1つの職場や現場でリアルな仕事を担当してきたと思います。その時その場面で自分が実感したさまざまな感情や感覚、醸成したノウハウはその人にとって非常に大切な財産になっているのはまちがいありません。
AIは過去のデータを読み込んで無感情で文字化するのに対し、人間はその時その場でのリアルな時空間から得た五感情報をもとに知識やノウハウ等の経験知や暗黙知を醸成していくものです。AIが作成した文章を読んでわかったと思うことと、実際の経験を通して解ったことでは、その後の決断時の確信度合いが違ってきます。 実際に経験するというのはすごいことなのです。
日々、各職場では個々の従業員が身につけた知識やノウハウが職場の時空間に常にあふれ返っているものです。業務はそのあふれている知識やノウハウを活用することで進捗していきます。しかしフロー状態にあるこれらの知識やノウハウは残すことを意識していないと業務の進捗と共に次々に過ぎ去っていきやがて記憶の中に埋没してしまいます。
重要なことは、その時々で「旬」な知識やノウハウを「言語化」し「文字化」しておくことです。この作業は会社が音頭をとってやってはくれません。面倒でも自分でやるしかないのです。やれば後になって自分が助かることになるのです。
とはいっても、その時々では多忙でそれどころではないというのも本音でしょう。したがって一度、まとまった時間を取って現在までに身につけたと思う知識やスキル、ノウハウの総棚卸し作業を行うことおすすめします。総棚卸しを行うことによって自分がアピールできる強みが発見できるからです。それは今後の人生後半をより充実させていく上での大きなセールスポイントとして活かすことができるからです。現時点での自分の「市場価値」を自覚し、さらに高めていくための「戦略」を考えることができるようになるからです。職業人生後半では自らの「市場価値」を最大限まで高め、それに見合う仕事に就いていただきたいと思います。
現代は正にあらゆる分野において多種多様なビジネスが展開され進展しています。それは同時に多種多様なビジネス課題が発生し、現場では新たな課題解決が常に取り組まれていることでもあります。そして、それらの課題解決を担うのは、実はこれまで数多くの実務経験を重ね、スタッフと共に現場で汗をかいてきたビジネスパーソン出身の専門家でありスペシャリストなのです。
私は長い間実務を担ってきたシニア世代のビジネスパーソンは正にここを狙うべきだと思うし、必ず狙えると考えています。定年延長を無検討なまま選択するのではなく、どうか自身の人生をより充実させるために今一度チャレンジャーになっていただきたいと思います。それぞれが社会から求められている多種多様な分野でのスペシャリストとして生涯現役で大いに活躍してもらいたいと思います。
(長文にもかかわらず最後まで読んでいただきありがとうございました!)