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ハリウッドの上質なエンタメから人生アップデートを学ぼう 2019年アカデミー作品賞受賞「GREEN BOOK」を1.5倍楽しむための手引き


2019年度のアカデミー作品賞を受賞した映画「グリーンブック

ひと言で言ってしまうと中年のおぢさん二人のロードムービー。

ん?地味?

と一瞬ひるむ。若いイケメンも美女もアクションSFXもないんかい?

アメリカNYカルチャーのベース

粗野なイタリア系移民の用心棒とインテリ黒人のピアニストがホームタウンNYを離れて、黒人差別の厳しい南部ツアーへ出発する、というのがストーリーの流れらしい。

私、鈴きのはイタリア系移民のマフィア映画「ゴッドファーザー」、同じくイタリア系移民出身のマドンナアリアナ・グランデのポップ・ミュージック、またNYのジャズミュージックをよく聴いて育つ。イタリアンカルチャーやジャズは、両親の世代である団塊ジュニアたちの定番?

※そうそう!マフィアとかヤクザの攻防・・って結構好きなんですよね。観るとアドレナリン出ます!指ツメたりと痛そうだし怖いんですが・・。うーん・・スリルとサスペンス・・にシビれる・・と言うべきか?(苦笑)

※日本映画でいうならば任侠映画ってカテゴライズですな。

→まさに真のリアルホラー!?「ゴッドファーザー」 キミは最後まで観れるかなっ?  なんて。。


世界屈指の大都市NYは、数年前に一度訪れた事がある。スピードの速いエキサイティングな街だった!!嫌いな人も多いと聞くが、私はハマった方の部類。


逆にとっても華やかじゃないかああ!

映画&音楽・・切っても切り離せないエンタメの新骨髄。

因みにこちらの映画「GREENBOOK」は実話だそうで。

私の好きなNYエンタメヒストリーを学べるのではないか?と俄然興味が出てきたわけなんですぜいい・・。

と更に。

個人の人生をクローズアップした上質な作品である事に惹かれた。

予告を観ると、ちょっとズレ感のある洒落た会話が展開されている。(こういうのを「ウィットの効いた粋な会話」と一般的に呼ぶのである。)

今回の「日刊かきあつめ」のテーマはズバリ! #新生活

ズッコケオヂサンが新しい目標にチャレンジ!今までとは打って変った新生活を成功させる・・まるでこの映画グリーンブックのストーリーみたい??

てことで。以下僭越ながら、鈴きのによる「GREENBOOK」解説をお楽しみ下さいませ。

※ 多少ネタバレあり!ご注意下さい。

映画「グリーンブック」の紹介

タイトルの「グリーンブック」は、黒人差別が蔓延しているアメリカ黒人の為の観光情報誌から名付けられている。(黒人という理由だけでトイレやホテルの利用制限があったというので、あまりに酷い人種差別に驚く。)

舞台は1960年代のNY。

トニー・リップは中学校すら卒業していない退役軍人。本名はイタリアネームバレロンガだが、誰もそう呼ばない。他人をチョロまかす事が得意で賭事には負けたことがなく、二枚舌から「リップス」というニックネームがついた。仲間が羨むほど美人な奥さんと二人の息子と共に、NYブロンクスのイタリア人街で貧しいながらも楽しく暮らしている。トニーの仕事は、NYを代表するエンタメ施設「コパカバーナ」の運転手。セレブリティを家まで送り届けるのがトニーの役割だ。

そんな中、コパカバーナの支配人が大物の客と揉め事を起こす。お店はクローズ状態に。トニーは失業してしまう。


新生活へ突入

狭いながらも楽しい我が家。しかし、幸せな生活は長くは続かないのか?家賃を払うのすらままならなくなる。

そこへカーネギーホール(なんと!!)の2階に住む天才黒人ピアニストドナルド・シャーリーから運転手兼用心棒の仕事の依頼がくる。黒人差別の激しい南部でのツアーを滞りなく実施したいのだとか。期間は2ヶ月で給料はとてもいい。トニーの機転を買われたのだ。愛する家族と離れるのは寂しいが、自分たちの生活を向上させるチャンスだとトニーは確信する。(シャーリーはソツなく、トニーの愛妻ドロレスにもきちんとご挨拶。仁義を切る。)

貧乏生活から一念発起。 新生活の成功へ。

一発逆転の賭けに転じるトニーと家族たち。

(エンドロールを観ると分かるのだが、後日トニーは「コパカバーナ」の支配人に抜擢される、という成功を収めるようだ。)

仲間には「1週間で黒人を殴ってクビになるよ!」とからかわれながらも、南部へ向けて出発する。

旅の始まりの車中から、トニーとシャーリーは険悪ムード。

「きゃーっ!すぐクビになりそう〜!友達よく分かってるわああ!」

いつも喧嘩しっぱなし。ハラハラさせられる。

トニーは学がないし粗野で、下品な行動も平気でしてしまう。ただの運転手で終わる気がないので反抗的だし・・。シャーリーの方はNYを代表するインテリといえどもかなりの変人ピアニスト。アメリカで流行している大衆文化には全く興味がない。アレサ・フランクリンも聴かないし、ケンタッキーフライドチキンも食べない。自室には自分のための玉座を作り、象牙を首からぶら下げる王様気取りの非常識人。愛妻家のトニーとは大違い、奥さんに逃げられてバツイチ。寂しい男ヤモメ真っただ中である。

道中勿論の如く、数々の難事件が起きる。徐々にシャーリーとトニーは自分に足りないものをお互いに認め、尊敬し合うようになっていく。

「メリーに首ったけ」「Mrダマー」で下世話コメディという一大ジャンルを築いたヒットメーカー、ピーター・ファレリー監督が、初めてシリアス映画にトライ。ファレリー監督が制作した渾身の脚本は、心にグッとくる粋な名場面の満載だ。

Change Your Earth!

シャーリーはなぜ、黒人にとって危険な南部ツアーになぜトライしようと思ったのか?バンドメンバーは言う。「才能だけじゃ足りないんだ。勇気が必要なんだ。ひとりの勇気が世界を変えるんだ。」このセリフにはモノの道理、真理に近いものを感じる。才能だけで人は感動するのだろうか?たぶん。実はちょっと足りない。何かを変えてくれなくちゃ!そういうワクワク感。人間の深層心理を表現したさすがのファレリー監督の人間観察の鋭さ。芸術と大衆の関係の妙を見事に言い当てている。

ホワイトハウスで演奏したこともあるくらい有名なピアニストであるシャーリー。本当はクラシックのピアニストになりたかったのだが、黒人には門戸が閉じられている。泣く泣くポピュラーに転向した経緯がある。シャーリーは黒人差別が著しい南部に行き、レボリューション(革命)を起こしたかったのかもしれない。

この南部ツアーの翌年。マーティー・ルーサー・キング牧師の黒人解放運動が始まる。シャーリーは、布石を打ったことになる。

I LOVE YOUの大切さ 家族愛にメロメロ・・涙目に

寂しい時は自分から動かなきゃ!」寂しんぼシャーリーにこう声をかけるトニー。彼なりの格言らしい。(おそらくこの戦法でトニーは、美人で人気者の奥さん(ドロレス)をクドくことに成功したのだろう。)

トニーの妻へのI LOVE YOU。ちょっとこっぱずかしい。しかし愛する家族がいるがこそ!頑張りが効くのだ。愛情表現に素直でいたいトニーの姿勢は、彼の流儀。成功哲学なのだろう。

イタリア系移民の方たちは家族愛をベースに、イタリアンコミュニティとしての結束が強い特徴を持つようだ。

淡白な現代人も増えている中、その家族愛の深さは新鮮に感じる。

「いいなあ〜ベタだけど羨ましい〜!」

この連帯感はイタリアンカルチャー伝統育成に大きく貢献してきたようだ。


ティファニーブルーとNYの歴史

映画の中では、NYを代表する宝石店ティファニーのブルーを連想させるあの独特のカラーが効果的に使用されている。ビビッドなミントグリーンに近いエメラルドブルーと表現すればいいだろうか?トニーとシャーリーがツアーで乗る車はまさにその色であるし、随所にそのブルーは印象的に画面に映る。

実はちょっとした豆知識なのだが。このティファニーブルーはアメリカを中心に生息する渡り鳥コマドリの生む卵の殻の色が由来だそうだ。

移民文化で形成されるアメリカというお国柄であるだけに、渡り鳥へのオマージュは、だからこそ故の「人種のるつぼ NewYork」のテーマカラーなのかもしれない。

渡り鳥さん いつでもいらっしゃいな。

まるでNYがそう話しかけてくれるような?

鮮やかなブルーは空の水色と重なり合って爽快だ。「GREENBOOK」の美術は、60年前の昔を舞台にしつつも、古臭くないスタイリッシュなイメージを打ち出すことに成功している。

ハリウッドはもう終わったのか? 最近の世論の反応

セクハラ汚職事件など、どちらかというとマイナスイメージの増えているハリウッド。

メガヒット出にくい昨今? 社会現象となるような流行を打ち出すまでには到達出来ず。世論の反応もちょっと冷たい。

ふと、とあるハリウッド往年スターの伝記が目に入る。そのタイトルには「ハリウッド最後の伝説」と書いてある・・。

ハリウッドって終わっちゃうんかい?最後って!? もはや過去形なのかいっ!?

思わずツッコミを入れたくなる。

勧善懲悪作品に飽きた後は、実験作を意欲的に挑戦する時代が到来した。観た後に後味が悪かったり、起承転結が分からなかったりと。お金返してくれ〜!と怒りたくなる作品も量産。。

その反省からか?どうも「初心に還ろう運動?」は存在するようなのだ。


グリーンブック制作チームの企画意図

ファレリー監督が初シリアス作品を作るに至って。

最近のファシズム政治(といってしまっていいのか?)に於いて。トランプ大統領のフェイクニュースやら差別発言が、まるでお笑い芸人がギャグを発するかのようにニュースとして流れ続けている。その影響からか差別社会へ逆行しているとのではないか?という指摘が多数。「マイノリティ差別が助長される場面が目立ってる。警鐘を鳴らしたかったんだ」と。ファレリー監督は理由を述べている。

アメリカン・ドリーム!的に突然!明日から大統領!の誕生は、社会分断だとか何だとかいっても実は予定不調和。まさかの驚愕の事実。(アメリカ合衆国はアメリカン・ドリーム大統領が法律的に認められている国なので何とも言いようがないが・・。)余談だが、情報の取捨選択や事実を見極める審美眼を育てる啓蒙活動を大切にしていくべきであろう・・。

愛息子が映画プロデューサー

トニーの実息ニック・バレロンガ。「グリーンブック」プロデュースに乗り出し、映画誕生が実現したそう。当初は真顔で「妻ドロレスへの愛」というタイトルにしよう」という提案をしたそうだが、ファレリー監督に「それじゃあベタベタで誰も観に来ないよ。」と却下されたとか。(マーケティング的にはべた過ぎてNGだったという事ですな・・。)

振り返るとワタクシ鈴きのはイタリアンカルチャーにとてもよく接している。(いや!そもそも論?総数の問題なのか?)絵画、洋服、建築、音楽・・数えたらきりがない。歴史や伝統を大切にするイタリア人は、高級ブランドの皮革製品を製作するかのように丁寧なFINISHを目指すからハズレがないというか・・? 

※ 故・映画評論家 淀川長治さんもそう言っていらっしゃる。イタリア系映画は丁寧に作られている事が多い。大体ハズレなし!なのだとか。

「グリーンブック」の視聴者を裏切らない起承転結と人間愛の描写。まるでハリウッド古典映画へのオマージュのようだ。登場人物のセリフの端々は、ハリウッド文化や哲学を表現。

もはや教祖の域??

娯楽エンターテイメントである映画からも人生哲学を学ぶことが可能だと言えそうだ。長い映画の歴史の中での紆余曲折。栄光や凋落

ハリウッドは数々の歴史を経てまた新しい金字塔を打ち立てるべくネクストステージへの準備を始めているのだ、おそらくきっと、MAYBEE・・。


バックグランドを知るともっと映画を楽しめる!

※※※念のため下記も補足説明させて頂きます。

グリーンブック出演者のマメ知識

トニー役のビゴ・モーテンセンの出演は、ファレリー監督の推薦で実現。業界関係者が仕事したい人気俳優の筆頭なのだとか。実はモーテンセン、イタリア系ではないデンマーク出身。「僕じゃ役不足だよ。トニーに似てないし。」と出演をしぶったそうだ。愛息子の説得に応じ、ぽっちゃりトニーのイメージ通り20kgも増量して役に挑んだ。「ロードオブザリング」のアラゴルン役で有名な俳優さんなのだが、あまりの変貌っぷり。気付くかしらん?

シャーリー役のマハーシャラ・アリ「ムーンライト」でアカデミー助演男優賞を受賞。たった24分という出演時間は、アカデミー賞の歴史上最短の受賞なのだとか。NY大学で演劇を学んだマハーシャラ。好感の持てる演技が好評だ。

グリーンブック 注目の演奏シーン

目玉の演奏シーンは、実際にジュリアード音楽院で学士を取得したクリス・バズワースが担当。(ピアノを弾く手元に注目!!)即興のジャズセッションシーンも魅せてくれる。高級名品であるピアノ「スタインベック」が登場し、期待を裏切らないエンターティナーとなっている。

おしまいに・・

ブレイクタイムにふらっと軽い気持ちで「グリーンブック」を観ることをレコメンドしたい。説教臭くない今作品は、知らず知らずのうちに円熟という言葉を学び、自分の人生を愛したくなるだろう。(カンタンにMY人生のアップデートできちゃうっ!?)一級のエンターテイメント作品として楽しめるだろう。

と。以上!!映画オタクが高じ(たまに某メジャー誌さんでも)映画評論を引き受ける「鈴きの彩子ジャーナル」でしたっ!! (今回もついつい長くなっちゃったな〜。編集さん泣かせだわん。ぐすん。ゴメンなさい・・読了ありがとうございます!お疲れ様でしたっっ!)

さてさて・・

このあんちょこで。ズバリ!1.5倍!映画「グリーンブック 」を楽しめるかなっ?

ぜひぜひ!鈴きのへ映画ライターお仕事の発注!も待ってまーすっ!! 

あれれっ??

なんだかワタクシ鈴きの彩子の宣伝になっちゃってますけど?? 汗 

しかも1.5倍って数字なんかいっ・・? 汗 汗

— Fin

出典:

◆ GREENBOOK 監督:ピーター・ファレリー 主演:ビゴ・モーテンセン マハーシャラ・アリ 製作:ドリームワークスピクチャーズ

◆ティファニーで朝食を 監督:ブレイク・エドワーズ 主演:オードリー・ヘプバーン  製作:パラマウント

◆淀川長治映画物語 淀川長治 KKベストセラーズ 

                          and so on ・・・

Textby: SuzukinoAyako

編集:円(えん)→

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