#NHK朝ドラ #半分、青い。 「初心にかえるるぅ!人生は、意外とずっと、青臭い」メガヒット脚本家北川悦吏子ワールドの魅力とは?
「おっはよう世の中。」という星野源の歌声で始まるNHK朝ドラ。
(NHK公式HP: https://www.nhk.or.jp/hanbunaoi/ )
バブル世代を代表するメガヒット脚本家 北川悦吏子さんが、意欲的に取り組んだNHK連続朝ドラマ「半分、青い」。2018年4月〜9月 月〜土 8:15〜 半年間オンエアされた。高視聴率を博したエンタテイメント要素てんこ盛の人気ドラマ&北川悦吏子ワールドの魅力を、広告業界出身の鈴きのが、時事や世相を意識しながら、紐解いていきたいと思う。
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ドラマの主な設定をまずはご紹介。
岐阜県の「フクロウ商店街の幼なじみチーム」をテーマにしたドラマ。
主人公の鈴愛(スズメ役:永野芽郁)と律(リツ役:佐藤健)は同じ日に生まれる。スズメは天真爛漫で勉強嫌い、リツは美少年で秀才というキャラクター設定がされている。スズメは幼少時に、左耳を失聴してしまう。リツは、そんなハンデを背負った幼なじみの擁護役を引き受ける。
スズメとリツがくっつきそうですれ違い続ける基本的なストーリーの流れを軸に、個性的なキャラクター達がこれでもかと登場し、連続朝ドラを盛り上げていくのである。
ドラマのイントロ(主題歌)は星野源さんが歌う「アイデア」。画面いっぱいに広がる空色の青空がキャンパスに見立てられている。そこからは、真っ白いキャンバスノートの1ページ目に初めて筆を入れていくドキドキワクワク感!を連想する。
誰もが何モノになれるかもという淡い期待感。(シニカル目線な私の社会人スタートも一応、そうであったか?)
人生とはドラマ有り。喜びあり成功あり。 挫折あり失敗あり。
誰しもがドラスティックな人生を辿っているのだと改めて思い知らされる。
「半分、青い」のドラマの中では、「生と死」も丁寧に描かれている。途中で登場人物が死んでしまう事もあるので、だんだん回を追うごとにイントロを聴くだけで涙が出そうになる。(伴奏の木琴の音がまたいいんですよー。)
にしても、だ? どうしてこんなにも、ドラマに感情移入してしまうのか?
(北川さんの脚本のワビサビが絶妙であるから、というのは言うまでもないのだが。)
スズメちゃんという主人公は、美人でコミュニケーション能力が高い。所謂ストリートスマートなアイドルだ。AKBのメンバーだったらきちんとセンターをとるだろう。漫画家になれるくらい努力家で優秀なのだが、学歴がないのは、ちょっとポイント。
左耳が聴こえないハンデキャップも、自らの機転と、幼馴染の美少年リツという王子様の助けによって切り抜けていく。
しかーし!そこは朝ドラのヒロインであるスズメちゃん。とんでもなくラッキーな展開になっても、なぜか、次には派手にすっ転ぶ。
ある種、美人で甘ったれでもある女の子になぜか引き込まれてしまうのは、そのジェットコースター的ドラマ展開に因るのだろう。
スズメちゃんが皆より美人で成功していて、人望もあって「わー!すごい!かっこいい!妬ましい!」と思っても、次のシーンで派手に失脚?するので「私の人生の方がまだマシだわ」と大抵の女性が思うのではないだろうか?
バブル世代を代表するキャリアウーマンの成功覇者 北川悦吏子さんは、基本的に「視聴者は出来る想定」でメッセージ発信をしているようだ。しかし、嫌味ではない。「姉さん勉強になります!」と思わず返答したいくらいだ。
更に、主人公スズメちゃんは、成功と挫折を両立してしまうため、嫌味に映らない。悲哀感すら漂う。手に届きそうで届かない成功。ある種の問題提起にもなっている。
一見、ツンデレ美人!強気女子の代表格!?ともとれるスズメちゃんだが、真顔でアホアホな発言をしているので思わず笑い転げてしまい、目が離せなくなる。大体、喋り方からして可笑しい。「オレ様」的に喋るではないかっ?まるで「王さま」気取り?の女の子スズメ。結構!奇天烈!! そのカワイイ外見とは裏腹にギャップが大きい。
女の子が「帝王教育」に心酔した結果?なのだろうか。スズメちゃんの定食屋さんを営むパパは少年漫画にハマっている設定なので、実は、パパの少年漫画の読み過ぎ?なのだろうか? (もしかしたら「スズメ流解釈のキャリアウーマン」という事なのかもしれない・・。)
この妙に不自然なセリフ回しを、堂々と自然に演技できる女優、永野さんは今後、超演技派女優に成長していくのだろう。
北川さんの脚本の台詞の特徴には「強い言葉」から発するパッション(情熱)があると思う。直球勝負の言葉選びが、ストレートにダイレクトに、心に残る。
たとえば。
スズメちゃんの最初の結婚は破綻してしまうのだが、離婚を切り出されるシーンでは、夫に「死んで欲しい」と詰め寄るセリフがある。まさに典型例といっていいだろう。「うーん!怖い!」心の深部をエグりとられる・・誰しも感じるだろう。常識人はそんな事言えない。人生を体当たりで生きているスズメならではの発言だ。(痛々しさが真に迫るのかもしれない。)
さてここで。ブレイクタイム企画。ドラマの魅力を伝えるべく勝手に私の好きなシーンを5つあげてみた。
【勝手にピックアップ!名シーンBEST5 】
5位 「やってもった・・」
有名少女漫画家の秋風羽織(役:豊川悦司)にスズメが住み込みで弟子入りした際、秋風先生の「ネーム原稿」を捨ててしまった疑いを持たれて大喧嘩になり、スズメは破門される。
しかし。なんと!!
無くしてしまったはずの原稿は、電子レンジの中から発見される。
秋風先生がカップラーメンを作る際に、間違えてカップ麺の代わりに原稿・・を入れてしまったらしい。すっかり忘れていたのだ。その事実に気づいた秋風先生が思わず口走るセリフ「やってもった・・」。(罪悪感からか?思わずスズメの口癖をマネしている。)
爆笑必至!
4位 「リツは私のものだ!」
スズメとリツの彼女(役:鈴木清)がキャットファイトを繰り広げるシーン。
リツはスズメの幼馴染であって彼女ではないのに「律は私のものだ!」と、彼女に食ってかかる。女同士取っ組み合いの喧嘩が始まってしまう。いやあーそんなこと言っちゃいけませんよ!そんなの自分勝手。友達の恋路は決して邪魔しちゃいけません。女の子同士のキャットファイトって怖い・・。ドラマの見せ場の一つであるだろう。結局、とばっちりを受けたリツくんは、彼女と別れることになってしまう。
女友達に彼女を紹介しちゃいけないのかっ!? と考えた視聴者は多かっただろうか? スズメちゃんだから起きる事故なのだろうか?
謎に独占欲丸出しのスズメ・・赤っ恥。スズメちゃんは本当に律くんのことが好き過ぎるんだなあと、周囲が再認識してしまうのであった。
3位 「失恋がつらすぎて・・涙が止まりません・・」
スズメ失恋! 涙が止まらなくて・・。
鼻血が止まらないのはまだしも、涙が止まらなくて「涙袋」付ける人っていますかっ!?マスクの間にティッシュを挟んで耐え忍ぶスズメ。もうおかし過ぎる!「涙袋」付眼帯をついに発明しちゃったりして?NHKさんの小道具美術さんに拍手!です。
秋風先生の罵倒が耳に刺さる。「ジジイが死んだか?」「失恋!それはいい!どんどんしろ!実体験が作品にいかされるんだ!」とかなんとか。センセー面白がっちゃってもう大変。ちゃんとスズメちゃんを慰めてあげて下さいよー。更に泣かせてどうするんですか?
画:Suzukino Ayako (※思わず自分でも描いてみた・・苦笑)
2位 「まあくんひどい・・」
スズメとまあくん(役:井上倫也)のデート。まあくんがスズメを振ってしまう事件。
フクロウ商店街の女友達からプレゼントされた「カエルがプリントされたワンピース」を着て意気揚々と花火デートに行くスズメ。
「スズメちゃんって金魚みたい〜ふらふら〜ってどこかに行っちゃいそう」とまあくんからは、意味深の感想を漏らされて速攻振られてしまう!まさかの展開!!
スズメはまあくんにすがりつく。しかし、非情にもまあくんには「触らないで!」とスズメを突き飛ばしてしまう。女の子なのにまたもや派手にすっ転ぶ。そして号泣。やっぱり赤っ恥。
スズメのデート服選びのソツのあり過ぎるセンスにも驚く。(普通どう考えてもカエルのワンピースはデートには向いていないと思う・・。カエルの柄がプリントされたワンピース。「カエル→帰る」ってこと? 女友達からのメッセージは「私たちを忘れないでね」だと思うのだが、スズメちゃん!意味が違—うよっ!岐阜県に帰りたかったのかなあ?)
プレイボーイでならすまあくんは面白がってスズメと付き合ってみようと思ったらしいが「だってスズメちゃんって。律のこと好き過ぎるんだもーん」と破局の経緯をリツに説明するのであった。リツはまだまだ遊びたいお年頃。スズメと付き合う気ゼロ。(幼馴染って恋愛対象にはなりにくいと思う・・。)
まあくん役の井上倫也さんが「嫌な奴ー!女の敵!」と、バズったのは言うまでもない・・。
1位 「あと5秒数えて」
リツが妻子のために、アメリカへ渡米しての再出発を決める。お別れの際に、スズメとリツは、友達同士のハグをする。スズメは律に話しかける。「私にあと5秒だけ下さい。」
「あと5秒数えて。ごおお、よん、さん、にい、いいーち!」
声に出して、ゆっくり数える。子どもみたいに。
暫く会えない。別れが辛い。
こんな2人が愛らしくて、いじらしくて涙が出る。
結局、リツは離婚することになってしまい帰国。スズメと新規事業を始めることになる。(律?それでよかったのか?勝ち組みの筈の人生じゃあ?ロボット工学研究はドコへいってしまったのか?と心配になる・・。笑 私は佐藤健さんファンなので、「たけるんるん〜❤︎」と萌ゆておりましたよ。)
やはり「スズメとリツの運命」であったのか?
こんな感じで、ドラマの中では次々と、事件が起きていく。
まっさかあ〜!と思いつつ、意外と予想外。そして意外と予想通りに物語は進んでいくのであった。
人生とは。案外ずっと、青臭い。
死ぬまで青春てんこ盛りなんだなあ〜と、バブル世代の代表者である北川先生から、教えられているようだ。
人生に於いての「キャンパスノート」は閉じられず、ずっと開かれたままだ。次のページをめくると、瑞々しくまた新しい、真っ白な世界がひろがっている。そんな思いに駆られる。
豪華脇役陣。
「秋風塾スカウトのきっかけは五平餅!」をの発明者 スズメの祖父役中村雅俊さん、スズメ母役の美人な松雪泰子さん、息子がノーベル賞を受賞すると信じて疑わない律の母役原田知世さん。律の父役 知的で穏やかな谷原章介さん。大手出版社を不倫が原因で辞める羽目になるピンクハウス大好き!の井川遥さん、今回もゲイがはまり役の志尊淳さん。書ききれないほどたくさん・・。
各々丁寧にキャラクター作りがされていて、出演者たち全員の心情の動きに思わず感情移入してしまう。
スズメちゃんとリツの設定は、現在「御歳47歳」という事になっているらしい。
ひと昔前の日本の歴史?を丁寧になぞって来たことになる。当時の時代背景を活かした美術考証や、大流行したアイドルソングのチェックも楽しい。
所謂、バブルが弾けた直後のロストジェネレーション世代である「スズメとリツ」。
深読みするならば。
2人の成功と挫折を繰り返していく過程を追う展開は、高度経済成長(バブル期)とは無縁で生きてきたロストジェネレーション層へのエールのようにも感じてしまう。
さすが!「人生100年時代到来!世相のトレンドセッター!」という解釈なのだろうか?人気のあまり?「半分、青い 続編」が延々、繰り返されてしまったりして・・。(なんて!!)
人生は案外長い、まだまだ続く。
線路は続くよ?どこまでも? 本来ならば「ずっと成功し続ける」のが「勝ち組み」の基本姿勢であるが、なかなかそう上手くもいかないのが、人生であり人間というものだ。「スズメとリツ」はいつか勝ち組みへと転身出来るのだろうか?
最後に。
秋風先生のモデルは、漫画家のくらもちふさ子さんを男性にしたような人というイメージングだったそう。そこに豊川悦司さんが、色眼鏡をかけたりして役柄を膨らませていったとか。所謂のステレオタイプ「THE ギョーカイ人」のイメージング?
どこぞやでお見かけしたことがあったような・・?(私ですら、ですが・・)とある女性誌担当の有名なギョーカイの方を思い出しましたよ。ん?なんか似てない?そのご本人を意識しているのかなあ?と思ったが、どうやら違うらしい・・。
秋風先生の「ガチ天才!」「変態?」「頭イっちゃってるキャラクター」は強烈で印象に残る。まるで、実在するかのリアリティさを醸し出している。
遂に! 秋風羽織!語録!特集ムック本も出版された!
そうそうこんな感じ www ↓
— 完 —
#NHK朝ドラとは #北川悦吏子ワールとは #バブル #ロストジェネレーション
#半分、青い #秋風羽織 #豊川悦司 #佐藤健 #永野芽郁 #井川遥 #とは
※追記:タイトルは「人生ループ」に引っ掛けて「文章ループ」にしてみました。言葉遊びです・・。えへへ。(るる → ルル → 縷縷 → 縷々・・ なんちゃってー♪ 「う」も同じく・・。んん? 親父ギャグですか? 失礼致しました・・。)
Text by: Suzukino Ayako
編集:円(えん)→
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