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世界一になる究極オリジナリティとは? 自分という存在はひとりだけ! 写真家ドキュメンタリー「SUKITA」から学べること
この顔が好き。と思う・・。
昨年、逝去したロックミュージシャン、デビッド・ボウイ。
初老にさしかかったボウイを撮影したポートレイト。
見かけたときに「ああ。いい表情だなあ」印象に残る。強いシンパシー?いや憧れ?というか恋心?(「恋をする」という表現が一番正しいのだろうか?)を感じた。
誰が撮影したのだろうと、気になっていたら。何と日本人の写真家鋤田正義さんだった。
このドキュメンタリー「SUKITA」は、鋤田カメラマンの一連の仕事を追っている。(公式HP: http://www.sukita-movie.com )
写真家 鋤田正義(すきた まさよし)は、1938年生まれ。写真学校を経て広告代理店大広へ入社。スチール、広告カメラマンとしてキャリアをスタート。ミュージシャン T・レックスに傾倒して単身渡英。代表作品は、デビッド・ボウイ、イギー・ポップ、YMO、寺山修司、是枝裕和など。まだ1ドル360円だった時代に、日本を脱出して世界で活躍することを選んだ人。その先陣を切る発想がとても斬新である。
ドキュメンタリーを観てみると、鋤田カメラマンの仕事への徹底したプロフェッショナルさ、真摯な姿勢を学ぶとれるだろう。 他にもインタビュー出演者に世界を舞台に活躍する著名人たち(坂本龍一、糸井重里、箭内道彦、布袋寅泰、ジム・ジャームッシュ、ポール・スミス、MIYMV I、リリー・フランキーなど)が多数登場。大変貴重でとても大切に拝見させて頂いた。
冒頭の写真のデビッド・ボウイは英国出身。中性的な美を打ち出したグラムロックの先駆者。史上最も影響力のあるアーティストのひとりだ。2016年に他界。世界的に有名であるイギリス人アーティスト、ボウイは、アジア人である鋤田カメラマンに、絶体的な信頼を寄せていたという。
「こんな魅力的なボウイ。見たことない!」世界中が鋤田を賛美した。
自分という稀有なオリジナリティ。
絶世の美女、美男子ですら、世の中にはゴマンと溢れている。
人より目立つなんて難しい?
美しい?醜い? 似たような顔のパーツ? 印象に残らない顔の人間たち。
しかし、本当は。自分という人間は世界にひとりしか存在していない。
突き詰めれば。自分というオリジナリティは唯一無二の個性だ。
どうやって引き出せるのだろうか?決して、他の追従を許さず卓越した自分だけのオリジナリティ。他者に対して負けないという強いアイデンティティ。
何を自分の長所と魅せるべきか? それを見極められた人がWINNERであり、それを理解した人が真の王者だ。
世界スターデビッド・ボウイの印象を鋤田さんはこう語る。「歳下だったし、そのへんの不良のお兄ちゃんみたいにみえた。実は、子供の頃の喧嘩が元で片目の瞳孔に障害があるんだけど、写真だと分からないんだよね。山本寛斎の服に興味を持ってくれたんだよ。」かなりさっぱりした感想だ。
そのへんのお兄ちゃん?から出発したデビッド・ボウイは、自分が作り上げたストーリーの主役(ジギー・スターダスト)を演じ、唯一無比の世界のトップアーティストに踊り出たのだ、という解釈が生まれるだろうか?
→昨年 @天王洲で行われたデビッド・ボウイ回顧展。( ※鈴きの撮影 )
マンパワー? っていうのかな?
自分に必要なのかな? そんなものいらなくないか?
人と違う必要があるのだろうか? 別に目立たなくても、人と同じでいいのかもしれない。その方が人間としては、むしろ正解なのかもしれない。
写真芸術表現という飽くなき追求を描くこのSUKITAドキュメンタリーは、イマ風を感じたい現代人(insutagramが大流行した昨今であるし・・)にとって、少々無骨に捉えられてしまうだろうか?
しかし、思う。
芸術の基本姿勢を教えてくれる。人間という魅力の切り取り方を教えてくれるだろう。 マンパワーがあるからこそ、自己のオリジナリティが確立しているから、ポートレイトが映えるのである。カメラマンは、被写体を映えさせるベく策略を練る演出家であり、その演出によって相乗効果が生まれていくのである。
と・・筆者鈴きのワタクシ自身がひよっこなもので・・。また蘊蓄やらご託やら並べちゃってさー!て。ビシバシツッコミ入れられそうだけれど・・。
70年代〜日本人が世界で活躍してきた歴史を辿ることが出来るこの「SUKITA」。アーティスト、アーティスト志望の日本人必見のドキュメンタリーであることは間違いない。
最後の締めくくり。世相を切り取ってみる。
斬新なことなんてもう殆ど残っていないのかもしれないし。殆どやり尽くしてしまった後なのかもしれないし。捉えにくい不可思議な時代のようにも見受けられる。
ネット文化が座席して、世界の価値観も大きく変化したあとだ。ネットベンチャーは、一気に大金を手にするミリオネアを多数生み出している。
ストックオプションやらビットコインやら。お金の猛者を目指す流行や一派が存在したり。
成功って何だろうか?
アイデアって何だろうか?
あるときたまたま。過去の産業革命やら大戦やらの歴史を振り返ってみた。世界は変化しているようでいても、人間の根本は、結局あまり変わっていないのかもしれない。
飽和状態の経済成長。
市場原理主義が崩壊し始めているのだろうか? 経済成長がなかなか見込まれない世界の市場は、イノベーション、サスティナブル、新しいエネルギー創出に、スポットライトをあてる機会を増やしている。凌ぎを削って頂上を目指していくより、お互い寛容、またはシェアを目指す価値感へとシフトし始めているのだ。(地球という環境が有限であるという危惧があるからともいえる。)
人類は競争社会よりも助け合いの精神を求めているのだろうか?
人間社会は成熟へと向かっているようだ。
追記(オマケ): 「写真芸術の鑑賞に関して」
恵比寿にある写真美術館(公式HP: https://topmuseum.jp )はテーマ毎に展示が変わり、アナログデジタルが混じった世界有数の写真作品を鑑賞出来る。上映される映画もアーティスティックな珍しい作品が多い。広々した造りの恵比寿ガーデンプレイスは、どことなくほっこり出来る素敵な空間でもある。お散歩がてら立ち寄られることをぜひオススメしたい。
#日刊かきあつめ #レビュー #SUKITA #DavidBowi
Text by: SuzukinoAyako
編集:円(えん)→
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