見出し画像

#186 面白半分日記43 ティーチングとコーチングとカウンセリングの極意

コーチングの講習に参加したチンパンジー先生である。

私が学生と面談する際、どういう視点で何に気遣いながら話しているかということを、受講者の皆さんに向けて話してください、と言われた。

えっ! 私は受講者なのに急に講師やるのかーい!
お金くれないのかーい!?

・・・と、思ったりはしなかった。

参考になるなら惜しまずに極意を披露しよう!
・・・・というほど高いスキルがあるわけもなく、ただ普通にやっていることを話した。

その講習は、
コーチングスキルとしての
アクノレッジメント(acknowledgement)がメインテーマだった。

アクノレッジメントとは、相手に現れている変化や違い、成長や成果にいち早く気づき、それを言語化して相手に伝えるという技術のことだ。

無理だ。そんなこと意識したことがない。

アクノレッジメントは「承認」と訳すこともあるが、褒めるとか称賛することではないという。

ご機嫌取りやお世辞を言うわけでもない。
辞書には次のような訳が載っていた。

【knowledge】
知識、認識、情報、熟知、精通、学識、見聞
発音は微妙だ。ナレッジ、ノゥレッジ、ノァリッヂ
【acknowledgement】
承認、認容、自認、白状、受け取りの通知

実際には、相手の承認欲求を満たすことが目的ではなく
事実を事実として認める」という説明を受けたが、なんとなくぼんやりした理解だった。

意訳すると「五官を駆使して受け取った相手の情報を相手に伝える
といった感じだろうか。

視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚。
前の2つはいいとして、残りの3つはなんか違うような・・・・

うまく伝えるだけの技量が私にあるとは思えない。

面談や相談で学生の言動をどう読み取っているかという話をした。

一番わかりやすい例は、微妙な表情の変化や目の動きだ。

不安げであるとか、動揺している、顔が曇っている、楽しそうにしている、笑顔が絶えない、何かに気付いたような目をしている・・・・

そうした変化をとらえて、言葉になっていない相手の心の中を読もうとして、言葉がけを通じて、相手の言葉を引き出したり、時には共感したり、揺さぶりをかけたり、いろんなことをしている。

でも、「事実を事実として認める」という考え方に従って、それを直球で相手に投げたらどうなるのだろう。

直に伝えてしまうと、かえってよくないことが起こることもありそうだ。

五官を使うと言っても
「あなたは臭い」
「君は美味しいな」
などとやったら、ハラスメントだろう。

アクノレッジメントはコーチングスキルのひとつと言われているそうだが、コーチングを学ぶまで、そんな用語も知らなかった。

でも、職業柄、無意識にいろんな観察をしていたわけだ。

感情労働」と呼ばれる職種に就いている人なら、ほとんどの人が相手を観察しながら対応し、時に喜びを感じ、時にストレスを受けながら、いろんな対応をしているはずだ。

ビジネス・スキルを教える授業では、
非言語コミュニケーション(non-verbal communication)
の重要性は話している。

高度な技術だと意識したことはないが、自分のやっていることにコーチが意味付けしてくれたおかげで「なるほどね」と思う部分が多かった。

しかし、実際のコーチングの場面では、そうした技術をどう使うかはコーチに委ねられているという。

実際のところ、アクノレッジの機会を逃したり見失っていることが多いという。

意識を集中させて相手を注意深く観察しないと、相手の表情も視線も言葉もどんどん流れていく。

確かにいろんな情報を見落としているかもしれない。

さらに、相手を観察している自分が、どんなことに気付き、どう感じ、何を伝えるかということを考えるということは、自分にも目を向けなければならない高度な技術だ。

気付きのセンサーの感度も問われる。

だからコーチはそうした技術で飯を食っているわけだが、よく考えてみれば、ティーチングにもカウンセリングにも、インストラクトの場面でも必要な技術だと思うのである。

相手の存在とその価値について気が付いたことを上手く伝えることがポイントなのだろう。

コーチは言った。

「何も言わなくたって、相手に笑顔を見せる、笑い声で反応するのもアクノレッジです。

コーチングは、どんな言葉で話すかは大切なんですけど、相手の変化や状況に気付かないまま話していると、結果的に何も伝わらないんです」

難しい・・・・

確かに、私たちは言葉にせずとも、お互いに相手の表情や身振り手振り、語気、息づかいを感じ取り、それを無意識下で高速に処理しながら会話している。

「あっ、チンパンジー先生がニヤニヤしてご機嫌だぞ!」
学生は私のことをそう見ているのかもしれない。

AIの機能や精度がより高度化すれば、表情や脈拍、血圧を感知しながら最適解としてのアクノレッジができるようになるのだろうか。