どれだけお金を稼いでも幸せにはなれない?実験でわかった、僕らは他と比べずにはいられない。
お金を有り余るほど稼いでいても、幸せそうな顔をしている人は少なかったり、むしろ不幸であったりします。
なにもわたしはお金が幸せを遠ざけるという話をしたいわけではないのです。
今回テーマとして取り上げたいのは「人はあらゆることを相対的に見て決める」ということです。
あらゆる物事は相対的で決まるということは、私が話すまでもなく、すでに経済学者ロバート・フランクがこう指摘しています。
私たちの社会生活は絶対的にいい立場ではなくて、相対的にいい立場を選ぶことで成り立っている。
1960年代にはこのことは知られていて、歴史学者でもあるガリー・ランシマンによれば「労働者の給料アップの動機は絶対的なものではなく、相対的な不公平感である」と述べています。
例えば、ある労働者(鉱員、鉄道員)の待遇が突然よくなると、他の労働者(機械工、左官)も追随して待遇改善の要求を突き付けてくる、というようなものです。
労働者にとって絶対的な悪い職場というものは無くて、相対的にみて悪い職場という判断基準を持っていることがわかります。
これは稼いだお金に関しても同様なことが言えるでしょう。
いくら給料のいい仕事につけたとしても、周りが同程度もしくはそれ以上の額を稼ぎ出していたら、今ある仕事に満足することはできなくなるでしょう。
逆に低賃金であっても、周りが同程度もしくはそれよりも低い金額であれば現状に不満を持つことは少ないはずです。
これらの例からもわかるように、私たちの判断はよくも悪くも相対的に決まっています。
この「相対的な判断」を実験にて示してくれた方がいますので、実験の内容と合わせて紹介したいと思います。
実験内容
組織的な行動を研究しているハーバードビジネススクールのマックス・ベイザー氏による実験です。
ベイザー氏は参加した学生たち32名を2つのグループに分け、次に述べる一定期間の仕事を引き受けるかどうするか検証したものになっています。
提示した条件は以下のものになっています。
1 A社はあなたに年俸500万円を払うという。この会社では新卒者すべてに500万円の年俸を支払うことで知られている。(この後、仕事内容についての説明が行われる)
2 B社はあなたに年俸600万円を支払うという。この会社では新卒者に650万円の年俸を払うことで知られている。(この後、仕事内容についての説明が行われる。仕事内容はA社と同じ)
すると面白い結果が出ました。
参加した32名の学生のうち、22名がA社を選び、B社を選んだのは10名だけだったのです。
これは一目見ると不合理な選択をしてるように見えます。
明らかにB社の方が収入は高いはずなのに、新卒者の給料よりも低いという理由で、わざわざ収入の低いA社を選んだことになります。
たしかに、B社に入れば、恐らく新卒者よりも低いポジションに配置されるでしょうから、その点を考慮しての選択とも取れます。
しかし、その判断基準には間違いなく「新卒者よりも給料が低い」という、他者を基準とした相対的な判断が採用されています。
この相対的な見方があるからこそ、どれだけお金を稼いだとしても満足ができなかったり、不幸になり続けたりするのかもしれませんね。
まとめ
今回は「良し悪しは相対的に決まる」というお話をしてきました。
この相対的思考はあらゆる場面で垣間見ることができます。
例えば、商品の説明でも、単品を見せられるだけでは価格のお得感はなにも感じませんが、最初に高い品物を見せられることで、相対的に安く見えるよう演出できます。
世の中に善悪はない、とはよく言われますが、それは絶対的なお話であり、何かと比べて見た場合は善悪が生まれるのです。
もし何かの議論で物事の善悪を決める場面があれば、それは絶対的なことなのか、それとも相対的に見たものなのかをはっきりさせたほうがいいでしょうね。
両者の区別をつけなくては延々と不毛な話し合いに終わってしまいますから。
そして、今回の実験からは「給料の良し悪し」さえも相対的にみて決まるということが示されましたね。
もし、良い給料の職を探そうとするなら、あまり周りは見ないほうがいいかもしれません。周囲がおなじ額、もしくはそれ以上稼いでいたとしたら自分がいい給料の職についているという感覚が損なわれます。
いくら稼いでも稼いでも、周囲が同じ額を稼いでいてはまったく裕福であるとは感じられないですよね。
もしかしたら、これがいくら稼いでも幸せにはなれない原因なのかもしれません。
こうしたラットレースから抜け出すにはいったいどうすればいいのでしょうか?
またどこかで、その解決策についても触れていきたいですね。
今回のテーマは「物事の良し悪しは相対的に決まる」でした。
それではまた次回にお会いしましょう。
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