野田洋次郎がアメリカで学ばなかったこと
RADWIMPSがバカ発見器になった話。
昔、Nationalismを「国粋主義」って訳すことがあったと思います。でなければ、私は勘違いして国粋主義だと思っていた。正確には民族主義。その後、Patriotismという単語を勉強したら「愛国心/愛国主義」という意味だった。
国粋主義と愛国主義の違いがぴんとこなくて、そのままにして忘れてしまっていたんですが、もう少し大人になって、サミュエル・アダムスというアメリカのビールを飲んだ時にラベルにBrewer Patriotと書いてあったのをみつけました。直訳すると「ビール醸造家にして愛国者」。誰だこいつ?と思って、サミュエル・アダムスのことを調べたら、ビール醸造所で働いていたこともあったようですが、歴史上の業績は植民地時代にアメリカ独立革命を主張・主導した人だった。それでまた変だな、と思ったんです。植民地なんだから、まだ愛「国」じゃないですよね。
… ここまで考えて、言葉の意味がやっと理解できた。サミュエル・アダムスの歴史的評価は色々のようですが、Patriotism/Patriot(愛国心/愛国者)の意味のはなしだけします。
Patriotism / 理想の国を作るために命懸けで戦争までしてつくった国と理想を愛する気持ち
…アメリカ人にとっては、おおまかにそんな意味だと思われます。こう考えると、傍からみていて気持ち悪いくらいに、アメリカ人がストレートに愛国心を表明する理由が説明できます。世代によって濃淡はあるものの、公立の小学校でも愛国心の重要性については色々おそわるようですし。
一方で、民族主義のほうは、
Nationalism / **人として生まれたからには**人として生ることが、理屈抜きで重要だから必要とあらば命を懸けるべきだ
てな考え方ですから違いは、理想の有無。
RADWIMPSのHINOMARUが炎上しちゃったんですが、こう考えてみると、愛国心と民族主義の区別がついてなかったのが原因だと思います。
作詞・作曲の野田洋次郎は10歳までアメリカで過ごしたらしく、ストレートな愛国心は普通のことで、自分の国を誇らしいと思うべきだという考え方を吸収したものの、(アメリカ的な)愛国心とチンケな民族主義の違いを学習しないまま大人になってしまったのかな? という印象です。
歌詞をみても、「誇り」「決意」はいいとしても、「御霊」のおかげで日本人が「挫け」ないのか「挫け」ない主体が「御霊」なのか判然としません。
血縁と歴史のつながりのかたまりの中心に、漫然と霊だのオカルト的なものをすえたような歌詞。
要は、この歌が不愉快なのは、軍歌だからではありません。(つーか、日本人の誇りがきちんと歌になっているのなら軍歌的だって構わない。) この歌で愛国心として描かれる"ニッポン偉い"が、理想/理念一切なしで、"根性のみ"になっていてその根性の源泉が"オカルト"なので大変不愉快なのです。
日本国の国民はそんなに愚かではありません。 知的にも精神的にも人類に貢献できるという実感と誇りがあるから"ニッポン偉い"というのが、今の日本国民の愛国心のベースであるはずです。ふざけるな、と言いたい。
また、小田嶋隆が指摘しているように、古語の使い方ががちゃがちゃだし、自分の魂のことを"御"霊とかいって尊敬しちゃっていて、日本を愛している人間には考えられないような、日本語の過ちがみられます。"ニッポン偉い"風のなにかになら何にでもひっかかるバカ を発見する装置を世の中にまいたのか?と勘繰りたくなりました。
「前前前世」は、君のためなら宇宙を作りなおす というこれ以上ないような壮大なスケールの普遍的なラブソングだったのに、どうしちゃったんでしょうか? まあ、全部彼のせいにするのは酷なのかもしれません。
日本で、国民の誇り+理想/理念=愛国心 って教えないし。
これについては、誰のせいとか言い始めても建設的な話にならないので、
「国民の誇り+理想/理念=愛国心」って繰り返して言い続けるしかないんだろうなと思っていますけれども。
#Radwimps #HINOMARU #愛国心