【ムスメ日記③】W杯クロアチア戦
2022年12月6日。
この春からムスメは思うところがあって海外で暮らすことになるらしい。自分で考えた道なら、進めばいい。お金も貯めなくてはと、年末年始はバイト漬けになるようだ。
受験のときからずっとコロナ禍。大学に入学したのに授業もリモートでほぼ家にいたムスメ。僕もずっと自宅仕事で、ムスメとは部屋がとなりなので、なんだかムスメとシェアハウスしてるような、寮生活してるような。そんな、当たり前のように家にいたムスメが、春から海外暮らしで、家にいなくなると思うと、それまで少しでも一緒にいる時間を過ごそうと、家族で外食を予定するのだが、大学生のムスメはバイトや友達との約束があったり、映画だったり観劇だったり、オヤジより多忙。結局、ムスメ抜きで息子と鬼、3人の食事になる。ま、仕方ない。
そんな矢先、バイトから帰宅したムスメが言う。近所のカフェでクロアチア戦を大画面でみんなで見れるけど、どう?と。2人で行くことにした。ご近所の僕の飲み仲間女子も誘いたいところだが、さすがに我慢したw
夜11時、外は冷たい雨が降っていた。ダウンジャケットなど着込んで傘をさして歩いて向かう。
持ち込み可につき、途中コンビニでお菓子などを買い込む。ムスメがレジで自分の財布を出すが、もちろんオヤジのおごり。「いいの?」ってムスメの言葉がなんだか白々しいけど新鮮。2人でコンビニなんて来るの初めてなので。
15分ほど歩いて目的のカフェに入ると、大画面のスクリーンに試合前のテレビ中継が。各自持ち込んだお菓子をつまみにお店のクラフトビールを飲みながらキックオフを待つ。徐々に混み合ってきて、打ち解けたムードに。ふとムスメを見ると、オヤジそっちのけで見知らぬ隣りにいたカップルと普通に会話していた。いつの間にそんな社交性を覚えたのだろう。
前半、日本が1点先取し、異常に盛り上がった。ムスメと目を合わせて喜んだ。となりの見知らぬお兄さんともハイタッチしたり。大してサッカーになんか興味がなかったオヤジとムスメ。なんだか不思議な時間だ。
結果的に、試合は負け、店内になんとも言えない重たい空気が流れた。来るときと同じ、雨の夜道をムスメと肩を落として帰った。会話もなく、ただただ歩いた。
しかし今回のサッカーW杯は、コロナ禍で辛かった我々に夢と希望をくれた。たくさんの良い夢を見させてくれた。いろんな意味で、見たことがない景色も、見ることができた。
そう。ムスメとこうして近所の夜道を歩く、こんな景色も、オヤジにしてみたら見たことのない景色。森保ジャパンのおかげで見ることができた景色。雨だけど、寒いけど、心はほっこりしていた。