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不動産人ができる起業創業支援の形 

この話をさせて頂くことの経緯
私が発起人となって運営しているイノベーションスナックみらぼでは、毎日テーマやコンテンツを用意して開店しております。時には、ビジネスの深掘りを助ける壁打ちや、ビジネスモデルキャンバスなどのフレームワークを使って、ビジネスの整理のお手伝い。さらには地域のイノベーターをお呼びして、夢を語ってもらい、その夢を皆んなで共有する場を設けたりしております。
そんな中、私が発起人のこの場所で、自分の本業(不動産)の話をすることは・・・いやらしくない?なんて思っていたのも事実で、この場所では裏方に徹することを心に決めておりました。

しかし、運営して1年半が経ち、テナント(店舗や事務所などの事業用不動産の事と定義します)を設けてビジネスされる方が多いことに気づきました。そして住居とは違った、専門的な知識が必要なテナントは、起業創業の準備段階で、事業計画と同じくらい重要度が高く、しっかりと考えて頂くことが起業創業支援として必要なことではないかと改めて感じました。

つまり、私が経験してきた本業部分の話をすることこそ、起業創業支援として、“必要”ではないかと思い直し、先日イノベーションスナックみらぼで「事業用物件専門の不動産人が話す、正しい店舗・事務所の探して借りる方法とは?」をテーマに話を致しました。

その時に話をしたことをここにまとめたいと思います。
※あくまで個人的感想や見解を述べているものであって、法律的な解釈や正確な表現等は誤りがある可能性があることをご承知ください。


不動産屋さんの職種の整理


不動産を扱う業種といっても、実は様々なのです。

不動産職種の全体像

まずは大きく分けて、売買と賃貸があります。さらに、売買の中でも仲介と分譲があります。賃貸も仲介専門の人と管理専門の人など分かれます。

業界になじみがない方が「不動産屋」といって、一くくりになるのですが、実は仕事内容も専門性も全く異なるのです。しかし、こと“テナント”(事業用)となると、地場の不動産会社では、“賃貸”という一くくりで兼任されている会社がほとんどだという現実があります。専門的な知識が必要な“テナント”を扱う方なのにです。

まずはこのことを覚えてください。

住宅(居住用)とテナント(事業用)の契約の違い


住宅の場合、貸し手側は事業者・借り手側は消費者となり、消費者保護の観点から借り手側が保護される慣習となっております。その為、貸し手側の正当な事由がないと契約の解約をできないなどと一定のハードルがあることは、借り手側を保護するためにあります。この理由もよくわかりますね。
一方で、テナント(事業用)の場合はどうなるか?
貸し手側は事業者・借り手側も“事業者”となります。・・・つまり消費者ではないのです。
そう・・『自己責任』です。(借り手が法人であっても個人であっても事業者です)

もう一度言います。
「消費者ではなく“事業者” その心構えが必要です」

テナントの見つけ方


さて、ここで問題です。次のうちテナント情報の鮮度が高い情報が入るのはどれでしょうか?

①     不動産会社に行く
②     NET(アットホーム等)
③     自分の脚で街を回る

正解は・・・

「全部」です!!  WHY??

不動産取引の図

こちらが業界で多く取引されているケースの構造です。
この場合、どこで鮮度が高い情報をキャッチできるでしょうか?

そうです。
図で言う“不動産会社A”なのです

物件資料の見方


現場では募集図面をお見せしながら解説させて頂きましたが・・・他社様のものを事例で紹介させて頂きましたので、ここでは募集図面をお見せしないで、テキストでご案内します。

① 保証金と敷金の違い

ん~正直違いはないんじゃない!(笑) 退去するときに両方返ってくるし。
住宅用の賃貸の場合は「敷金」、テナントの場合は「保証金」と言っているケースが多いかも知れません。

②礼金とは?

契約時に大家さんにお支払いするお礼金という慣習なもんです。恐らく・・

③ 保証金償却とは?

よく募集図面の備考欄とかに記載があります。これは退去時に保証金から返ってこないお金を表しています。例えば、保証金償却20%と記載があったら、入居時に預入した保証金総額から20%を差し引くお金です。保証金が60万円差し入れているとしたら、60万円×20%として、12万円が差し引かれるお金となります。これも不動産の慣習ですね。

④管理費と共益費の違い

ん~正直違いはないんじゃない!(笑) 両方とも大家さんに支払うものだし。住宅用の賃貸の場合は「管理費」、テナントの場合は「共益費」と言っているケースが多いかも知れません。

⑤賃料と共益費(管理費)って消費税が掛かるの?

一般的には掛かります。テナントの場合は、金額の大小にかかわらず掛かります。貸地とか、貸す時の状態によって、消費税が掛かるのか?掛からないのか?が決まります。
またよくある質問として、大家さんが納税義務者かどうかで変わるか?って質問をもらいますが、答えは契約上「関係ない」が正解です。

⑥設備品?残置品?

いよいよ、よくわからない呪文になってきましたね。消費税の納税義務者って何よ?から怪しくなってきていると思いますが、ついてきてくださいね(笑)

  • 設備品・・・大家さんが物件を貸す時に、修理や交換の責任と負担を「持って対応する」もの

  • 残置物・・・大家さんが物件を貸す時に、修理や交換の責任を持たず、借り手側の責任と負担で対応するもの です。

つまり、残置物は借りた瞬間からあなたが面倒を見るものになってきます。例えば、エアコンや自動ドア、トイレやキッチンなどがテナントにあった場合に、入居中の修理や交換が発生した時は借り手側が面倒を見ることになります。

えっ!?それなら残置物があるものは借りない方がいい!ってなるかと思いますが、実は「居抜き」の場合は、ほとんどが残置物であったりします。その他、先ほどの自動ドアなども面倒がみれる範囲であれば、自動ドアの方がお客様的にも便利なケースが多いいので、ケーズバイケースと言えます。この点はバランスをみてご検討ください。

⑦ 備考は大事!よくみてね!

よく書いてあるケースとしては「看板料」とか「ゴミ処分費」などです。毎月掛かるコストが家賃と共益費以外にも掛かるケースがありますので、よく見るようにしてください。そして疑問があった場合は、必ず質問をして理解をすることが大切です。

⑧原状回復方法と解約予告期間

例題でお見せした募集図面では、この2つの表記がなかったのですが・・この2つは必ず確認するようにしてください。

※原状回復方法とは、退去するときに「どの状態」で大家さんにお返しするのか。先ほどの居抜き物件の場合などは建具や内装、エアコンなどがついていますが、先ほどご説明した通り「残置物」のケースが多く、居抜きの前の状態がスケルトンであれば、スケルトンまで原状回復を行い大家さんに返還する義務が生じます。また解約予告期間も湘南エリアでは3~6ヶ月が多く、住宅用と大きく異なりますので、注意が必要です。さらに、住宅用と違う点は“退去する日までに原状回復を完了させる必要がある”ことです。つまり、工事期間中も加味して退去期間を決めなければなりません。

物件の見方(現地)

あくまで私目線ですが、現地で必ず確認をする部分をご説明します。

①インフラの確認 

ご自身がやられる業種によって必要なインフラが十分に備わっているか?
電気容量、ガスの容量、上下水の容量、排煙ダクトルート、耐荷重など

インフラの確認

②消防設備の確認 

不動産会社でも知らない人が多いいです。トラブル率高め。
レイアウト(パーテーションを区切る場合に)、建物の規模、前テナントの確認などが必要です。

一つ例を上げます。
4F建てのマンションで、1Fが美容室・2F~4Fが住居のマンションがありました。私がご案内していた業種はいわゆるコンビニでしたが、なんと1Fのテナントの業種が変わり、建物の消防用途が変わり全戸に「自動火災報知設備」を設置する必要が出てしまいました。自動火災報知設備を全戸に設置するには、工事費用で数百万円と掛かります。あいにく、私はご契約前にこの事実が判明したことで、契約間に工事も含めた諸条件をすり合わせてして、合意したことで、自動火災報知設備の設置工事の費用負担を明確になり、この取引は揉めることなく締結できました。しかし、ご契約後あるいは工事着手後に、このように必要な工事が判明した場合の多くは“誰が負担”するかなど、揉めることが多く注意が必要です。

消防の確認

③業種によって必要な手続き 

一部の業種を抜粋してご紹介します
保健所や消防がどの業態でも必要になってきます。
保健所の営業許可は、飲食店はもちろん、理容室やペットサロンも必要となります。消防は「業種」だけでなく入居する「建物の規模」によっても異なります。使用開始届や防火管理者専任届や消防計画などが必要になることもあります。

業種ごとの必要な手続き 一部抜粋して紹介

④必要なことだが見落としがち

法令に引っかからないけど必ずチェック
看板の設置位置や設置可否、看板費用。エアコンの室外機置場、ゴミ置場や捨て方、営業時間は入居テナントによって制限があることもありますので、必ずチェックしてください。

必要なことだが見落としガチ

⑤見落としNG

用途地域・・・実は賃貸系の不動産会社がわかっていない1位です。
都市計画で決まっている地域には、飲食店、ペットサロンなど・・NGの場所も。

見落としNG

物件の落とし穴


結局関わるのは、 「人」 

そう・・ “大家さん” と “不動産会社” と自分

物件の管理は、大家さんが直接しているのか?
それとも管理会社がいるのか?
大家さんがどんな人か?  
協力的? オーナー風を吹かす? 昭和の大家さん?

不動産取引の図

不動産会社A(大家側)
不動産会社B(借り手側)
どちらも信頼できる人?

大家さん、不動産会社さん、ご自分の関係図

結局・・
「事業者ご自身」が大家さんと管理会社をファンに味方につけられか?

  • 『消防』 も 絶対に忘れずに  ※ガチの落とし穴

  • 『原状回復方法』も 絶対に忘れずに! ※ガチ沼る


まとめ

まとめ① 物件を探す時
まとめ② 物件を見るポイント
まとめ③ 最後に・・

以上です!長文をお読みいただきありがとうございました!
次回は「未経験者が失敗する開店準備編」をやります~♪

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