「野蛮なやつら」(ドン・ウィンズロウ著、角川文庫刊)
男2人、女1人の破天荒な仲良し3人組が、カリフォルニアのラグーナ・ビーチのマリファナ取引で荒稼ぎしていたところ、メキシコの麻薬組織が一方的に「関係」を求めてきて状況が一変し、男2人は勝負に出る。
物語のディテールは、ウィンズロウの他の作品とかなり被る部分もあるが、重ね読みによってかえって理解が深まるような感覚があるので、あまり気にならない。そういう仔細にこだわるよりも、性格も行状もまったく正反対の親友2人が、あらゆる手を使って麻薬組織を翻弄する姿が面白い。2人のやり取りも、1人が「膝に載せたグロックと床に置いた散弾銃、そしてベルトに挿した接近戦用のケイバー・ナイフのために、両手をあけておきたい」のに対し、「ベンはそれを過剰な武装だと考える」といった具合だ。
本作の文体は、「犬の力」や「ザ・カルテル」と大きく異なりかなりくだけているので読者の好き嫌いが分かれるところだろう。しかし、単にくだけた文体で書かれているだけでなく、改行など紙面の使い方そのものが独特。これはひとつの「実験」と言ってもいいのだろうし、いろいろな意味で、ウィンズロウ作品は読者を飽きさせない。