不動産あれこれ第13回 2850万の中古マンションに2000万で指値、はしなかった件
自宅から最寄り駅へ行くまでの途中にライオンズマンションがあり、立地が良いので以前から気になっていたのだが、世帯数が50戸と小さめだったことからか、なかなか売りに出る物件が無い様子だった。
ところが先日、ついにこのライオンズマンションの1室が売りに出ているのを発見した。きっかけは、ポストに投函されていた不動産屋のチラシである。価格は2850万円、間取りは3LDKである。
ちょうど、いくつかの物件を紹介してもらっていた不動産屋があったことから、「このライオンズマンションを一度内見してみたいのですが…」と控えめに聞いてみると、手配しますとのこと。正直なところ、価格が価格なので実際に購入する意思はあまり無い。気になっていたマンションなので部屋を見てみたい、というのが希望であり、その旨は不動産屋にも伝えてあった。
さて、アレクサと一緒に内見へ行ってみると、非常に良い印象であった。せっかくなのでもう1件いかがですか？と言われたので、同じく3000万近い3LDKマンションも内見してみたが、地元では有名なマンションである割にはこちらはあまり印象が良くなかった。
好印象だった2850万のライオンズマンションについて、売却理由と値下げ幅の可能性について問うたところ、自己都合による転居のため両親に住んでもらっていたが、両親が他界。その後、賃貸に出していたがこちらも退去となり、持っていてもしょうがないので売りに出すことにしたという。値下げ幅の具体的な数字は出なかったが、そこそこ大きな額でも通る可能性がある、というのが不動産屋の見解であった。
そして、「おいくらなら購入可能性がありますか？」と言うのである。
物件購入に際し、いくらくらいが妥当な金額と言えるか、については議論のあるところである。私は一つの数式を参考にしている。それは、その物件と同じくらいのスペック（駅からの近さ、間取り、広さなどなど）を賃貸で借りる場合に月額いくらとなるのかを調べ、その月額賃料の10年分をその物件が持っている実質的な価値として考えてみる、というものである。
この数式を今回のライオンズマンションに当てはめてみると、賃貸で借りるならおそらく月13.5万～15万くらいであろう。その10年分となると、おおむね1600万から1800万である。物件価格より実に1000万円も安い金額だ。こんな金額を売主が「はい、わかりました」と受け入れるとは到底思えない。
むろん、この金額は私が勝手に考えている金額であるので、これをそのまま売主にぶつけようとは思っていない。しかし、これがこの物件の市場価値である、と私は考える。
月額賃料の数字は理解できるとしても、10年分というのは期間が短か過ぎないか？通常の住宅ローンでも35年分あるじゃないか、という意見やご指摘もあるだろう。
しかし考えてみると、独立開業や事業運転資金の融資など、ビジネスの場面で金融機関が提示する融資期間というのは長くても10年くらいではないだろうか。35年のフルローンということもないではないが、これはむしろラッキーなケースであるからビジネスの通例とみることはできないだろう。客観的に見て、期間10年と捉えるのが妥当だ。だから、月額賃料の10年分で想定するのは決して無理な計算ではない。
そんなこと言っていたらいつまで経っても物件など買えないのではないか、と思う人もいるだろう。しかし、昨年秋に見つけた物件はやや広めの3LDKで800万であった。同じくらいの物件を賃貸で借りるなら少なくとも月6万にはなるだろう。これの10年分となると720万であり、物件価格とかなり近い数字になってくる。探せば見つかるのだ。この数式が示す金額に近いものから選ぶ、というこの姿勢が重要なのだと私は考える。
ちなみにこの800万の物件はエレベーター無し5階建ての5階部分であったため、パスした。
重要なのは、これはあくまでビジネス視点での数式だ、ということである。夢のマイホームなのだから思い切って3000万円出そう！という気持ちはサラサラ無い、という意思の表明でもある。
ということで、不動産屋には以上のような数式のことも含めて正直な気持ちを伝えた。彼には普段から、現在の家賃を軽減する目的で1000万から1500万くらいの物件を探していると伝えてある甲斐もあって、私の判断基準を理解してくれたようだし、非常に合理的な基準であるとも言ってくれた。
仮に買うとしても2000万くらいが希望額になるでしょうが、現在の物件価格2850万でも買い手は現れると思いますので売主さんが応じることはないでしょう、とも伝えたので、今回の1件はこれにて終了となった。
不動産屋の彼は引き続き、1000万から1500万くらいの値ごろ感のある物件を探してくれるとのことである。