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文通費問題はもっと大きな視点から議論すべき

国会議員に対して毎月100万円が支給される「文書通信交通滞在費(文通費)」について、10月31日に投開票が行われた先の総選挙で初当選した小野泰輔議員(日本維新の会所属)が、たった一日でも100万円が支給されたことを批判したことから、大騒ぎになりました。

小野議員の指摘に呼応して、維新代表の松井一郎大阪市長や副代表の吉村洋文大阪府知事がSNS上でこれを問題視し、維新の創設者である橋下徹元大阪市長がさらにこの問題を大々的に取り上げました。

10月31日に当選したとしても、その日に国会や議員会館に行って国会議員としての仕事を行えるわけでもないのに、10月分の満額が支給されることは明らかにおかしいです。それゆえ、見直しの議論において文通費支払いの日割り計算化が出てくるのは自然なことです。


口先だけの「身を切る改革」の醜悪な実態

しかしながら、吉村氏や橋下氏など維新関係者がこの問題をきっかけに他党(特に立憲民主党)を批判し始めたことから、自身や党に対してブーメランが飛ぶことになりました。

吉村氏が、自身が2015年10月1日に国会議員を辞し大阪市長選へ出馬した際、1日で100万円を受け取っていたことが明らかになったのです。これに対しては、自身も一日で100万円を受け取れることが知っていたのでは?何故、1日にやめたのかなどの声が上がっています

また、維新は党所属国会議員に対して文通費の使途を明らかにさせているとしていますが、実際には多くの党所属議員が文通費を自身が代表者を務める党支部に寄付し、自身で領収書を切っていました。さらに維新に関しては、党として文通費の在り方を批判している一方で、同党に公布された政党交付金の使途に対しては不透明な部分が多く、政党から政治家に支出され使途を明かさず自由に使うことができる「政策活動費」が同党幹部に不透明な形で大量に支給された実態が明らかになりました

橋下氏に関しても、過去に党や足立康史氏など党所属議員から3400万円にも上る多額の講演料を支払わせていたことが明らかになっていますが、文通費の一部が政治団体に寄付され、それが講演料への支払いに使われた可能性があると指摘されています

以上から、「身を切る改革」を訴える維新のやっていることがうわべだけで、実態は「マネーロンダリング」を繰り返しているとみられても仕方がないことがわかります。

しかしながら、橋下氏は自身が党首だったころの監督責任や多額の講演料受取の問題から話をそらすためか、twitter上で政策活動費の領収書添付に消極的な党幹部や党所属国会議員を、党創設者とは思えない口調で執拗に攻撃し続けています。


やるべきなのは費用最小化ではなく最適化

私は、領収書は基本的に公開すべきだと思いますが、問題の本質はそれよりも、むしろ文通費の多くの部分が議員の私設秘書の給与等の支払いや地元事務所の家賃等に充てられていることにあります。

雇用が公費負担対象となる秘書の数に関しては、日本は3人と米英独に比べると少なく、多くの議員(ほとんどの衆議院議員)はそれだけでは足りずに、私設秘書を雇っています

また、地元事務所の設置に関しても、東京・大阪・名古屋などの大都市近辺の選挙区は面積が小さいので一つで足りるケースが多いですが、地方にいけば選挙区の面積が大きくなり、一つの事務所で間に合うわけがありません。次の選挙の費用を貯めながら選挙に備えた日常の政治活動も行う必要があるので、お金のやりくりに頭を抱えている議員が多いのが実情です

このように政治活動にかかわる費用に関しては、コストカットと使途明確化だけを訴えるべきではなく、もっと大きな視点から適正化を考えるべきです。適正化という視点が大きく欠如しているのが維新という政党で、吉村氏は自民と立民の対応を「日割り法案でごまかすつもり」 と批判していますが、文通費を削ってすべて領収書を公開させるだけなら、個々の議員の金銭的負担と秘書への事務的負担は多大なものになるでしょう。維新の「改革」なるものが大阪府政を疲弊させてきたことを見てもわかるように、安易な公的部門縮小論に乗るべきでないことは明らかです。

文通費の在り方を問題にするならば、文通費を減らす代わりに現状3人となっている公設秘書の数を増員する、地元事務所家賃等への公的補助を認めることは必要(さらに選挙区の大きさを考慮して増分追加を認める)で、減額された文通費に関しては地方議員の政務活動費のなみの使途の透明化は必要でしょう。


比例代表制を全面導入すれば議員特権も不必要では?

もっとも、国政選挙において、個々の議員を選ぶことをやめて、全ての議席に党を選ぶ比例代表制を適用すれば、国会で質問等を行う「議員」に対して上記のような議員特権を与える必要はなくなるかもしれません。ドイツの連邦参議院は議員が固定化されていませんが、全てを比例代表にすれば党職員などが代わる代わる国会で質問等を行えばよいのではないでしょうか。

議員の固定化をやめれば、党の支部を兼ねた国会議員の地元事務所は単に党の地元支部になるだけです。また、政治家として国政に携わりたい人も国会議員選挙に立候補するために多額の私財を投げ打つ必要は無くなります。国会の議席配分が持つ意味も単に議決権行使のための割合になります。比例代表制の欠点として、小党乱立になり国民が政権の枠組みを自らの一票で選べないという問題点がありましたが、政党同士で政党連合を組めるようにして、一定の条件の下で得票率が一位となった政党連合に関しては過半数の議席を与えるようにすれば、この問題も解決されます(プレミアム付き比例代表制)。



鈴木 しんじ

博士(理学)

日本型大統領制を実現するリベラル新党、
政治団体「社会民主進歩党」代表

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