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RX 1章4話 初歩 ♪Enemies




レスラーになる夢へ向かって、

 人生の大挑戦がはじまった中学時代。


図書室の奥で、職業図鑑を手に取る。

 ぶ厚いページをめくり続けて発見。

"プロレスラーになるには"

 今の僕にとって最も大事な情報だ。


一文字も見落とさないよう目を凝らす。

黄ばんだ紙に小さく書かれていた。

 柔道の経験があるレスラーは多いと。


幼少期から僕を苦しめてきた喘息は、

 幸いにも、症状が落ち着いていた。

体の成長につれて、呪いから解放された。


柔道をやろう。

 そう決心すると誰かの足音が聞こえ、

慌てて本を閉じ、指を挟んでしまった。


レスラーを目指すことへの後ろめたさ。

 ぬぐい去るには、強くなるしかない。




おびえた足取りで、武道場に踏み入れる。

床一面は緑色の畳。

はだしの感触が冷たく、青くさい香りと、

 殺気が漂っている緊張感に物おじした。


辺りは強そうな外見の人ばかり。

丸刈りの頭、いかつい顔、ふくらんだ耳。

見渡して震えあがった僕は、


大きな柔道着にそでを通す。

初々しい白帯。

 結び方がわからず、強引に締めつけた。


年配の指導者が現れ、練習が始まる。

 最初から慣れない動きに置いていかれ、

マット運動では回り続け、目まいがした。


基本動作を習ったあと、互いに向き合う。

 相手を倒したほうが勝ちとなる力比べ。


道着を握りしめて全力を振りしぼるが、

 相手はビクともせず、頑丈な岩みたい。

次の瞬間、

 僕は畳の上に寝転がっていた。


力の差に歯が立たず、いとも簡単に倒される。

みじめな現実を思い知らされ、

 自分の無力さに打ちひしがれた。


敗北の苦汁。やっぱり僕は弱いんだ・・・




しかし、そのショックが僕に火をつける。

完敗をバネに ふるい立ち、

 強くなりたい一心で、行動力が加速。


本屋でプロレス雑誌を読みこみ、

 トレーニング方法を吸収する。


腕立て伏せ、スクワット。

 初めは わずか数回で力尽きるも、

毎日の継続で、着実に回数を積み重ねた。


リングの上に立つ日をイメージしながら、

レスラーを夢見て、ひたむきに努力する。


骨と皮だけだった貧相な体に、

 少しずつ筋肉が身に付いた。

成長をひしひしと実感し、笑みをこぼす。


だが現状は、すぐには変わらない。

身長・体重測定。今回もクラス最低数値。

 僕は常にみんなを見上げていた。


周りは僕を見下ろす。いや、見くだす。

「おい、チビ」

突きつけられた劣等感。

 屈辱が胸をえぐり、敵対心を宿した。


負けるな、びびるな、歩みを止めるな。

 弱い自分を変え、強くなってみせるぞ。


(つづく)


♪エネミーズ(シャインダウン)



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