奪われた光 #5
鳥取に行くことが決定した日、いつものように家に帰ると母ちゃんが唐揚げを作っていた。
母ちゃんは背は高くなく、お世辞にも美人とは言えないが、しゅわくちゃな笑顔がとても印象的な人だった。写真に映ることをひどく嫌っていたが、父ちゃんが不意打ちでなんとかフィルムに収めた母ちゃんの顔は今まで見た中で一番しゅわくちゃだった。梅干しよりも。
母ちゃんは唐揚げを作りながら、おかえりーと声をかけ夕食の用意を続けた。大好物の唐揚げが続々と鍋から皿に移されるのと同時に、ぼくは待ち遠しい気持ちがうずうずと湧いてくる。
山盛りの唐揚げのお皿がついに完成すると、満を辞したかのように父ちゃんが帰ってきた。
「ただいマントヒヒはオナガザル科〜」
「おかえリンカーンは偉大な解放者〜」
こんなやりとりをしながら、父ちゃんも食卓について、みんなでご飯を食べ始めた。
母ちゃんはぼくのなんだか落ち着いていない雰囲気に気づいて、聞いてきた。
「あんた、今年はどんな楽しいところに行ってくるの?」
「実は、鳥取に行くことになったんだよね。」
「鳥取??こりゃまた変哲な場所に行くことにしたわね〜。でも、鳥取っていい場所よ?」
「母ちゃん行ったことあるの?」
「昔、父ちゃんに連れていってもらったのよ。あの頃の父ちゃんは旅行が大好きで、鳥取のそんなところあるんだって場所にたくさん連れ回されたのよ。」
父ちゃんにそんな一面があったんだ。父ちゃんは普段は静かで、仕事熱心な、「ザ・家庭を支えるお父さん」みたいなイメージだった。チラリと父ちゃんの顔を覗いてみると、あえて目を合わせずに、我関せず顔をしてた。子供の前で落ち着いているかっこいいお父さんイメージを崩したくないのかなと思うと、父ちゃんのことを初めて可愛いなと思った。父ちゃんは、足洗みたいな子供だったのかな?ふと、気になった。
そんなことを考えていると、足洗からメールが届いた。