奪われた光 #3
新学期を迎え、新しいクラスメイトの顔にも見慣れてきた頃、ぼくは夏の一大イベントに胸を躍らせていた。そう、夏休みだ。クラスメイトが海とかキャンプと話しているのを聞きながら、自分の夏休みの計画を立てていた。もちろん宿題は後回しだ。
そんなことを考えていると、ふと後ろから、聞き覚えのある低い声が僕の耳をノックした。
「夏休みは思い切って鳥取とか行かね?」
なんで鳥取なんだよと思いながら、足洗(あしあらい)に空返事をする。
「鳥取って、砂丘だけだと思われがちだけど、実はーーーーー」
語り出したら止まらないこいつの話は、いつもならだるく感じるのに、今日はなぜか興味をそそられた。
「案外、鳥取ともありかも。」
ぼそっとつぶやいたぼくの声を、足洗聞き逃さなかった。
「じゃあ決定な!7月28日から3泊4日で!!!」
「3泊4日も何するんだよ(笑)」
「任せとけって!俺が案内してやっから!」
そんなこんなで決定した「足洗プレゼンツ 〜砂丘以外も楽しんでこいや!in 鳥取〜」は、ぼくと足洗、そして仲のいい友達2人の、計4人でいくことになった。
足洗は旅行に行くことが確定すると、鼻歌を唄いながらスマホをいじって、鳥取旅行のしおりを作り出した。一度集中すると完璧なものを作りたがるこの男のことだから、鳥取旅行は楽しいものになるんだろうなと考えている僕の頭の中は、やっと土から出てきた蝉たちよりも、この夏を楽しみにしていた。